By Lindsey G

AI(人工知能)やロボット技術の向上により、将来は人間のやる仕事がなくなって職を失ってしまうと警鐘を鳴らす見方も存在しています。そんな波は決して最新の産業の分野だけでなく、昔からある石油業界にも確実に訪れています。

Robots Are Taking Over Oil Rigs - Bloomberg

https://www.bloomberg.com/news/articles/2017-01-24/robots-are-taking-over-oil-rigs-as-roughnecks-become-expendable

メキシコ湾で稼働する掘削船で作業を行っていたマーク・ロジャーズさんは、ロボットが船に導入されたことで、それまでは人の手で行っていた重くて汚れた掘削用パイプの交換が楽になったといいます。しかし、そんな風にロボットが導入されたことで、ロジャーズさんは仕事を失うことにもなるのでした。

アメリカの石油掘削技術企業ナショナル・オイルウェル・バーコが開発した掘削船「Iron Roughneck」は、単純作業の繰り返しで、かつ危険をともなう油田の海底掘削作業を、船に搭載したロボットでほぼ自動化しています。かつては油田掘削企業Transoceanで作業員として働いていたロジャーズさんは「自動化が進んだことにより、作業に要する人員は従来の3分の2になった」と語り、今は家電製品を修理する仕事に就いています。



かつての仕事を懐かしがり、「海の上に戻りたいね」と語るロジャーズさんですが、業界の傾向はロジャーズさんにとって完全な逆風となっています。世界の石油掘削業界では人員の減少が続いており、ピーク時に比べて44万人もの雇用が失われたとのこと。そしてその原因の大部分が、効率が良くなったドリルリグ(掘削装置)と、作業全体の自動化の波によるものだといいます。

かつて、掘削船で働く男のツールと言えば、レンチやハンマーが詰め込まれた工具箱でしたが、現代の掘削作業員が手に持つのはなんとノートPC。油まみれの手で機械を操っていた作業員の多くは職を失い、そのような人たちを対象に仕事をあっせんする人材会社で職業訓練を受ける状況が訪れています。

世界が最もオイルマネーに沸いていた頃は、作業員の頭数をそろえることに必死だったという石油会社ですが、アメリカで石油の低迷期が訪れた時、各社首脳は肥大して大きくなりすぎた組織の弊害を痛感し、人力と自動化ロボットの組み合わせで作業の効率化に力を注ぐようになりました。



By Andrew Boggett

そんな各社がいま最も恐れているのが、2017年1月20日に誕生したトランプ政権です。「アメリカに仕事を取り戻す」と表明しているトランプ大統領の方針と、各社の効率化の波はまったく相いれないものとなっており、誰もがその内容について語るのをためらっている状況があるとのこと。

しかし、トランプ大統領が力を注ごうとしているのが、アメリカの国土の奥深く、「シェール層」と呼ばれる地層から汲み上げられる「シェールオイル (タイトオイル)」の分野であり、そこに新たな雇用が生まれると期待する見方も存在しています。油田作業員向けのオンラインメディア「OilFieldTrash.com」を運営するジェイ・コルキート氏は「現代のテクノロジーがいくら優れていたとしても、人の手を完全に排除することはできません。絶対に失敗しないことを確実にするためには、必ず機械を見張って確認する人の力が必要です」と語ります。事実、エクソンモービル、ロイヤル・ダッチ・シェル、BP、シェブロンからなる4大石油大手「スーパーメジャー」は過去2年間に約31億ドル(約3100億円)を油田調査費用に費やしていますが、それに次ぐ規模でマンパワーが必要とされています。

とはいえ、機械の効率化によって必要とするマンパワーと、機械そのものの必要数が減少しているのもやはり事実とのこと。シェールオイルの産出に必要なオイルリグの数は、従来のおよそ半分とも言われています。さらに、1台あたりに必要な人員は、20人からわずか5人にまで減少しているとのこと。最先端の石油採掘の世界では、ボタンひとつでロボットがほとんど全ての作業を行い、わずかな人間がその動きを監視するだけ、という状態になっているようです。