ジェイ・Z運営のTidalが「利用者水増し」か 現地メディア報道

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米スプリントによる買収が伝えられたストリーミングのTidalだが、利用者の水増し説がささやかれている。

ラッパーのジェイ・Zは、2015年初めにノルウェーのオスロに本拠を置く音楽配信サービス、Tidalの運営会社を5,600万ドルで買収した。ジェイ・Zは「アーティスト・ファースト」をスローガンに掲げ、ストリーミング業界の変革を目指して同年3月にTidalを再始動させた。

発表の場には、共同オーナーであるビヨンセやカニエ・ウェスト、マドンナ、カルヴィン・ハリス、リアーナ、ジェイソン・アルディーンなどの豪華アーティストらも顔を揃えた。「Tidalは多くの人が求めていたサービスであると同時に、多くの人が脅威に感じるサービスだ。これだけのアーティストが力を合わせれば、ストリーミングビジネスのあり方を変えることができる」とジェイ・Zは当時のインタビューで語っている。

しかし、その後の事業展開は、ジェイ・Zが思い描いたようには進んでいない。Tidalは、ビヨンセやカニエ・ウェスト、プリンスなどの楽曲を独占配信したが、想定したほどユーザー数は増えず、最近になってプリンスの財産管理人から著作権侵害で訴えられている。また、会員数では業界最大手のスポティファイに圧倒的な差をつけられている。

さらには、ノルウェーの経済誌「Dagens Naeringsliv」が1月20日、Tidalによる利用者数の水増し疑惑を報じた。Tidalは、テックメディア「The Verge」に対して、昨年3月時点でのトライアルを含めない利用者数は300万人だと述べていた。しかし、Dagens Naeringslivの調査によって、その翌月の社内資料には利用者数が120万人と記されていることが明らかになった。

フォーブスはTidalにコメントを求めたが、回答を得ることはできなかった。同社は、Dagens Naeringslivの取材に対しても対応を拒んでいたが、その後顧問弁護士が記事の内容を全面的に否定した。「彼らはコミュニケーションを拒み、質問に答えようとしない」と記事を共同執筆したKjetil Saeterは話す。

SaeterらはTidalの社員に取材をした結果、利用者数は故意に水増しされた可能性があると指摘している。筆者も現役社員や元社員に接触を試みたが、情報の公表を拒まれた。

Tidalは最近、ジェイ・Zによる買収の際に利用者数の水増しがあったとして、かつての主要株主を相手に訴訟を起こした。しかし、Tidalの運営会社であったAspiroは当時上場企業で利用者数を公表しており、虚偽報告があれば買収監査において明らかになっていたはずだ。また、ジェイ・Zが訴えている問題の原因は、今回Dagens Naeringslivが報じた疑惑とは無関係であると思われる。

Dagens Naeringslivの報道によると、2015年10月のTidalの内部資料において、突如として利用者数が17万人増え、100万人に到達したという。その直後にジェイ・Zは「利用者数が100万人を突破した」とツイートしている。この急増は、デンマークとノルウェーで退会済みのアカウントをユーザーに無断で復活させたことが原因だと思われ、Tidalの社員もこれを認めているという。

Tidalには買収の噂が絶えなかったが、利用者数の実態が報告されている数字よりも大幅に少なければ会社の評価額に影響を及ぼす。同社の経営は赤字が続いており、経営難もささやかれている。

しかし、貧困からアメリカンドリームをつかんだジェイ・Zは、いかなる逆境も跳ね返す力を持っている。Dagens Naeringslivの記者たちが、筆者が執筆したジェイ・Zの伝記「エンパイア・ステート・オブ・マインド」を読んで筆者に連絡をしてきたので、「ジェイ・Zは、一見不可能と思える状況からでも価値を創造することができる男だ」とコメントした。

ジェイ・Zの歌の一つに、次のような一節がある。「俺は冬に氷を売り、地獄で火を売る。俺はハスラーだ。井戸に水を売ることだってできる」