寝ても疲れがとれない
とにかく朝に弱い
寝つきが悪い、夜中に目が覚める
睡眠時間が足りない
余裕のある毎日を過ごしたい
(「はじめに こんな悩みや願望を抱えるあなたへ」より)

こうした悩みを抱える人たちに向けて書かれたという『朝5時起きが習慣になる「5時間快眠法」―――睡眠専門医が教えるショートスリーパー入門』(坪田 聡著、ダイヤモンド社)の著者は、睡眠専門医として20年以上現場に立ち続けている人物。本書においては「5時間快眠法」、そして「朝5時起きが習慣になるメソッドを紹介しています。

5時間快眠法とは、短時間睡眠でも脳と体が満足し、スッキリ目覚めて、日中のパフォーマンスも最大化できる眠り方だ。(中略)さらに、「朝5時起き」の技術にまで言及している。平均的な7時間前後の睡眠をとる人が、どう睡眠時間を削減していくか、医学的に正しい睡眠時間の削り方を、「朝5時起き」を事例に紹介する。

「5時間快眠法」によって、短時間で脳と体の疲れがとれるよう睡眠のクオリティを高めつつ、「朝5時起き」も習慣になる。
(「はじめに こんな悩みや願望を抱えるあなたへ」より)

その根拠として著者は、「睡眠は、『時間』×『質』のかけ算で決まる」と主張しています。睡眠の質が高ければ、時間を削っても問題はないということ。長時間眠らなければいけないのは「質」に問題があるからで、質が上がれば7時間睡眠が5時間になったとしても満足できるようになるというのです。

きょうはSTEP1「『即寝・即起き』の技術で、睡眠効果を高める」内の、「即起きの技術」に注目してみたいと思います。

理想の目覚めが手に入る「自己覚醒法」


即起きの技術について著者がまず伝えたいのは、「理想の目覚め方」なのだそうです。目覚めについてのいちばんのストレスは「もっと寝たい」ということであるはず。そして当然のことながら、人間が最も心地いいと感じる理想の目覚めとは、自然に目が醒める状態。毎日、目覚ましを気にせず、目が覚めたタイミングで起きることができれば、ストレスを感じることもなくなるというわけです。

それができれば苦労はないという気もしますが、意外なことに、睡眠時間が短くても実現可能なのだというのです。人間は「自己覚醒能力」という、自分が起きたい時刻に起きられる能力を持っているため、その能力をフル活用すれば、目覚ましなしで起きることができるということ。

脈拍や血圧を上昇させて全身の細胞を活発に動かし、ストレス耐性を高める働きを担っているのが副腎皮質刺激ホルモン。自己覚醒能力の高い人は、起きる時間に合わせて副腎皮質刺激ホルモンを分泌しはじめ、目覚めてすぐ活動できるよう脳と体の準備を整えているというのです。つまり自然に目覚められるようになれば、心地よく起きられるだけでなく、すぐに活動できる準備が整った状態で起きられるという考え方。

だとすれば気になるのは、目覚ましがないと起きられない人が、どうすれば自然に起きられるようになるのかです。が、著者によれば方法は簡単で、「何時に起きたいか」を強く思い描くだけでいいのだそうです。それだけで、起きたい時刻に起きられるという嘘のような話ですが、効果は実験でしっかりと証明されているとか。

いいかたを変えれば、「○時に起きよう」と意識するだけで、その時間に起きるように体内時計を調整する機能が人間には備わっているということ。そしてその精度を高めるためには、起きる時刻の数だけ枕を叩くのが効果的なのだといいます。5時に起きたいなら、1から順番に数字を声に出しながら、枕を5回叩くということ。

にわかには信じがたい話ですが、これは記憶中枢に刻み込む作業で、つまり自己暗示として高い効果が得られるというのです。加えて「自分は絶対に起きられる」と信じきることで、自己覚醒能力はより高まるのだそうです。(70ページより)


「5分間二度寝」で幸せに目覚める


一度目覚めたあとでもう一度眠りに入ってしまう「二度寝」は、よくないといわれることが少なくありません。ところが著者は、二度寝は悪いことではないと主張しています。むしろ、心にとっても体にとってもいいことだらけなのだとも。

