キャリア20年、日本を代表するベンチャー投資家が語る「成功の秘訣」

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「日本版Midas List」1位に輝いたのは日本を代表するベンチャー投資家、仮屋薗聡一。ベンチャーキャピタル業界の牽引者が語る成功の秘訣とは。

「私というよりは”日本のベンチャーエコシステム”の成果。様々な登場人物の中の一人に私がいた。それが本日伝えたいメッセージです」
 
グロービス・キャピタル・パートナーズ・マネージング・パートナーの仮屋薗聡一が最初に口にしたのは、その一言だった。「日本版Midas List」1位の取材だと事前に伝えたにもかかわらず、だ。
 
仮屋薗は、今年10月に上場したユーザベースこそ、日本のエコシステムがうまく循環した成功例だと総括する。多くのプレーヤーが関わる創業物語の中で、人と人とをつなぐ”媒介役”に徹してきた仮屋薗らしい一言だ。

「役割の異なるキーパーソンたちの貢献が、会社の血となり肉となっていきます」
 
2009年、資金調達に奔走していたユーザベース共同創業者の梅田優祐・新野良介らと仮屋薗を引き合わせたのは、一橋大学イノベーション研究センター長の米倉誠一郎。その時、仮屋薗は同社が描く企業・業界分析ツール「SPEEDA」の構想に共感したが、市場の特殊性から投資を見送った。そんな中、シード段階を引き受けたのが、GMOベンチャーパートナーズ・ファウンディングパートナーの村松竜、マネックス証券CEOの松本大、リヴァンプらだ。「SPEEDA」はその後、実績を積み重ねて、12年のセカンドラウンドでグロービス・キャピタル・パートナーズの投資実行へとつながる。翌年に立ち上がったソーシャル経済ニュース「NewsPicks」は快進撃を続け、14年には伊藤忠テクノロジーベンチャーズ、YJキャピタル、講談社、SMBCベンチャーキャピタルなど引受先9社の大応援団を得る。

「その道の最も優れた才能に声がけしていくことが、私の役目です」

メディアリテラシーが必要だと感じれば講談社第一事業戦略部長・瀬尾傑に助言を求め、上場準備に入ればIPO担当実績を持つ弁護士・松本真輔に監査役就任を依頼、発行体と主幹事証券と東証の一体化を図り上場手続きを円滑に進行していくー。仮屋薗は、個としての貢献よりも、人材や資金などの外部リソースをつなぐハブの役割を重視してきた。

「全てはエコシステムにあり」という言葉を繰り返す仮屋薗。その考え方は、20年以上に及ぶベンチャーキャピタリスト人生で首尾一貫している。常に人付き合いを重んじ、何事も着実に積み上げてきた仮屋薗の人柄が窺えるー。
 
三和総研やピッツバーグ大学MBA留学を経て、仮屋薗がグロービス参画と同時に注力した取り組みが、日本のベンチャーエコシステムの原点とも呼べる「MBAベンチャー研究会」だ。グロービス・グループ代表の堀義人から託される形で、仮屋薗と西野伸一郎(富士山マガジンサービス社長)が運営を担い、そこに西川潔(ネットエイジ〈現ユナイテッド〉創業者)が参画した。

この小さな集合体からネットエイジが生まれ、仮屋薗も社外取締役として参画。その発展形として渋谷ビットバレーが起こり、NILS(日本最大規模のスタートアップカンファレンスIVSの前身)へとつながっていく。仮屋薗が構想した、経営者同士が議論できるプラットフォームNILSの成功は、今では数ある同カンファレンスの原型とも呼べる。

「ネットワークを広げ巻き込むエコシステム志向は、グロービスのDNAそのもの」
 
グロービスの立ち上げた「G1」は、日本版ダボス会議と呼ばれ、政治経済文化の垣根を超えて日本のリーダーがつながるプラットフォームとして機能している。

「入り口は赤浦さん、出口は小澤さん。強い”信頼関係”がもたらした成果でした」
 
仮屋薗が感慨深げに語るのが、ヤフーが今年7月に買収したECサイト構築のコマースニジュウイチである。同社と仮屋薗の縁をつないだのが、インキュベイトファンド・代表パートナーの赤浦徹だ。両者は同数株式比率のイコールパートナーとして9年間、まさに二人三脚で同社の成長を支えた。

そんな中、買収の声がけをしたのが、現在ヤフーのショッピング事業を統括する小澤隆生である。仮屋薗にとって、小澤はVC初期の投資先の創業者。ネットエイジでの創業支援からグロービスとしての投資、楽天への売却までをサポート、紆余曲折を共にした仲である。約15年の時を経て、今度は反対の”託す側”に回った形だ。
 
20年以上、日本版エコシステムの構築に尽力してきた仮屋薗は、15年に日本ベンチャーキャピタル協会会長へ就任。現在の目標は、「エコシステムのさらなる拡大」だ。そして、「スタートアップへの投資額及びイグジットの規模感の拡大」。ランキング1位である仮屋薗のキャピタルゲインは約23億円(編集部推計)、一方の米国は200億〜300億円規模も少なくない。自分の結果をみて改めて痛感したというが、仮屋薗の表情は明るい。

「価値創造のサイズを10倍に増やさなければいけないとは感じています。そのためには、偶発的ではなく、継続的に成功を生み出すエコシステムを充実させる必要がある。一足飛びにはできないので、これまで通り、ひとつひとつ積み上げていきたいと思いますね」