コカ・コーラ 500ml(「Amazon HP」より)

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 2016年の大みそか、渋谷駅の周辺が歩行者天国となり、約6万7000人(主催者発表)が集まったという大々的な年越しカウントダウンイベントが実施された。協賛は、渋谷区に本社を構える日本コカ・コーラ。特設のフォトブースで記念撮影した参加者にはコカ・コーラの限定ボトルを振る舞うなど、「コークであけおめ」を合言葉に、年明け一発目の乾杯を盛り上げたのである。

 そして迎えた17年は、日本コカ・コーラの前身である日本飲料工業が設立され、我が国でコカ・コーラの製造が始まってから60周年となるメモリアルイヤーだ。同社が自ら「独特の味わい」と謳うように、その刺激的な口当たりは、老若男女の誰もが知るところだろう。

 しかし、それほどまでに親しまれている飲料でありながら、コカ・コーラにはどこか謎めいた部分も多い。例えば「コカ・コーラのレシピを知っているのは世界で2人だけ」という、都市伝説のような話を耳にしたことはないだろうか。

 レシピは現在、コカ・コーラ発祥の地であるジョージア州アトランタのワールド・オブ・コカ・コーラ博物館に保管されており、その成分は非公表。12年に製法を見直し、発がん性物質が含まれるカラメル色素の量を減らしたそうだが、味への影響はないとされている。

 この一件を含め、コカ・コーラの味を劇的に変えるような施策は長らく取られていないというのが共通の認識だ。なぜなら、コカ・コーラ側は過去に「カンザス計画」と呼ばれる大失敗を経験しているのである。

●味の変革が裏目に出た「カンザス計画」

 1985年4月、ライバルであるペプシ・コーラの順調なシェア拡大を脅威に感じていたアメリカのコカ・コーラ社は、従来の製品に取って代わる「ニュー・コーク」を市場に投入した。

 会長だったロベルト・ゴイズエタ氏いわく、「もっとなめらかで、まろやかで、大胆な味」のニュー・コーク。ところが世間の評価は非難轟々で、変更前の味が「コカ・コーラ・クラシック」として再登場したのは、ニュー・コークの発売からわずか3カ月後だ。

 ジャーナリストのマーク・ペンダグラストが著した『コカ・コーラ帝国の興亡 100年の商魂と生き残り戦略』(古賀林幸訳/徳間書店刊)によれば、当時コカ・コーラ社の消費者ホットラインには、多いときで一日8000本ものクレーム電話が殺到したという。さらに抗議の手紙が4万通も届いたといい、同書ではその一部をピックアップしていた。

「ぼくの妹は、コークの味が変わったので泣きわめき、元に戻してくれるまで泣きやまないと言います。(略)ぼくは妹の泣き声を聞くのにうんざりしてきました。まだ11歳だけど、元に戻してくれなければ裁判所に訴えるつもりです」

「元のコークこそ本物であり、何であれ絶対にその代わりにはなりえない」

「最愛のコークよ。あなたは私を裏切った。(略)あなたは、なめらかな、魅惑的な甘い嘘の味がした。あなたは金に汚れた娼婦になり、理想を否定してしまった」

(以上、『コカ・コーラ帝国の興亡 100年の商魂と生き残り戦略』より引用)

 ニュー・コークに対しては、これだけ散々な反応があったのだから、もう迂闊にはコカ・コーラの味を変えられるはずがない。ただ、このカンザス計画から30年以上たった昨今でも、日頃からコカ・コーラを愛飲している人々は味の変化を疑うことがあるようだ。

 実際に16年11月、インターネット上の巨大掲示板「2ちゃんねる」では、「10月くらいからコーラの味が変わった」と題されたスレッドが立てられており、いわゆる“まとめサイト”にも波及し、ネット上での議論に発展。そんな最近のコカ・コーラ評の書き込みを抜粋して紹介すると、こんな具合である。

「ラベルが冬仕様になってから不味くなった。しかも炭酸も抜けやすい」

「甘みカラメル色素が変わったんじゃないかと思う」

「今まで何回も変わっている。昔はもっと炭酸が強かった」

「原料価格が上がっているからね。フレーバーをちょっとずつ安いのに変えていってる」

●日本コカ・コーラに真相を直撃

 もちろん、以上のコメントは“個人の感想”の域を出ないものであり、匿名の意見ということもあって信憑性に欠ける。そこで、日本コカ・コーラに直接問い合わせてみた。

 コカ・コーラの味、原材料、配合比などは、最近変わったのか。また、ファミリーレストランなどのドリンクバーで提供されているコカ・コーラの味や成分は、市販のコカ・コーラと同じなのかについても、併せて質問した。

「コカ・コーラの味わいですが、誕生から130年がたった今も、爽快感と気分を高揚させるおいしさは変わっておらず、これからも“特別なひととき”を提供してまいります。それは、容器(ガラス瓶、PETボトル、缶)においても、ファウンテン(サーバー)においても変わりません」(日本コカ・コーラ広報部)

 つまり、130年間、レシピは変わっていないということのようだ。

 続いて同社広報部に、「2ちゃんねる」やまとめサイトの該当ページを実際に確認してもらった。ネットユーザーや一般消費者から、同様の問い合わせはあったのだろうか。

「『10月くらいからコーラの味が変わった』というスレッドでしたので、16年10月前後にお客様から寄せられた問い合わせ内容を確認しましたが、そのような問い合わせが増えたことはありませんでした。

 先ほど申し上げた通り、コカ・コーラの味わい自体に変わりはありませんが、飲用時の体調や食べ合わせによっては味が異なって感じる場合がございます。また、容器の違いや、コカ・コーラをコップに移すなどの飲み方の違いによって、人それぞれ味や炭酸の感じ方が変わることがあるようです。

 開封後に、時間がたつとコカ・コーラの炭酸は徐々に抜けていきますので、おいしくお飲みいただくためには、開封後できるだけ早く飲み切っていただくことをおすすめいたします」(同)

 コカ・コーラの味そのものは変わっていないが、愛飲する人の体調や飲み方によって変わったように感じてしまうという。知らないうちに味が変わっているのではないかと疑問を持っていたコカ・コーラファンにとっては、一安心できる回答だろう。
(文=森井隆二郎/A4studio)