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●局内でも驚かれる、Webの反応
『テニスの王子様』『弱虫ペダル』『刀剣乱舞』などの漫画やゲームを舞台化した作品は現在、「2.5次元」と呼ばれている。すでに「日本2.5次元ミュージカル協会」という団体も設立され、海外からも日本のカルチャーとして熱い視線を送られている作品群はまた、多くのイケメン役者が出演していることで人気を得ている。一方で、テレビを中心とした視聴者にとってはまだ知名度が低いという状態でもある。

日本テレビ系列で始まるドラマ『男水!』(21日スタート毎週土曜 24:55〜)は、そんな2.5次元舞台で活躍する選りすぐりのイケメンでキャストを固めた作品。主役だけでなく、出演するほとんどの役者が舞台で活躍し、実際に同作の舞台公演も行うのが特徴だ。舞台とテレビを新たに橋渡しするこのドラマはどのような意図で生まれたのか、プロデューサー2人に話を聞いた。

○日テレのアニメから巡り巡って今回の企画に

――まずは今回の企画において、お二人の役割を簡単に教えてください。

渡部:私は日本テレビのプロデューサーとして企画を立てた時に通すという役割でした。今回、キャストに関しては深澤さんにお任せしたので、一緒に確認しつつ局内の交渉を行いました。

深澤:私は従来2.5次元の舞台製作をやっていたので、各事務所の方々ともお話をしながら、全体を進めました。

渡部:私がバラエティ、ドラマ、アニメと色々な部署を経験していまして。担当していた『曇天に笑う』『金色のコルダ』といった作品が舞台化した際に、2.5次元デビューをしていたんです。AnimeJapanやコミックマーケットといった国内のアニメ関連イベントで出展していた日テレのイベントステージで、深澤さんにイベント制作をお願いしたのが、直接一緒にお仕事したきっかけでしょうか。

深澤:そういった背景があったので、渡部さんは2.5次元に対しても理解があり、活躍している若手の役者も知っていて、「彼ら、いいよね」とずっと言ってくださっていたんですよ。

――渡部さんは、今はドラマの制作をされているんですか?

渡部:編成局の総合コンテンツ部という、ドラマもバラエティもやる、何でも屋みたいな部署に異動になりまして。何かドラマ作品をできないかなというところで、今回の企画が生まれました。

深澤:渡部さんとは「いい役者がたくさんいるよね」という話をさんざんしていたので、いっそ彼らで、というのがスタートでした。一人ひとり、ファンも多いですし、場数を踏んで実力もある。でもやっぱり、彼らの舞台と映像の世界には断絶があって、現状だと行き来する可能性が低いのがもったいないなと思っていたんです。そこへ今回の話で、企画としても新しいし、きっとお客さんは受け入れてくれるんじゃないか、従来のファンじゃない人にも届くんじゃないかと思いました。

○「1年後には連ドラに出ますよ」という口説き文句

――先日キャストインタビューをしたところ、「この企画を通した日本テレビさんがすごい」という感想もあり、局内では「2.5次元」を知らない人もたくさんいたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

渡部:ほとんど知らないですね(笑)。ただ上の人は面白いと言ってくれたので、ある程度いけるだろうと踏んで、とりあえずキャストをおさえました。舞台は全然スパンが違って、先の先まで作品が決まってしまうので。

深澤:今でこそ言えますけど、夏くらいまでは正式な決定が出ていなかったですもんね。

渡部:だましだましでやっていて(笑)。

深澤:でも、日テレ内の調整をするのは相当大変だったんじゃないですか?「2.5次元」というワードを知っている人たちはいたけど、それが何かまで知っている人たちは、ほぼいなかったんですよね。

渡部:資料もけっこう作りましたね。舞台の動員力はどれくらいあって、物販はどれくらい売れるとか……。

深澤:私も、何度も通いましたもんね。

渡部:深澤さん、相当日本テレビに来ていました。入構証も作って、何回も社員食堂で食事していきましたよね(笑)。

深澤:本当に、一般的な知名度がない役者さんで地上波のドラマを作るのは、なかなか難しかったと思うんです。ただ日本テレビさんって、新しいものに対して、先に手を出すという気風があって。みなさん「スターの卵がいるんだったら、売り出していきたい」といった雰囲気はありました。

