20日、トランプ新政権が発足した。これまで類のない米政権だけに、具体的に何をするのか、世界が固唾をのんで身構えている状態だ。現状において、中国はトランプ政権をどう見ているのだろうか。

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米国で20日、トランプ新政権が発足した。これまで類のない米政権だけに、具体的に何をするのか、世界が固唾をのんで身構えている状態だ。現状において、中国はトランプ政権をどう見ているのだろうか。

よく言われることだが、トランプ大統領は「ビジネスマン感覚」で政治を理解しているとされる。だとすれば、当選直後に台湾の蔡英文総統と電話会談したり、経済金融問題などで中国が譲歩せねば「1つの中国」政策を見直す可能性があるとの発言をしたことにも、納得がいく。

まず、米商務省が16年2月に発表した15年の対中貿易赤字は前年比6.6%増の3656億9500万ドルだった。対日貿易赤字の686億4000万ドル(同2.2%増)と比べて、まさに「桁違い」だ。トランプ大統領にとって、中国が「容認できない国」であることは確実で、為替操作国に指定するなどの発言を繰り返してきた。中国とは経済問題だけでなく南シナ海問題についても強硬姿勢で臨むと見られている。

さて、ビジネスマンとしてのトランプ氏が、さまざまな交渉でどのようなテクニックを使ってきたのか。よく言われるのは「最初に、相手がとても飲めない条件を出して、自らは形式的に譲歩しながら最初から想定していた結果をもぎとる」手法に長じていることだ。

つまり、「台湾問題」という中国にとって絶対に譲れない問題に言及したのは、交渉上のテクニックというのだ。台湾問題をいったん俎上(そじょう)に出した上で、同問題については譲歩していく。つまり「1つの中国」の原則に結果としては手をつけないことで、中国から経済などでの譲歩を引き出す作戦であると理解できる。

ちなみにトランプ大統領は台湾・蔡英文総統との電話会談の後に、フェイスブックに「合衆国がどうやって、台湾に何億ドルもの武器を売れるかに興味ある」とも書き込んでいる。中国側が経済問題で十分に譲歩せねば、「1つの中国」に抵触しないまでも、台湾への武器輸出を増やす可能性に言及したものと考えられる。

だとすれば、トランプ政権にとって、どちらに転んでも「儲け」は転がることになる。中台を相手に「相見積もり」を取る感覚で接していると言うこともできる。

ところで、中国側にとってトランプ政権はどのような性格を持つのだろうか。これまでの米政権が極めて慎重に扱ってきた台湾問題で、いとも簡単に再考示唆の発言をしたことからすれば、やりにくい相手であることは間違いないだろう。しかし考えれば「最初に、相手が絶対に受け入れられない条件」を示す交渉術は、中国人が極めてよく使う方法でもある。

トランプ大統領はさらに、20日の就任演説で「米国の生き方を誰に対しても無理強いしようとはしない」と明言した。つまり、他国とのつきあいで人権や民主を重視する考えはないと宣言したことになる。ここで思い出すのが、中国には、リビアやイラン、ミャンマーなど人権問題で西側諸国から強く非難されていた国と経済関係を着々と構築した経歴があることだ。

当時も、そして今も中国の言い分は「内政不干渉」だ。中国にとって「利益になる」と判断すれば、相手国が抱えている問題にはかまわず、関係を構築している。

ここまでくれば、中国とトランプ大統領の発想は「共通する部分が多い」ことが分かる。要は、「自らの利益を最大限に重視」だ。米国にとって本来、自由や民主という理念は、自らの立場を長期的に強化する効用があった。しかし米国は国際社会における圧倒的な力を失いつつある。いわゆるGゼロ時代の到来だ。そこで、目先の利益にこだわる世論が力を得ることになった。

一方の中国は、経済や軍事で台頭した。本来ならば、国際社会における責任や立場にもっと留意した方が長期的にはよいはずだが、経済高度成長の終焉、格差問題、環境問題、腐敗問題などさまざまな問題が噴出し、政権にとって余裕があるとは言えない状況だ。

ということで、米トランプ大統領による「アメリカ第一」、習近平国家主席による「中国の夢」のスローガンには重なる部分が大きい。どちらの国も「切羽詰まった状況」にあるとの背景がある。

中国にとって米トランプ政権は極めて「やりにくい交渉相手」ではあるが、その手法も状況も含めて「分かりやすい」存在であると解釈できる。極論すればトランプ米政権と中国習近平政権は、双子の兄弟のような性格を持つということになる。(1月23日寄稿)

■筆者プロフィール:如月隼人
日本では数学とその他の科学分野を勉強したが、何を考えたか北京に留学して民族音楽理論を専攻。日本に戻ってからは食べるために編集記者を稼業とするようになり、ついのめりこむ。「中国の空気」を読者の皆様に感じていただきたいとの想いで、「爆発」、「それっ」などのシリーズ記事を執筆。