同世代で同期入団を果たした波多野(左)と廣末(右)。ライバル関係は否定しないが、ともに目指すのはあくまでトップチームの守護神の座だ。写真:松尾祐希

写真拡大 (全2枚)

 例年とは異なり、少々肌寒い沖縄。この南国の地で寒さを吹き飛ばす熱量を見せるふたりの新人GKがいる。それは青森山田高出身の廣末陸とFC東京の育成組織出身の波多野豪だ。
 
 日本代表で75年生まれの川口能活(相模原)と76年生まれの楢粼正剛(名古屋)が長きに渡ってライバル関係を築いたケースはあるが、高卒ルーキーが同一クラブに同期入団するというパターンは、過去に遡ってもほとんど記憶にない。
 
 それでも、FC東京が彼らふたりの獲得に踏み切ったのは、互いに甲乙付け難いポテンシャルを持っていたからである。廣末には類い稀なキック力と、183センチの身長を補って余り有るGKスキルがあり、一方の波多野は197センチの体躯を生かしたダイナミックなセービングが武器だ。自らの長所を生かし、昨年度は廣末がU-18高円宮杯チャンピオンシップと高校サッカー選手権で優勝、波多野もクラブユース選手権とJユースカップでチームの日本一に貢献した。ともにユース世代では、名実ともにトップクラスのGKだ。
 
 日本一を経験しただけではなく、日の丸を背負った実績も持つ彼らだが、同じチームになったのはこれが初めてではない。最初に一緒になったのは今から9年前で、小学校4年生の時にFC東京のスクールで初めて顔を合わせた。ただ、当時は共にFW。しかし、ふたりはGKとして才能を見出され、小学6年時にU-15のセレクションを受けた際は、将来の守護神候補として参加した。
 
 そこでふたりは合格を勝ち取る。廣末はFC東京U-15深川で、波多野はFC東京U-15むさしで日々のトレーニングに邁進。その中で先に頭角を現わしたのは波多野だった。当時、深川には山口瑠偉(ロリアン)というフランスにルーツを持つ守護神が在籍。中学3年になる頃にはこの2名が主役の座を争っていた。
 
 その結果、廣末のU-18昇格は見送られ、波多野と山口(入団後に移籍)が昇格。その煽りを受ける形で、廣末は東京から遠く離れた青森の地に戦いの場を移すことになった。
 
 しかし、高校3年間で彼らの立場は逆転する。1年時はU-16日本代表に選出されながらも出場機会をあまり得られなかった波多野に対し、廣末は青森山田でルーキーイヤーから正GKの座を奪取。その年のインターハイでは2回戦の帝京大可児戦で3本連続PKストップを見せるなど、センセーショナルな活躍を見せた。
 
 すると、このプレーぶりが協会の目に留まる。翌年にはU-18日本代表に初選出され、昨年の10月に行なわれたU-19アジア選手権ではU-20ワールドカップの出場権獲得に、控えGKとして貢献した。
 
 波多野も昨年はFC東京U-18の守護神としてハイレベルなプレーを披露。ハイボールの強さを武器に安定感のある動きを見せると、飛び級でFC東京U-23の一員としてJ3デビュー。2試合でピッチに立ち、ライバルよりも先にプロの世界を体感することになったが、高校時代に評価を高めたのは廣末のほうだった。
 
 切磋琢磨しながら成長を遂げ、3年の月日を経て、再び同じチームになったふたり。当然、ライバル意識はある。
 
 廣末が「中学の頃に比べたら(波多野)豪は成長していた。でも、自分も負けていないくらいにやってきたことがある。今までやってきたことを勝負の場面でやっていきたい」と話せば、波多野も「廣末だけには負けたくない」とライバル心を剥き出しにする。当面はJ3に参戦するU-23チームでポジション争いを繰り広げることになるが、本人たちは「ライバルはチームのGK全員」と話し、「U-23のJ3ではなく、トップチームのJ1でポジションを争いたい」と口を揃えた。
 
 意欲的な姿勢を見せる彼らの成長曲線がどのように描かれていくのか非常に楽しみだが、その才能を伸ばすうえで今季からFC東京にやってきたジョアン・ミレGKコーチの存在も見過ごせない。