6年間ホームレスをしながら子育てしてきた母(出典:http://www.mirror.co.uk)

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世界中で増加の一途をたどるホームレス人口。テックインサイトではつい先日、ホームレスに親切にされたカップルが恩返しをするという心温まる話題をご紹介したが、このほどホームレス経験をしたことがあるという母親のニュースが英紙『Mirror』で報じられた。現在60歳になるその女性は過去6年間、子供4人を抱えてホームレス生活を送ってきたという。

路上で生活するホームレスの厳しさを理解できる人は少ないだろう。しかし英ロンドンのハマースミスに暮らすパウラ・メロニーさん(60歳)は、その辛さを十分理解できる一人だ。

ロンドン東部ハックニー地区の公営住宅でパートナーと3人の子供に恵まれて暮らしていたパウラさんは、経済的に余裕はなかったが幸せな毎日を送っていた。そんなパウラさんに転機が訪れたのは32歳の頃だった。パウラさんは自閉症を患う長男アダム君(当時7歳)のためにより良い教育を受けさせようと、エリザちゃん(当時3歳)とシガニーちゃん(当時1歳)を連れてハックニー地区を離れ、アダム君の転校先区域の公営住宅に空きがでるまで、パートナーの両親の家に居候することを決めた。

ところが浮気続きで酒浸りのパートナーは頼りにならず、2人の関係は破綻。狭い家での7人暮らしも限界になり、区役所の指示でパウラさんと子供たちはホームレスのためのB&B(ベッド&ブレックファスト)へ移った。しかしパウラさんは2週間でここを追い出されてしまう。パウラさんがまだハックニー地区の公営住宅に住んでいると勘違いした役所の手違いだったが、親子は公的援助を打ち切られて行き場を失った。

パウラさんはその後、廃屋や友人宅など子供たちを連れて転々とした生活を続けた。やっとのことで紹介された別のB&Bでも、アルコールやドラッグ依存者、精神疾患を持った人が宿泊しており、当時はそんな環境に子供たちを置くことをとても心配したそうだ。

劣悪な環境の宿泊所に戻るのを遅らせるためにカフェで数時間を過ごしたり、また学校帰りに一緒に公園へ行き、暗くなるまで子供たちを遊ばせたりしたこともあったという。この時パウラさんはパートタイムの仕事をしていたが、経済的に常にひっ迫しており、生活保護の受給に頼っている。

そして6年にわたるホームレス生活で精神的に不安定な気持ちを抱えて暮らしていた矢先、パウラさんは前のパートナーとの関係に火がついてしまい4人目のジャック君を妊娠してしまった。しかしその後、ついに役所がハマースミス地区に家を提供し、家族はようやく足元を固めて生活できるようになった。その時の安堵感を思い出しつつ、パウラさんは「人の人生が転がり落ちるのなんて、あっという間」と英紙『Mirror』に明かす。

辛かったホームレス生活から21年が経った今、パウラさんは自分が辛かった時に助けてくれた人たちのことは決して忘れないと言い、社会への恩返しをするつもりでホームレスを支援する組織「City Harvest」でボランティアをしている。この組織では、スーパーやレストランなどが不使用とした食材を集めてホームレス達の食事として提供しているそうだ。

「私は、ポケットに余分な5ポンド(約710円)もないことがどういうことかを知っています。お金がないと好きなものも食べることができません。子供たちがまだ小さかった頃、私は友人と缶詰を分け合って子供たち全員が食べられるようにシェアしていました。お金に余裕がない状態で、栄養のあるものを摂取することは難しいのです。だから、身近な者同士で労りあい世話し合うことが大切なんです」とパウラさんは語っている。

空腹や定住できる場所のない生活がどれほど辛く大変なものかというのは、ホームレス生活を経験したパウラさんだからこそ理解できるのだろう。ホームレスの人たちと同じ目線で接することはなかなかできることではないが、パウラさんに限っては自身の経験を生かして優れたボランティア活動を行っているに違いない。

出典:http://www.mirror.co.uk
(TechinsightJapan編集部 エリス鈴子)