大統領就任式直後に設定されたトランプ大統領の公式ツイッター。まだツイートはない状態

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2017年1月20日、ドナルド・トランプ氏はワシントンの連邦議会議事堂で宣誓を行い、第45代米国大統領に就任しました。2016年は英国のEU離脱を決した国民投票、そして米大統領選の結果と、世界の大手メディアの事前予測を覆す出来事が続きました。グローバリズムを象徴したテレビ報道への対抗手段としてツイッターを駆使したというトランプ氏を通して、デジタルメディアの影響力を考えます。(クオン株式会社 ベルリン支局長 武邑光裕)

グローバル化×グローバリズム
岐路に立つ世界

 これまで私たちは、デジタル技術が世界を統合すると考えてきました。インターネットは本質的に大国間の境界を崩壊させ、世界をひとつにする手段だと考えられてきたのです。しかし、インターネット時代は、実際には真逆の結果をもたらしています。グローバル社会に進むのではなく、多くの国はナショナリズムに回帰しています。人種の混淆と多様性に向かうのではなく、人々は個々の人種を意識するようになっています。デジタルメディア環境は、それ以前のテレビ環境の延長ではなく、人間社会に異なる態度や行動を生み出す景観なのです。

 過去30年の間、グローバル化(Globalization)は世界のあらゆる壁を取り除く、強く安定したメガトレンドでした。ベルリンの壁が崩壊してから27年、グローバル化の理想は、世界に同時配信されるCNNやBBCが目指したテレビの姿とも重なりました。ほとんどの人々は、何の疑いもなく、この傾向が今後も長く続くと感じていました。グローバル化は、罪のない概念としてスタートし、1970年代以降、世界は貿易、投資、旅行、情報を通じて拡張されたのです。しかし冷戦後に進展したグローバリズム(Globalism)には、イデオロギーの成分が注入されました。そして今、両者を区別することはほとんどできません。

 レーガンとゴルバチョフによるベルリンのブランデンブルグ門での「壁を取り壊す」ためのイベントは、グローバリズムを推進したテレビの時代を象徴するものでした。しかし今、トランプ氏はメキシコとの国境に壁を建設することを公約としています。

 実際のグローバル化は、日常生活の中で受け入れられています。あらゆる国々の製品が世界を行き来し、どこの都市にいてもグローバル化の恩恵を感じます。しかし今、軍備の増強とナショナリズム、孤立に向かう保護主義が世界を推進しています。私たちが直面しているのは、グローバル化の終焉ではなく、グローバリズムの自滅なのです。

 英国でのEU離脱を決めた国民投票にはじまり、米大統領選挙で「アメリカ第一主義」を掲げたドナルド・トランプ氏の勝利など、2016年は大手メディアの事前予想を覆す大きな出来事が相次ぎました。Brexitの事前予測は「EU残留」、米大統領選直前の予測はヒラリー・クリントン氏の圧倒的優勢でした。いずれも世界に大きな影響力を持つテレビ、新聞などの伝統的メディアの世論調査に基づいた予測でした。世論調査自体が機能不全となる事態に、メディアと市民との不和も浮上し、市民の世論調査への回答が実際の投票行動と同じではなかったことも推測されました。

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