渡部:先物買いというのか、この中からもしかしたらスターが出るのかもしれないなら「賭けようよ」という気持ちはありました。今、新人の役者って、NHKの朝ドラくらいしか知名度を上げる場がなくて、もったいないんですよね。2.5次元の素晴らしい役者たちを見せたいし、「1年後には絶対に、連ドラに出ますよ」といった口説き文句を使って、社内をぐいぐい押して行きました。

○「Webを強化しよう」というテーマ

――例えば舞台関係のニュースを掲載すると、一般的にあまり知られてない方にこんなに反響があるんだ、と驚かれることがあります。Webで宣伝できるからこそ、こういった企画が成り立つという点もありますか?

深澤:「Webを強化しよう」というのは、最初からテーマでした。キャスト陣は、みんなTwitterやInstagramをやっていて、アカウントのフォロワーがそれぞれ何万人もいるベースがあって、彼らの発信力は重々知っていました。今の舞台の若手俳優の中で本当にトップスターがそれぞれ発信したら、かなりのリーチ数になります。Webからどれだけ発信できるかというのは、彼らの武器でもある。この作品を通じて、けっこう日テレ内でも風向きが変わっていきましたよね。

渡部:情報出しの結果は常に社内にあげていますが、「すごいじゃん、人気あるの?」と、どんどん見る目が変わりますね。他の番組のプロデューサーから、キャストについて聞かれたりすることもあります。『PON!』にも4日連続でキャストが出演しましたが、それも社内で情報系のプロデューサーに企画書を配って、興味を持ってもらえた結果です。いろいろな反響があれば、今後も他の番組でも扱ってもらえるのではないかと思っています。

深澤:結構評判も良いんですよ。『東京暇人』という深夜の番組に出た時は、最初2週の予定だったんですけど、撮れ高が多くて「3週やりたい」と言ってもらえて。

渡部:数字的にもけっこう良かったみたいです。見てみるとイケメンがそろっていますし。ただ彼らも人気で、スケジュールが埋まっているのが、なかなかジレンマだったりもしますけどね。

●役者の熱さが、テレビ局内にも伝染
○「熱い男・松田凌」

――今回の作品について、ファンの方の「これで2.5次元舞台の世界が変わるかもしれない」という反応を見たりもしたのですが、いかがですか?

深澤:役者たちもそう思って頑張ってくれています。彼ら自身が「自分のキャリアを変えてやるんだ」「今後の人生を変えてやるんだ」という強い思いがあるので、お客さんに伝わっていくといいなと。撮影中もそういった気持ちを感じますし、どんな過酷な撮影があっても耐えている。

渡部:本当に、全く弱音を吐かないですよね。

深澤:撮影で1日泳ぎ続けるみたいなことがあっても、音を上げず。

渡部:肩が上がらなくなっても頑張るし、みんな本当にやる気満々でした。そして、熱いんです。見るからに燃え盛ってる人もいれば、静かな闘志を燃やしている人も。とにかく全員熱い。

――松田凌さんは、先日行われたイベントでもかなりコメントが熱かったですよね。

深澤:いや、熱いんですよ!(笑)

渡部:「熱い男・松田凌」みたいな(笑)。

深澤:その熱さがいろいろな人たちに伝染していて、きっと局の上の人たちにも伝わって、味方になってくれてきているんだろうなというのは実感しています。そういう彼らの熱さと、高校生たちが純粋に水泳に打ち込む姿がリンクすればいいですよね。作品のキャラクターと、本人の思いがどこかでリンクしていって、倍のパワーになってお客さんに届くことはあるんじゃないかなと思います。

渡部:1、2話もすでに、熱さが尋常じゃないです。深夜にこんな熱いドラマでいいのかというくらい。

深澤:だいたい深夜ドラマってゆるめに行く感じですけど、目が冴えちゃいますよね(笑)。

○舞台とテレビを行き来する流れ

――2.5次元に限らず、最近は月9に山崎育三郎さんが出演されたり、大河ドラマに新納慎也さんや井上芳雄さんが出演されたり、舞台やミュージカルを中心とした俳優さんが話題作に出演されていると思うのですが、そういった流れも来ていますか?

