通常国会開会式での天皇陛下(写真:AP/アフロ)

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 国会議員秘書歴20年以上の神澤志万です。

 1月20日から第193通常国会が始まりました。今年の開会式の傍聴券は、開会10日前の議院運営委員会(議運)で日程が確定後、すぐに既定の枚数に達してしまったそうです。開会式には天皇陛下がご臨席されるからですが、参議院の議運職員が「自分の経験上、初めてのこと」と驚いていました。

 開会式は天皇陛下の御席のある旧貴族院、つまり参議院の本会議場でのみ行われます。席が460しかないため、出席議員が多いときは通路まで人があふれます。昨年、生前退位の意向を公表されたこともあり、「今上天皇が臨席される開会式を一目見たい」と傍聴の申し込みが殺到したのでしょう。

 開会式は会議ではなく「式典」なので、原則として一般の方は傍聴できないのですが、紹介議員を通じて参議院の議運に申し込むことができます。この申し込みをするのも、秘書の役目のひとつです。

 例年は、席がいっぱいになるまで数日かかります。そのため、支援者からの申し込みに「わかりました、用意しますね」と答えたものの、議運に問い合わせたら「キャンセル待ちでも可能性はない」と言われて頭を抱えていた秘書もいました。国民の天皇陛下への思いが伝わるエピソードだと思います。

●国会議事堂の「開かずの扉」が開いた開会式

 開会式は重要なセレモニーなので、和装で出席する議員も目立ちます。前回の本連載で少し触れましたが、和装振興議員連盟の主催で全国会議員に着付けや着物レンタルの案内がされるからです。今年も、開会式後には華やかな和装姿の議員たちが国会議事堂の正面に集まりました。やはり、和装はいいものですね。

 和装姿の議員たちが陛下をお見送りした後に、普段は「開かずの扉」と呼ばれている国会議事堂の正面玄関を背景にして、集合写真の撮影がありました。この扉は、開会式の日に陛下のみが出入りされる特別な入口です。開いているところを見ると、特別な時間に立ち合えているという“秘書特権”に感動すら覚えます。

 今年は、陛下のお見送りの場に秘書の姿も多くありました。いつもは議員事務室で仕事している秘書たちも、陛下を見送るために雪の舞う寒空のなかを出てきたのです。実は、神澤もそんな秘書の1人でした。

 陛下のお出迎えから開会式、お見送りまでの式典は厳かで、白バイやSP、参議院・衆議院の衛視や職員の連携プレイがとてもかっこよかったです。いい思い出となりました。

●「自民党が先だ!」国会議事堂前で怒鳴り合い

 そこまではよかったのですが、撮影のために正面玄関前に華麗な和服姿の議員たちが整列しようとしたとき、怒声が飛び交う事態になりました。

 開会式は13時からで、陛下のお見送り終了が13時30分ごろ、続いて和装議連の集合写真撮影、14時から衆議院本会議がスタート……というスケジュールでした。そこで、集合写真を撮影しようと和装議連の議員たちが整列しようとしたとき、突然、自民党の写真室のカメラマンが「自民党の参議院議員のみの集合撮影を先にする」と言い出したのです。もちろん予定外の出来事で、和装議連の議員たちは怒りました。

「衆議院は14時から本会議だぞ。先に議連の写真を撮れ!」

「そうだ、そうだ!」

 と怒声が飛び交い始めました。ちなみに、一番怒鳴っていたのは自民党の衆議院議員の先生方です。最終的には、なぜか自民党の参議院議員の集合写真が先に撮影されたのですが、全員の顔が隠れないように並んだり着物の袖や裾を整えたりしているうちに時間がかかってしまい、また怒声が飛び交います。

「早くしろ! 本会議が始まるだろ!」

「はよ、撮れや!」

 そんななかで撮影されたのが、「参議院自民党の集合写真」です。写真をご覧になる機会があったら、この怒鳴り合いを想像してみてください。

 寒いなかで時間がかかり、すっかり雰囲気が悪くなったせいか、自民党の撮影が終了すると、みんなそそくさと帰ろうとしてしまいました。あわててスタッフが和装議連の議員を追いかけて戻ってきてもらう、というドタバタの末、やっと「和装議連の集合写真」が撮影できました。

 議員と秘書たちは、なんとか衆議院本会議には間に合いましたが、すっかり体が冷えてしまいました。そんな事情などまったく想像できない和装姿の議員たちの写真は、なかなか素敵に撮れています。ぜひ、ご覧ください。

 こんなドタバタがあったものの、和服を着る機会は減ってほしくないと思います。1月は、開会式のほかにも新年賀詞交換会などの行事が続き、和装姿の方を見かける機会も多いものです。

●支援者と相撲部屋の朝稽古見学も議員秘書の仕事

 話は少しそれますが、稀勢の里が初優勝を果たした大相撲の初場所でも、和装で応援されている方の姿をテレビ中継で見かけました。今年は、19年ぶりに日本出身の横綱が誕生ということで、国会も盛り上がっています。

 普段は大相撲の話をしない国会議員まで、「稀勢の里の地元が選挙区だ」「(大阪場所、名古屋場所、福岡場所で)田子ノ浦部屋が宿舎にしている場所が選挙区だ」などと、少しでもつながりを見いだして喜んでいます。なかには、稀勢の里が子どものころから付き合いのある国会議員もいて、「横綱昇進パーティを開く」と意気込んでいました。

 実は、力士を応援している国会議員も少なくありません。選挙区出身の力士の後援会長には、国会議員が就任していることが多いことをご存じでしょうか。そういったご縁で、相撲部屋の朝稽古の見学などに地方から上京した支援者たちをお連れすることも、秘書の仕事のひとつです。

 また、超党派の「大相撲の発展を求める議員連盟」という組織もあります。相撲人気が低迷していたころは、同議連に所属していると、招待券をいただいたり升席のチケットを割引価格で購入したりすることもできました。今は人気が復活したため、議員事務所でもなかなかチケットを入手できなくなっており、同議連の目的は達成されたといえます。

 ちなみに、華やかな和装の議員の先生方を横目に、秘書たちは「平成28年度第3次補正予算案」の審議の準備で大忙しです。昨年末からの閉会中にインフルエンザで寝込んでしまった秘書が多いことに驚きましたが、今はもうみんな元気にがんばっています。

 次回は、具体的に「がんばる国会議員」の姿を報告していきます。
(文=神澤志万/国会議員秘書)