二度寝をするときには幸せな気分になれるものですが、それは抗ストレスホルモン「コルチゾール」が多く分泌されるから。コルチゾールの分泌によって、心はウォーミングアップし、その日のストレスに備えるというのです。

また二度寝をしているときの脳は、リラックス効果を促すアルファ波の影響が強くなり、脳内麻薬の一種である「エンドルフィン」が分泌されることに。エンドルフィンには、自分の好きな音楽や小川のせせらぎなど、心地よい音を聞いた吐息に多く分泌され、心身の緊張を和らげたり、ストレスを軽減したりする効果があります。つまり二度寝をするだけで、小川のせせらぎを聞くのと同じ効果があるというのです。

ただし、コルチゾールを最大限に分泌させ、毎日の生活に影響のない程度の二度寝をするには、「二度寝は5分、一度だけ」というルールを守ることが重要。二度寝を10分以上すると、もはや二度寝とは呼べないほどの深い眠りに入ってしまうからだということです。(76ページより)


寝起きの「アイソメトリックス」で、さらに目覚めスッキリ


即起きを勧めているとはいえ、朝、目覚めてすぐに飛び起きるのは危険だと著者は記しています。数時間横になっていたわけなので、寝起きは体がこわばっているもの。そこで、目覚めてすぐは、まず体をほぐし、体の隅々まで血液を巡らせ、体温を上げる必要があるというのです。

そのために効果的なのは、「アイソメトリックス」という運動法。筋肉の長さを変えずにギュッと力を入れる運動で、道具を使わず、筋肉への負担もかけることなく、短時間で効果を得られるエクササイズだというのです。ポイントは、次の2つ。

・呼吸を止めない
・動かす部位を意識しながら力を入れ、10秒間、動かさない
(80ページより)

この2点を意識しながら、首や肩まわり、腰の筋肉を動かし、体を温めていくということ。そしてそのメソッドとして、ここでは3つのアイソメトリックスが紹介されています。

アイソメトリックス1
1. 親指以外の4本の指を、胸の前でひっかけて組む
2. 2.外側に向かって思いっきり引っ張り合う
3. 胸を張り、背中の肩甲骨をくっつけるイメージで、10秒続ける

アイソメトリックス2
1. 手のひらを胸の前で合わせる
2. 腕が水平になるようにひじを上げ、両手を思いっきり押し合う。これを10秒続ける

アイソメトリックス3
1. あお向けに寝て、両ひざを立てる
2. 両腕を直角に曲げる
3. 両ひじをついて、それを支えに胸を持ち上げる。これを10秒続ける
4. 今度は逆に、背中を敷きぶとんに強く押しつける。これを10秒続ける
5. 3〜4を3回繰り返す
(81ページより)

この3つのアイソメトリックスは、直接動かす首や肩まわりの筋肉だけでなく、腰の筋肉にもいい影響を与えるそうです。腰の筋肉が硬くなると寝返りが打ちにくくなって睡眠障害に陥ることもあるため、寝起きのアイソメトリックスは睡眠の質を高めるという意味でも重要だといいます。(79ページより)


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アイソメトリックス図


飲み会翌朝に有効な、脳と体を強制的に起こす裏ワザ


前日に飲みすぎたり、予想外の残業があったりと、イレギュラーな事態で目覚めが悪いこともあるはず。そこで、ここでは脳と体に強制的にエンジンをかける2つの方法が紹介されています。

・朝シャワー
体を起こすには、体温と血圧を上げることが重要ですが、特に冷え性や低血圧の人は、自力で体温や血圧を上げることが困難です。そこで著者がオススメしているのが、熱めの朝シャワー。適温は40〜42度で、シャワーの刺激によってエンジンがかかり、昼の神経である交感神経が活発に動き出すのだそうです。

・甘いもの
チョコレートなどの甘い食べ物は、脳の栄養に。血糖値と血圧が上がり、それにつれて体温も上がるといいます。また、バナナもいいとか。バナナには目覚めを促すセトロニンの原料となるトリプトファンが多く含まれており、時間がないときには朝食代わりにもなるそうです。(82ページより)



ナポレオンやエジソンもショートスリーパーだったというのは有名な話ですが、本書を通じてその技術を学べば、日々のパフォーマンスを向上させることができるかもしれません。睡眠に関し、冒頭に挙げたような悩みを抱えている人にとっては、読んで見る価値がありそうです。

(印南敦史)