渡部:特にミュージカル俳優が、こんなに急に上がってくるとは思わなかったですよね。テレビって、常に人気者の発掘はしているのですが、少しマンネリ化はしているので、打破したい気持ちはあるのかなと思います。新しい人を探して、やっと演劇のジャンルにたどりついている。それは今の時代の流れで、ネットがあって、様々な趣味を持っている人が情報を拡散できる場があるからこそかもしれません。

深澤:やっぱり、舞台の役者にはファンが付いているので、例えば「会員数が増える」といったようなことも実数としてあったりするのかも。

渡部:今、お客さんも生で体験でできることじゃないと、お金を払わなくなってきていますよね。舞台やコンサートには人が入るけど、映像だけだと厳しかったりする、そういう流れもあるのかもしれませんね。

――この作品もドラマだけでなく舞台公演もありますが、それは最初から企画に含まれていたんですか?

渡部:含まれていました。せっかく役者もそろっていることですし。

深澤:ドラマを見て興味を持った人が、舞台に興味を持ってほしいという気持ちもありました。結果的に、舞台を見る人が増えてくれれば、また良いことだと思います。生の舞台の迫力を感じてもらえるし、彼らの舞台上でのかっこよさは本当にすごいので、少しでも裾野が広がってくれたらと。

○少しずつ空気が変わってきた

――人気の方が集まっているので、舞台版はチケットを取るのが大変そうだなという印象もありますが。

深澤:でも最初の頃は、それも埋まるのか心配されていましたもんね。

渡部:「舞台で赤字になるんじゃないか」くらいに思われていました。そのためにまた資料を作って、局内を口説いて。深澤さんはずっと「即完です」と言っていて、私もこのメンバーならそうだろうなと思っていたんですけど、なかなかね(笑)。

深澤:今はもう、そこを疑問に思われることはなくなりました。2016年の11月13日に、日テレ前の広場で壮行会という形で、彼らが思いを語るイベントをやったんですけど、想像以上に人が来てくれて。

渡部:広場が溢れかえりました。集まったみなさんは舞台観劇に慣れているので、お行儀がよくて、静かに熱を持って見守っている感じでした(笑)。でも、Twitter上はめちゃくちゃ熱い。

深澤:関係者の人達もけっこう来ていて、あれで「あ、ほんとに人気なんだ」と思ってくれた感じはありました。役者たちも気が引き締まったところはあって、目の前に本当に応援してくれるファンがいて「期待に応えなきゃ」とは言っていました。逆にこちらも成功させないと、新しい道にもならないので。成功できれば、今回はドラマに出ていない舞台の役者にも目が向くだろうし、彼らの可能性が広がる道になるようにしてあげないといけないと思います。

渡部:新人の登竜門じゃないですけど、つなぎ役ができればいいなと。で、最終的にはビッグになって日テレのドラマに帰ってきてね、みたいな(笑)。

――今後も同じような形のドラマは制作される予定ですか?

渡部:まだ言えるほどの何も決まってはいないですけど、やっていきたいなとは思っています。今度は水泳ではない作品で(笑)。水泳はロケが大変でした……。安西(慎太郎)くんが死んでました。

深澤:みんなほぼ未経験だったのに、よくやりましたよ。

渡部:そこが彼らのプロ根性のすごいところで、2〜3カ月の練習で、見られるものに仕上げてきましたからね。

深澤:本当にこれがみんな全く泳げなかった人の姿かと、驚くと思いますよ。あのクオリティは素直に感動します。

渡部:皆、本当にフォームがきれいですから。見所ですよ!

『男水!』

花とゆめ「花LaLa online」で連載中の木内たつや原作コミックを実写化。高校の弱小水泳部を舞台に、男子高校生たちの青春を描く。作中でメインとなる東ヶ丘高校には松田凌(榊秀平役)、宮崎秋人(篠塚大樹役)、赤澤燈(小金井晴美役)、佐藤永典(滝結太役)、神永圭佑(原田ダニエル役)、コーチ役に廣瀬智紀(川崎亮也役)が出演。対する強豪校・龍峰高校生徒として、安西慎太郎(藤川礼央役)、小澤廉(平光希役)、黒羽麻璃央(仁科譽役)、池岡亮介(神宮一虎役)が出演。

(佐々木なつみ)