専門誌では読めない雑学コラム
木村和久の「お気楽ゴルフ」連載●第89回


 まずはトランプさん、アメリカ大統領就任、おめでとうございます。

 というわけで、せっかくゴルフ好きの大統領が誕生したのですから、歴代のアメリカ大統領の中で、誰が「ゴルフ好き(あるいは実力)ナンバー1」か、見極めたいと思います。

 トランプ大統領のゴルフの腕前は、かなりのものだと聞いています。実際、彼がゴルフをしている動画を見たことがありますが、ダイナミックなスイングで、ボールの勢いが半端ないです。ハンデが「3」ぐらいで、ベストスコアが「66」らしいですから、ほぼプロ並みと見ていいでしょう。

 オバマ前大統領もゴルフ好きで有名でしたが、ハンデは「13」くらいと言われていて、その実力はさすがにトランプ大統領には及びません。

 そうなると、歴代ナンバー1のゴルファーはトランプで決まり! と思うでしょう? ところが、実は"最強の大統領"は過去にも存在していたのです。

 それは、第34代ドワイト・D・アイゼンハワー大統領です。なにしろ彼は、プロでもないのに、2009年に特別功労者として世界ゴルフ殿堂入りを果たしているんですから。

 アイゼンハワーが何よりすごいのは、そのラウンド数の多さ。8年の任期(1953年〜1961年)の間におよそ800回、つまり年に100ラウンドもしていたというのですから、びっくら仰天です。

 ゴルフ好きのオバマですら、8年間で300回ちょっと。単純計算でその倍以上はプレーしているのですから驚きです。安倍晋三首相なんか、年に10回ぐらいでしょ。まだまだですよ......って、そこを煽(あお)ってどうする?

 アイゼンハワーのゴルフ好きは筋金入りで、マスターズを開催するオーガスタ・ナショナルGCのメンバーでもありました。10番ホールのティーグラウンド横にある一軒家は、「アイゼンハワー・キャビン」と呼ばれ、そこが大統領執務室を兼ねていました。

 つまり、冷戦真っ只中、"核のボタン"をゴルフ場に持ち込んで(?)プレーしていたのですから、恐れ入ります。かつて、あの華やかなオーガスタには、まさに"戦争と平和"が背中合わせで共存していたのです。

 また、オーガスタの17番にある巨木は「アイゼンハワーツリー」と称されていました。スライサーのアイゼンハワーがいつも当てるため、「あの巨木を撤去してくれ」とコース側に願い出たこともあって、いつの間にかそう呼ばれるようになったようです。

 結局、大統領の願いはコース側が断固拒否。長い間、マスターズ名物のひとつとして、事あるごとに取り上げられていましたが、その巨木も2014年の大雪で倒れてしまい、ようやくアイゼンハワーの願いは叶いました。しかし、倒れた巨木の苗はしっかり保存されているそうで、またいつの日か「アイゼンハワーツリー」が復活するかもしれないと言われています。

 他にもアイゼハワーの名前が付けられたゴルフ用語があります。「アイゼンハワールール」というのが有名です。

 心臓に持病を抱えていたアイゼンハワー。ここぞという勝負パットを決めるときには、心臓への負担が心配されていたそうです。そこで、主治医から「グリーンに乗ったら、パターを打たないことにしてはどうか」と勧められ、それを実戦していたと言います。

 スコア計算はどうしたのかというと、カップからどんなに遠いところに乗っても、逆にかなり近くにつけても、2パットで計算したそうです。パーオンすれば、全部パー。バーディーがない代わりに、ボギー以下もなし。なかなかいいアイデアだと思います。だから、今なお"ルール"として残っているわけですね。

 アイゼンハワー大統領は、日本との"ゴルフ外交"にもひと役買っていました。安倍首相の母方の祖父である岸信介首相と一緒にラウンドしていたのです。

 1957年6月、岸首相は渡米してホワイトハウスを訪ねています。それを歓迎したアイゼンハワー大統領は、岸首相に午後の予定をさりげなく聞いたそうです。そして、岸首相が「空いています」と言うや、「では、午後からゴルフをしましょう」とアイゼンハワー大統領が誘って、"日米外交ラウンド"が実現しました。

 ラウンドしたコースは、ワシントン郊外のバーニング・ツリーCC。クラブハウスに到着するや、岸首相の体格に合わせたゴルフクラブのフルセットがちゃんと用意されていたとか。ふたりは、実に楽しい時間を過ごしたようですよ。

 それから時を経て2013年2月、安倍首相がオバマ大統領と会談した際、岸&アイゼンハワーのゴルフ話を持ち出します。そこで、同席していたバイデン副大統領が「ふたりのスコアは?」と聞くや、安倍首相は「国家機密です」と冗談を言って、その場を沸かせました。

 その"国家機密"ですが、ここでバラしてしまうと、アイゼンハワー大統領が「74」で、岸首相が「99」だったそうです。これは、安倍首相とトランプ大統領の実力差のようにも感じられます......。日米首脳の"ゴルフ格差"は、50年以上経っても変わっていないんですね。安倍首相、もっと練習しないといけません!(って、大きなお世話か......)

 さてさて、トランプとアイゼンハワーが一緒にゴルフをしたら、どっちが強いのか?

 50年以上も時が離れていますから、ギアやボールの進化、スイングの技術の進歩などを考慮すれば、アイゼンハワーのほうが強いんじゃないでしょうか。実力的にほぼ互角と見て、一発勝負となれば、トランプが勝つ可能性はありますが、100ラウンドの平均を出すなら、やはりアイゼンハワーのほうが有利でしょう。

 トランプ大統領は、叩き出したらキレそうで、ムラがあるイメージがします。大統領として仕事をしているときは、くれぐれもキレて変なボタンを押さないよう、お願いしたいものですね。

■木村和久(きむら・かずひさ)
1959年6月19日生まれ。宮城県出身。株式をはじめ、恋愛や遊びなど、トレンドを読み解くコラムニストとして活躍。ゴルフ歴も長く、『週刊パーゴルフ』『月刊ゴルフダイジェスト』などの専門誌で連載を持つ。

木村和久●文 text by Kimura Kazuhisa