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Qualcommが電気自動車(EV)のワイヤレス給電技術「Qualcomm Halo」(図1)を着実に前進させている。「オートモーティブワールド2017」では、最大11kWの充電コイルを見せ、最大20kWの充電器を展示はしなかったが、試作したことを明らかにした。前回開催のオートモーティブワールド2016では、ダブルD型コイルにすると、3.7kWのシングルコイルよりも出力電力が2倍程度の7.4kWに上げられることを示したが、今回はさらに最大11kWの充電器も展示した。

ワイヤレス充電は、充電のコードやプラグが不要で、充電器をクルマに差す必要がない。車庫に充電コイルを設置するだけで済むなど簡便な充電方法である。しかも雨や雪などにも左右されない。動作は簡単で、コイルとコイルを向かい合わせにするだけ。1次コイルの電力が磁界結合によって2次コイルに伝わる。いわば、交流電圧を変換するトランスと同じ原理だ。

送信コイルの磁界によって受信コイルを結合させるため、コイル同士が向き合う位置さえ決まれば、効率よく結合でき、送信側の電力を受信側に伝えることができる。磁気結合に加えて、磁気共鳴も使っているようで、電力が伝送される効率は90%前後だとしている。ただし、磁界結合と磁気共鳴のコンビネーションの詳細は語らない。磁気共鳴はコイルのインダクタンスLとコンデンサのキャパシタンスCによる共振回路を作り、その共鳴周波数を一致させると、1次コイルから2次コイルへと電力が伝送されるというもの。

ワイヤレスだからといって有線による充電と比べて効率が大きく落ちるという訳ではない。有線でも電気抵抗があるため、伝送効率は94%以下だという。電線は細い線を束ねて構成するが、太い1本の線に高周波を流すと表皮効果により、表面しか電流が流れず抵抗成分が大きくなってしまうことを避けるためだ。Haloのコイルに使われている太い電線は細い線を束にしているが、この表皮効果を回避するためである。

Qualcommが力を入れているワイヤレス充電器は、交流50Hzあるいは60Hzの200V系を使って85kHzの交流で充電する。85kWのワイヤレス充電器は、この展示会ではBMWのプラグインハイブリッド車i8に適用した(図2)。また、この周波数はトヨタ自動車が2016年の「人とクルマのテクノロジー展」で出展デモした時の周波数と同じである。

Qualcommが、このHalo技術の開発を開始したのは2011年。電気自動車のレース、フォーミュラEに出場してから、すでに3年目になるという。2014年からHalo技術を搭載したレーシングカーを走らせている。例えば、Lola-DraysonのB12/69電気自動車に20kWのHaloを搭載し、時速200マイル(320km)を超えるスピードを達成している。

レーシングカー以外でも、3.3kWシステムを2台のDelta E-4スポーツクーペに搭載したり、高級車のRolls-Royceの102EXに7kWの充電コイルを搭載している。

ワイヤレス給電における問題は2つある。1つは、人間がコイルの上を通りかかったときに給電スイッチを入れる場合だ。危険であるため、地面に設置する給電パッドの周辺にレーダーを発しており、その反射で人を検出し、実際に人を検出すると電力を下げる。もう1つは金属の異物がコイルの上に存在する場合だ。金属を検出すると自動的に止める。ドライバーのスマートフォンにも金属異物があることを知らせ、取り除いてもらう仕組みとなっている。

地面に設置したり埋め込んだりするベースパッドの大きさは650mm×650mm×50mm(高さ)であり、その重量は29.8kgもある。地面のコイルは電力を送る側。クルマに搭載するコイルは電力を受ける側で、こちらはできるだけ軽い方が良い。このため、3.7kWのコイルの重量は3.97kg、7.4kWのコイルは5.27kg、そして11kWのコイルでも7.68kgと軽量化している(図3)。

軽量化のために、図4のようにコイルを1つから2つに増やし、結合効率を高めた。コイルが2つあると磁界のループは2つできる。その上に結合用のコイルが近づくと2つのループ同士がくっつき合い、へこむことから密に結合することになる。図4の手前の右のコイルと左のダブルD型コイルは同じ電力で大きさは約半分に減っている。その分軽い。

今後、Qualcommは将来に備えて、道路に給電用のコイルを埋め込み、走行中にも充電できるようなコンセプトも持っている。

(津田建二)