子育てを終えた後の夫婦を演じた

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 20年という歳月で培った技量をぶつけ合える、待望の邂逅(かいこう)を果たした。阿部寛と天海祐希。共に主演として第一線を張り続け、互いに刺激を受けながら歩んできた“心の同志”が絶妙のタイミングで出合ったのが「恋妻家宮本」だ。初監督に挑んだ希代の脚本家・遊川和彦氏の熱血演出に寄り添い、子育てを終えた後の夫婦のひとつの在り方を時にコミカルに、時に真摯に提示し新たな魅力を放った。

 阿部は、天海が宝塚退団後の初ドラマとなった1996年の「橋の雨」に出演。その3年後には映画「必殺!三味線屋・勇次」でも現場を共にしているが、じっくりと向き合うシーンはほとんどなかった。それから共演がなかったのは意外だが、互いの出演作を見て励みにしながらそれぞれの地位を確立してきた。

 阿部「勝手に、共に頑張ってきたみたいな気持ちでいたんです。いろんな作品に出合って、主演女優として積み重ねてきた心みたいなものをすごく感じるんですよ」

 天海「どんなジャンルでも皆を引っ張って中心にいる役者さんなので、その姿を見て私もまだまだ頑張ろうって初心に帰るんですよね。阿部さんがこんなにチャレンジしているんだから、私も小さくまとまらないで頑張ろうと励ましてもらえる存在です」

 そんな2人を引き合わせたのが、人気ドラマ「家政婦のミタ」などで知られる遊川和彦監督だ。一人息子が結婚し、夫婦水入らずの時間をゆっくりと過ごそうと思った矢先に、妻の判が押された離婚届を見つけ慌てふためく夫・宮本陽平が阿部の役どころ。遊川監督は初のタッグとなる。

 「すごく優しい脚本で、第一作として監督される作品で声をかけてくださったのがすごくうれしかった。それに天海さんという強い味方が奥さんをやっていただける。満を持して夫婦役できっちりお芝居できる喜びがありました」

 一方の天海は、「女王の教室」などに続き遊川作品は4本目。新入社員が選ぶ「理想の上司ランキング」を7連覇中で、「BOSS」シリーズや「Chef 三ツ星の給食」などリーダーのイメージが定着しているが、妻・美代子はテキパキとしながらも夫を温かく見守るキャラクターだ。

 「遊川さんはこうやってほしいというビジョンがはっきりある方なので、監督の中で可能性があると思ってくださったから声をかけていただいたんだと思います。阿部さんとまたご一緒できるともうかがったので、ぜひやらせてやらせてという感じで(笑)」

 揺るぎない信頼関係で結ばれた2人のやり取りは実に自然体で、テンポのいい掛け合いには思わず笑ってしまう。撮影を経てより深まった夫婦のきずなは、線路を隔てた駅のホームで本音で向き合うクライマックスに集約される。それをもってクランクアップだったこともあり、2人にとっても充足感に満ちた大団円となった。

 阿部「夜の電車って幻想的で不思議でしたよ。3日間やって夜中に終わったんだけれど、あの場所も含めてすごくいい終わり方でしたよ」

 天海「駅のピーンと張り詰めたような雰囲気までもが味方してくれたような気がして、白い息を吐きながら2人で思いを伝え合っているのはすごく素敵でした」