『ANTIPORNO』の冨手麻妙と園子温監督

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鬼才・園子温監督が放つ「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の第4弾『ANTIPORNO』(1月28日公開)で、エネルギッシュな体当たり演技を魅せた冨手麻妙。『新宿スワン』(15)や『リアル鬼ごっこ』(15)などに出演し、園監督とは今回で5度目のタッグとなった。冨手は「園さんの作品のためなら脱ぐ」と公言していたとおり、本作ではしなやかな肉体表現で、園監督の心の叫びを体現したと言う。時には“血のにじむような”シーンも撮ったという2人に壮絶な撮影秘話を聞いた。

【写真を見る】冨手麻妙の劇中のセクシーショットはこちら/[c]2016 日活

最初に登場人物の絵を描き、その絵に囲まれて執筆するという斬新なアプローチ方法で注目された女流作家の京子(冨手麻妙)。時代の寵児となった京子は、いつしかストレスに苛まれていき、サディスティックな振る舞いをするようになる。

今回、日活ロマンポルノを蘇らせたのは、園監督、行定勲監督、塩田明彦監督、白石和彌監督、中田秀夫監督の5人だ。初のポルノ映画に挑んだ彼らは「10分に1回絡みのシーンを作る、上映時間は70分程度」など一定のルールや製作条件の下、それぞれに作家性の高いオリジナル作品をつむぎ上げた。園監督は「久しぶりにものすごく自由に映画を撮れて楽しかった」とご満悦だ。

冨手は初のヌードシーンにトライしたが、園監督は裸について「エロいものだと思っていない」と言い切り、タイトル『ANTIPORNO』にもそういうアンチテーゼを込めたようだ。「今回はあまり通常の濡れ場を用意していません。京子が酔っ払って裸で寝ているとか、日常的なところで脱いでいるが、いわゆる色っぽいシーンでは服を着ています。今回はエロくというよりは美しく撮りたいと思ったので」。

園監督に心酔している冨手だけに、主演の座を射止めた時は涙を流して喜んだらしい。「自分がいちばん目標としていたことが叶ったのでうれしくて。最初に園さんと出会った時から『園さんの作品で絶対主役をやります。脱げます』と言っていたので、園さんがそのことを覚えていてくださったんだなと。だからこれからが勝負だ、園子温との戦いだ!と思いました」。

キャッチコピーに「処女なのに売女、自由なのに奴隷」とあるが、冨手はそういった挑発的な長台詞を次から次へと吐露していく。「正直、必死でした。役作りなどを考える余裕もなく、とにかくやらなければ園さんには勝てないし、ついていけないと思ったから食らいつくしかなくて。リハーサルは1週間ほどかけて頭から最後までつなげてやらせてもらいましたが、カットがかかった瞬間でさえ何をやったか覚えていないほど緊張していました」。

特に園監督が粘ったのは、京子のマネージャー役を演じた筒井真理子とのSMのシーンだ。「ムチでたたかれながら妹を探すというシーンで、台本ではたった2、3行しかなかったんですが、すごく長い時間撮りました。みなさんから“魔の一行だ”だと言われていて」。

園監督が「血まみれになっちゃったね」とつぶやくと冨手は「そうです」と大きくうなずく。「なぜ、こんなに撮るんだろうと。途中でつらすぎて、初めて『もう、全員殺してやる!』と思いながらやっていたら、さらに『天井を外して今度は上から撮るぞ』と言われて、ええ!?と。でもそういう追い詰められ方が、今回の現場では良かったんだなと思いました」。

園監督はそんな冨手の女優魂を心から称える。「冨手さんは撮り終わった後もまだ余白があって、もっとやりたいことがあると思わせてくれました。まだまだ未知数なんです。だからこの後、何本も続くんでしょうね。僕はだいたい1本消化したら同じ(主演の)人とはあまりやらないんですが」。

冨手は、園組の現場で常に緊張していると告白。「園さんとは何本かいっしょにやらせてもらっていますが、いつも『園さんに面白くないと思われたら次はない』と思ってビクビクしています。いままでの現場では常に別の主役の方がいて、正直、すごくジェラシーを感じていました。だから今回終わった後で『またやろう』と言葉をかけてもらった時は、ああ良かったとほっとしました。ある意味、常に園さんとの戦いです。園さんはどんどん進んで行く人だから、自分も常に伸びていかないといけないので」。そう言った冨手の目の輝きが忘れられない。【取材・文/山崎伸子】