冨手麻妙は園子温監督の大ファン

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 「リアル鬼ごっこ」「映画 みんな!エスパーだよ!」などでタッグを組んできた園子温監督と冨手麻妙が、ロマンポルノに初挑戦した「アンチポルノ」に込めた思いを、映画.comに語った。

 本作は、1970〜80年代に社会現象となった成人映画レーベル「日活ロマンポルノ」を、園子温監督のほか、行定勲、塩田明彦、白石和彌、中田秀夫といった5人の監督が復活させた「ロマンポルノ・リブート・プロジェクト」の1作。小説家兼アーティストとして一世を風びする京子(冨手)と、京子に付き従うマネージャーの典子(筒井真理子)のアブノーマルな関係を、ビビッドな色彩で描く。

 トークショーの出待ちをし、園監督に出演を直訴するほどの熱狂的ファンだったという冨手。本作ではヌードだけでなく、「穴という穴に入ってきた」ほど絵の具まみれになり、首輪をつけられて引きずられ、ケーキに頭から突っ込むなど体当たりの演技に挑戦しているが「自分の中で園さんの作品で主役をやるのが目標だったし、脱ぐのなら園さんの作品がいいとずっと思っていたので、やっと『アンチポルノ』で目標がかないました」と充実の表情。園監督を「自分よりも、女性よりも女性らしい監督」と評し、「園さんの作品は、知らずに見たら女性が作ったのかなって思えるぐらい女性らしい。だからこそ、脱ぐことにも抵抗がないです」と言ってのける。

 初対面時に「脱げます!」と即答した冨手の意気込みを買い、「新宿スワン」に出演させた園監督は「冨手さんはその15秒ぐらいのシーンで面白いと思ったので、少しずつ出番を増やしていきました」と力量を称賛。本作でも「彼女で撮るだろうなと思っていました」と信頼感をのぞかせ「もうずっと高揚しすぎて、彼女をいじめてしまいました。四つんばいになってはいずり回るシーンは、本当にくどいくらい撮って、気づいたら彼女の足が血まみれでした。いたわらない気持ちが結構全面的に出た映画ではあるかもしれない」と振り返った。

 作品のテーマに関しては「男も女も消費しつくされるのがこの国の定めなので、そういうところを描きたかったんです。僕は“日本映画”と枠の中で生きていて、すごくうまいこと消費されかけていたころがあってつらかったんです。彼女(冨手)はグラビアをやっていて、男たちの文化の中で消費されている。だから、女性のことを代弁してもいるけど、自分のことも代弁しているし、多くの人のことも代弁しているつもりです」と、園監督は私的な思いが根底に流れていると解説。劇中のセリフも、詩人としても活動する園監督らしい色合いになっており「今回は本当にいつもよりも自分の書きたいセリフを書きました」と語る。

 「京子は園子温そのものだ、っていう話を今日初めて知った」という冨手は「私は初めて台本を読んだときに私自身のことだと思ってやっていたので、書いてある言葉とか、女性の裸とか性が消費されるということに対しての怒りとかも、私がずっと抱いていたものだったんです。でも、どう言葉で表現したらいいかわからなかったものを、はじめて園さんがセリフとして言葉にしてくれたって気持ちでやっていました」と共感を口にする。ロマンポルノの出演には周囲の反対も多かったというが「モヤモヤしていたら、『それを全部爆発させろ、このセリフにぶつけろ』って、園さんがセットの中に入ってきて言ってくれたのが印象に残っています」と回想した。

 両者の口ぶりからは、本作が、園子温と冨手麻妙という異端の才能が高純度で配合された作品であることがうかがえる。園監督は「『アンチポルノ』は今年から突き進む、自分にとっての日本映画のスタートラインに立ったんじゃないかなと思っています。日本映画を撮る場合は鋭角的な、とにかくとがっていることを前面に出して映画を撮っていこうということもあって、そういう意味では出発点になるかな」と結んだ。

 「アンチポルノ」は、1月28日から新宿武蔵野館ほか全国順次公開。