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大ブームとなった『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS系)の余韻がいまだ醒めぬ中、2017年の冬ドラマがスタート。豪華キャスト&スタッフをそろえるなど、活況に沸いた秋ドラマに負けない意欲作も多く、早くも話題を集めている。

初回視聴率では『A LIFE〜愛しき人〜』(TBS系)の14.2%、『東京タラレバ娘』(日本テレビ系)の13.8%、『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系)の12.9%、『嘘の戦争』(フジテレビ系)の11.8%、『視覚探偵 日暮旅人』(日本テレビ系)の11.2%が続いた。

しかし、ツイッターやクチコミサイトでは『カルテット』(TBS系)が熱い盛り上がりを見せるなど、ドラマの面白さと視聴率は、あくまで別問題。冬ドラマで本当に面白くて、今後期待できるのはどの作品なのか? 今回もドラマ解説者の木村隆志が、俳優名や視聴率など「業界のしがらみを無視」したガチンコで、冬ドラマの傾向とおすすめ作品を挙げていく。

冬ドラマの主な傾向は、[1]月〜水は恋愛、木〜日は家族 [2]ユニーク原作と大胆オリジナル [3]主演級男女キャストの再会 の3つ。

○傾向[1] 月〜水は恋愛、木〜日は家族

昨年の秋ドラマは、各局が「平日は女優主演、土日は男優主演」でかぶっていたが、新年の冬ドラマも興味深い傾向が見られる。その最たるところが、恋愛モノと家族モノの棲み分け。

恋愛モノの『突然ですが、明日結婚します』(フジテレビ系)、『カルテット』、『東京タラレバ娘』、『レンタルの恋』(TBS系)は月〜水曜に、家族モノの『就活家族〜きっと、うまくいく〜』(テレビ朝日系)、『三匹のおっさん3〜正義の味方、みたび!!〜』(テレビ東京系)、『お母さん、娘をやめていいですか?』(NHK)、『下剋上受験』(TBS系)、『スーパーサラリーマン左江内氏』、『大貧乏』(フジテレビ系)は木〜日曜に集中した。

これは「女性視聴者が多い週初め〜半ばは恋愛要素を、家族での視聴が増える週末は家族要素を」という制作サイドのマーケティングによるところが大きい。その証拠に、恋愛モノは西内まりや、吉高由里子。家族モノは三浦友和、阿部サダヲ、堤真一など、ターゲット層に人気の高い主演俳優が選ばれている。

ただ、視聴者にとっては、できるだけかぶらないほうが見やすいだけに、今後はテレビ的なマーケティングからの脱皮が求められるだろう。

○傾向[2] ユニーク原作と大胆オリジナル

冬ドラマでは、原作モノとオリジナルの割合がほぼ半々。どちらも個性の強い作品がそろっている。

原作モノは、大ベストセラー書籍を刑事ドラマ化した『嫌われる勇気』(フジテレビ系)、実話ベースの親子物語『下剋上受験』、藤子・F・不二雄の漫画を深夜ドラマの雄・福田雄一が手がける『スーパーサラリーマン左江内氏』、30歳の厳しい現実を徹底的に突く漫画の『東京タラレバ娘』など、思い切った作品選びが目立つ。もはやテレビマンの頭には「人気原作を選べばイケる」という発想はなく、プロットの段階から試行錯誤を重ねてヒットの可能性を模索している。

一方、オリジナルには、稀代のセリフ巧者・坂元裕二脚本の『カルテット』、木村拓哉×瀬戸口克陽×橋部敦子×平川雄一朗という強力布陣の『A LIFE』、ヒット作『銭の戦争』(フジテレビ系)の路線をワンステップ進めた『嘘の戦争』、ベテラン俳優6人が実名役で共同生活を送る『バイプレイヤーズ〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜』(テレビ東京系)など、クリエイター魂を感じる野心作ぞろい。複雑な人間関係と先の読めない展開で視聴者を引きつけている。

○傾向[3] 主演級男女キャストの再会

今クールは、かつて見た男女キャストの再会が目立つ。『A LIFE』の木村拓哉と竹内結子は2004年の『プライド』(フジテレビ系)、『東京タラレバ娘』の吉高由里子と鈴木亮平は2014年の『花子とアン』、『スーパーサラリーマン左江内氏』の堤真一と小泉今日子は2012年の『とんび』(NHK)、『カルテット』の満島ひかりと高橋一生は2013年の『Woman』(日本テレビ系)。ちなみに、松たか子と松田龍平も2015年の映画『ジヌよさらば』で共演したばかりだ。

いずれも主演級の俳優だけに、実力と実績は十分。さらに、撮影現場の息も合いやすく、話題性も十分などメリットは多い。恋愛にしろバトルにしろ1対1で対峙するシーンは、「あのドラマを思い出す」「今回はこれできたか!」などネット上の反応が期待できる上に、制作サイドもオマージュの小ネタを入れやすい。そのため、いずれも単純な恋愛関係ではなく、ひとクセある関係性で楽しませてくれる。

これらの傾向を踏まえつつ、今クールのおすすめは、『カルテット』と『バイプレイヤーズ』。各シーンに繊細かつ深みがあり、視聴者に考えさせる余地を差し出している。今期は脚本家・演出家のこだわりを込めた作品が多いが、この2作は「これでどうだ」という、いい意味での開き直りを感じる突き抜けた世界観が魅力。繰り返し見るほど、セリフやカットのディテールに新たな発見があるだろう。

その他のおすすめは、危ういムードとサスペンス感に胸がザワつく『銀と金』(テレビ東京系)、事件解決への展開とハートフルな結末など練られた脚本が光る『増山超能力師事務所』(日本テレビ系)、脇道にそれず“復讐”の一点突破で草なぎ剛の凄みを引き出した『嘘の戦争』。脚本・演出・演技が噛み合い、放送枠との相性も良く、視聴率以上にコアなファンを集めている。TVerや各局のオンデマンドなどで、ぜひチェックしてほしい。

おすすめ5作
No.1 カルテット(TBS系 火曜22時)
No.2 バイプレイヤーズ(テレビ東京系 金曜24時12分)
No.3 銀と金(テレビ東京系 土曜24時20分)
No.4 増山超能力師事務所(日本テレビ系読売テレビ 木曜23時59分)
No.5 嘘の戦争(フジテレビ系 火曜21時)

■木村隆志
コラムニスト、芸能・テレビ・ドラマ解説者、タレントインタビュアー。雑誌やウェブに月20〜25本のコラムを提供するほか、『新・週刊フジテレビ批評』『TBSレビュー』などの批評番組にも出演。取材歴2000人超のタレント専門インタビュアーでもある。1日のテレビ視聴は20時間(同時視聴含む)を超え、ドラマも毎クール全作品を視聴。著書に『トップ・インタビュアーの「聴き技 84』など。

(木村隆志)