韓国の次期大統領候補は人材難

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 朴槿恵大統領に退陣を迫る韓国国民の街頭デモは、どんな人たちが参加していたのか。産経新聞ソウル駐在客員論説委員の黒田勝弘氏は、「1987年の学生デモではなく、2002年サッカーW杯街頭応援」だと指摘する。これからの韓国は、対北融和派が勢いを増すのか、反日が強まるのか、黒田氏が解説する。

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 韓国人は「熱しやすく冷めやすい」と自らよく分かっているので、左翼・野党陣営は「100万街頭熱気」が冷めないうちに早く大統領選をやりたい。だから「早期の弾劾決定」が世論だと、憲法裁判所の判定に圧力を加えている。

 これに対し保守・与党陣営は確かな候補が見当たらないため、選挙は遅い方がいい。たとえ潘基文を担ぐにしても、潘氏の国連事務総長退任の後、政治基盤作りにできるだけ時間がほしい。窮地の保守派の巻き返しは果たして可能か?

 政治の季節に、新年の韓国では左右激突が必至である。「ロウソク・デモ」の世論は朴・崔スキャンダル非難と朴退陣では一致していたが、個々の政治案件では分裂が不可避だ。「100万人デモ」の現場でも、朴槿恵政権下で解散させられた親北朝鮮・左翼政党の「統合進歩党」の復活や、THAAD配備反対などのアピールは浮いていた。ことさら文在寅支持の雰囲気でもなかった。

 一方で朴槿恵弾劾反対の保守・右派の対抗デモも、「100万人」とはいわないまでも実数で数万単位に増えている。保守・右派も街頭志向を強めつつある。

 これまで、保守・右派・反北朝鮮系の街頭集会・デモの主力だったのはキリスト教勢力だ。今は朴・崔スキャンダルの“オカルト・イメージ”で腰が引けているが、今後、選挙に向け左右激突となれば「対北宥和政権阻止」で再結集する。

「100万人デモ」を扇動してきたメディア界もまた熱しやすく冷めやすい。左派系は別にして、今年は「朴槿恵はもう終わった」となって“朴槿恵魔女狩り”ムードから現実に立ち返ることになろう。

 その際、世論は、トランプの大統領就任式や米韓首脳会談に大統領を送り出せない韓国の弾劾状況を大いに寂しがることになるだろう。トランプ時代の到来を前に、保守派はこの“米国カード”を局面転換に効果的に使える。

 したがって左翼・野党陣営も「100万ロウソク・デモ」のノリを、そのまま選挙に向け親北・反米に持っていくことは必ずしも簡単ではない。ロウソク・デモの“バブル部分”は決して親・北朝鮮でも左翼でもない。反米でまとまるはずもない。扇動家・李在明のバブルもそのうちしぼむ。

 韓国世論はこのところ、内政の混乱のなかで宿敵・日本の安倍政権の安定感と日米蜜月ぶりを強く印象付けられている。新年は国際的に日本の存在感をさらに意識することになろう。反日のメリットは当面、国益上はまったくないのだ。ポスト・朴の韓国は国内的な変化志向の一方で、安保や経済などで対外的には安定志向にならざるをえない。

 トランプだって当選後は現実を前に前言を翻している。いささか綱渡りにはなるが、韓国の文在寅をはじめ野党陣営だって、当選後もそのままなどということはありえない。

●くろだ・かつひろ/1941年生まれ。京都大学卒業。共同通信ソウル支局長、産経新聞ソウル支局長を経て産経新聞ソウル駐在客員論説委員。著書に『決定版どうしても“日本離れ”できない韓国』(文春新書)、『韓国はどこへ?』(海竜社刊)など多数。

※SAPIO2017年2月号