26日、長らく出版不況にあえぐ日本では昨年、奇跡のベストセラーが誕生して業界内の話題をさらった。その本は、「文庫X」との名を冠して売り出された“覆面書籍”だ。

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2017年1月26日、長らく出版不況にあえぐ日本では昨年、奇跡のベストセラーが誕生して業界内の話題をさらった。その本は、「文庫X」との名を冠して売り出された“覆面書籍”だ。台湾紙・中国時報(電子版)に掲載されたコラムでは、その成功の理由について綴っている。

書名、著者名、版元はもちろん、内容もすべて不明。買い手に明らかにされているのは税込み810円という価格と、500ページ超というページ数、ノンフィクションというジャンルのみだ。「文庫X」として売り出されたその本は、手書きの推薦文がびっしりと綴られた手作りのカバーで覆われており、購入するまで中身を開いて見ることはできない。「どうしても読んで欲しい810円(税込)がここにある」。カバーにはそんな一文が躍る。

この販売企画は、盛岡市のある書店員が考案したもの。この書籍はもともと2013年末に発売され、現在では大手通販サイト・Amazonのユーザーレビューでも5点満点中4.7点と高得点を叩きだしているが、単行本の時点では売り上げ面で大成功したとは言えないものだった。しかし、「文庫X」として2016年7月下旬に店頭に出ると反応は上々。ツイッターなどのSNSで話題が拡散した。そのうち全国から注文が殺到し、年末時点で13刷、18万部の売り上げを記録した。

若者の活字離れが進んでいるといわれて久しい。また、電子書籍やオンラインショップなどの普及で、書店の売り上げが厳しい状況に落ち込んでいるとも聞く。そしてわれわれの日常は、本などなくても膨大な情報にさらされている。スマホなどのデジタルデバイスは、必要な情報を、必要な部分だけ、瞬時に届けてくれる。

そんな中で起きた、「文庫X」の奇跡。たった1人の店員の本への愛情と情熱が、手書きの一字一字にこめられた思い入れが、どんな著名人が書いた推薦文よりも説得力をもって、読者に届いたものだといえよう。

最も力を持つ販売戦略とは、価格競争でも、権威ある人物の後押しでもなく、顧客の心をつかむ熱意であろう。ストーリーを持つ商品こそが、人々の心に「刺さる」のではないだろうか。「文庫X」の事例は、デジタル時代においてもさらなる感動を人々に与える手法があるのだということを教えてくれる。そしてその感動を生むのは、やはり「人」なのだ。(翻訳・編集/愛玉)

■愛玉プロフィール
中国語翻訳者、ライター。 重慶大学漢語進修課程で中国語を学ぶ。その後、上海で日本人向けフリーペーパーの編集、美容業界誌の中国語版立ち上げなどに携わる。中国在住経験は4年。レコードチャイナの編集員を経て現在、北海道へ子連れIターン移住。フリーで中国ニュースの翻訳や中国関連の執筆などを行う。得意分野は中国グルメ、中華芸能。
連絡先:writeraitama@gmail.com