経済評論家の三橋貴明氏

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 世界がナショナリズムに傾く中、労働力のコストが高く資源がない日本は経済的には不利に思える。しかし経済評論家の三橋貴明氏は、「日本こそが次の経済的覇権を握る」と予測する。

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 これからの時代、世界の経済的覇権を握るにはナショナリズムにいち早く移行することが条件になる。

 過度にグローバル化し、移民問題などを抱える欧州諸国や米国は、急激に現状を変えることは非常に困難だ。ナショナリズムへ移行するにはグローバリズムを“正しく”終わらせる必要があるが、欧米ではもはや手遅れに近いのだ。そうした国々は政策が揺れ動き、最悪、軍事的混乱まで引き起こしかねない。

 だが主要国の中で、日本だけは事情が異なる。理由は日本が「まだグローバル化していない」ことに他ならない。

 グローバリズムとは、ヒト・モノ・カネの国境を越えた移動の自由化を「善」とするものだ。

 カネの移動を表す「対内直接投資残高GDP比率」(2013年末)という指標がある。外国からその国がどれだけ直接投資を受けているかを示すもので、日本はわずか3.7%。ヒトの移動を表す「移民人口比」(2015年)を見ても、日本は1.6%と主要国では圧倒的に低い。モノの移動を表す輸出入依存度も低く、日本はグローバル化していないことがわかる。

 日本は世界から閉鎖的だと長年批判を浴び続けてきた。ところが、今や世界各国は、グローバリズムに終止符を打ち、ナショナリズムへシフトしようとしている。その中で、国民が“グローバル化疲れ”していない日本は、圧倒的なアドバンテージを持っているのだ。

 スムーズにナショナリズムに移行するために日本がすべきことは何か。

 まずは“グローバリズムの国際協定”であるTPP(環太平洋経済連携協定)を破棄する。法人税率は引き下げても海外から企業がやってくるわけでもなく、企業が内部留保を貯め込むだけなので元に戻す。

 さらに技術者などの高度人材は別として、単純労働者の外国人移民は受け入れない。「人手不足が深刻化する」という反論もあるが、それは生産性の向上で解消する。

 法人税率を引き上げる一方で、政府は企業に対し、ドローンやロボット、AI(人工知能)といった国内産業の生産性向上につながるツールへの投資を行った場合に減税措置を取る。そうすれば企業の先行投資は間違いなく拡大する。

 国交省はすでに、建設分野の生産性向上のための投資拡大を行なっている企業は優先的に公共事業を落札させる「iコンストラクション」を実施している。こうした施策を他の分野に広げれば、多くの分野で生産性向上が起きていく。

●みつはし・たかあき/1969年熊本県生まれ。東京都立大学(現・首都大学東京)経済学部卒業。2008年に中小企業診断士として独立。近著に『2017年 アメリカ大転換で分裂する世界 立ち上がる日本』(徳間書店)など、著書多数。

※SAPIO2017年2月号