<アイスランドの研究チームが、「より多くの時間を教育に費やす傾向にある遺伝子群が1910年から1975年までに減少している」という研究結果を発表した>

 科学技術の進歩や文明の発展によって、人類の生活は、より便利で豊かになってきた。それゆえ、ともすると「現代人は、昔に比べて優れた能力を持っている」と思いがちだが、果たして実際はどうなのだろうか。

 アイスランドの首都レイキャビクでゲノム(DNAのすべての遺伝情報)の収集・分析を行うdeCODE社の研究チームは、2017年1月、「アイスランドにおいて、より多くの時間を教育に費やす傾向にある遺伝子群が、1910年から1975年までに減少している」との研究結果を、学術雑誌「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」の電子版 で発表した。

 この研究では、1910年から1990年までに生まれたアイスランド人12万9,808名を対象にゲノムを分析。その結果、「学歴の高い人は、平均に比べて子どもが少ない」ことが明らかになった。教育を受ける期間が長くなることで、子どもを持つ時期が遅れることが原因のひとつとして挙げられており、この傾向は、男性よりも女性により強く見受けられる。

 この研究結果について、研究チームは「学歴の高い人ほど子どもが少ないため、アイスランド人が持つ遺伝子の総体、すなわち"遺伝子プール"への寄与が小さく、その結果、より多くの時間を教育に費やす傾向にある遺伝子群が希少となっている」と考察。この現象は、人類の進化をとめる"負の自然選択"とも考えられ、長期間にわたって継続すると、その影響は人類にとって深刻なものとなるおそれがあるという。

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 しかしながら、このような遺伝子群のみが、ヒトの教育レベルに影響を及ぼすわけではない。この研究結果によると、知能指数(IQ)の低下は10年で約0.04ポイントにとどまっており、遺伝子群のみが教育レベルに影響を与えるケースに比べて、その低下の幅は小さくなっている。

 仮に、この研究結果の示した傾向がアイスランドに限ったものではないとすれば、人類の叡智や豊かな文明などを次世代に確実に引き継ぐため、社会的環境など、個々人が先天的に持つ遺伝子群以外の要素を、人為的に制御する必要があるだろう。とりわけ、教育システムの拡充は不可欠。教育機会の開放とその質の改善によって、遺伝子レベルで"負の自然選択"がなされようとも、社会全体の教育レベルを向上させ続けることができるかもしれない。

松岡由希子