トヨタの2位は「タナボタ」? WRC開幕戦で見たヤリスWRCの実力を分析する

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デビュー戦で見たヤリスWRCは抜群の完成度

既報のとおり、1月19日〜23日に開催された2017年のWRC開幕戦「ラリー・モンテカルロ」で、18年ぶりの復帰参戦を果たしたトヨタが躍進。エースドライバーのヤリ-マティ・ラトバラが「ヤリスWRC」を武器に2位入賞を果たし、表彰台を獲得した。  

トヨタには失礼だが、正直に言えば、筆者はここまでトヨタが善戦するとは思っていなかった。ライバルチームと比較すると、ヤリスWRCの初走行は2016年4月と遅い滑り出しで、開発ドライバーは実戦から遠ざかっているユホ・ハンニネンが担当。それだけに厳しい戦いを強いられると思っていたが、トヨタはいい意味でその予想を裏切った。  

トヨタ躍進の原動力はヤリスWRCのパフォーマンスにほかならない。ライバル車両と比較しても大胆なエアロダイナミクスを持つ同マシンはベストタイムこそ逃したが、ラトバラ、そして、レグ2でコースアウトを喫し、総合16位に留まったハンニネンを含めて、2台のヤリスWRCは終始安定した走りを披露。

しかも、ライバル車両が相次いでトラブルに見舞われるなか、「レグ2の朝に電気系のトラブルがあったけれど、それ以外はなかった」とチーム監督のトミ・マキネンが語るように、ヤリスWRCは抜群の完成度を見せている。

ライバルチームが脱落したうえでの2位入賞となったことから「タナボタ」と揶揄する声もあるかもしれないが、ラリー競技は生き残ってこそ価値のある競技だ。

「新しいクルマなのに最後までトラブルがなかったことは素晴らしい」とヒュンダイのチーム代表、ミッシェル・ナンダンが語るようにヤリスWRCのパフォーマンスは高く評価されていいだろう。  

慎重な走りでデータを集めつつ闘ったラトバラの走りも素晴らしい

次に2位に入賞の原動力をあげるとするならば、やはりラトバラのドライビングだ。「ラトバラがミスなく走りきった。完璧だった」とマキネンが評するようにラトバラは全開アタックを封印し、開発データを収取すべく、慎重な走りでニューマシンのマイルを重ねた。

フォルクスワーゲンに移籍してからはナーバスな表情をよく見せていが、マキネンの元で笑顔を見せるラトバラを見る限り、長きスランプを抜け出しつつある。もともと抜群のスプリンターであるだけにラトバラの瞬発力はトヨタ陣営の起爆剤となるに違いない。  

そして、最後に評価したいのが、TOTOTA GAZOO RACINGのスタッフたちだ。「オペレーションもうまくいった」とマキネンが語るようにトラブルへの対応からタイヤ選択、セッティング変更、メカニックにサービスワークに至るまですべてがスムースだった。

この2位入賞でチームスタッフのモチベーションはさらに高くなっているだけに、次のステップに向けた努力は惜しまないことだろう。  

もちろん、スピードという部分では、セバスチャン・オジェのドライブで開幕戦を制したフォード・フィエスタWRC、そして、そのオジェとトップタイムを分け合ったティエリー・ヌービルのヒュンダイi20クーペWRCと比べるとギャップがあったことも事実だが、開幕戦のトヨタ陣営の動きを見る限り、すぐにライバル車両に追いつくことだろう。

「TTEは数多くの実績を持つ最強のチームだったが、マキネンを中心とする最新チームも必ず強くなるだろう」と語るのはヒュンダイのナンダンだが、その言葉どおり、表章式で流される優勝マニュファクチャラーのナショナルソングとして久しぶりに「君が代」が聞ける日もそう遠くはないのかもしれない。