【昭和の自動車用語】「タケヤリ」「デッパ」っていったい何?

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公道走行は違反となる「族車」アイテム

「竹槍(タケヤリ)」とは、上方に向かって長く突き出したマフラーのテールパイプのこと。「出っ歯(デッパ)」は、前方に大きく伸びたチンスポイラーのこと。どちらも、典型的な「族車」のアイテムだ。

全盛期は1980年代、昭和の末頃の暴走族の間で流行ったスタイルだが、今日も「お正月暴走」や、「荒れた成人式」、そして「裏サロン」(東京オートサロンの時期)などに、竹槍・出っ歯仕様のクルマが出没し、ニュースに取り上げられることがある。

当然のことながら、「竹槍」も「出っ歯」も保安基準に適合するわけがないので、違法改造。一般公道を走ること自体が違法行為だが、中には、仮ナンバーを不正に取得しているケースもある……(仮ナンバーの不正取得も取締りの対象)。

美意識は人それぞれの主観的な問題ではあるが、少なくとも筆者はこうした竹槍・出っ歯仕様に共感できる部分は欠片もない。せっかくなので、技術的な視点で見てみると、「竹槍」は排気管の全長が伸びるので、エンジンの出力特性が、トルク型のセッティングになる可能性はある。

しかし、長く高いテールパイプを後付けすることで、リヤのオーバーハング重量が増加し、Z軸まわりの慣性モーメントが大きく、パイプに高さがある分、ロールモーメントも大きくなる。

後輪駆動車なら、トラクションが増す可能性はあるが、アンダーステア傾向になり、ヨーが出しにくく、収束しにくい。取り付け剛性もほとんど期待できないので、マフラーそのもののG変化に対する位相遅れが生じてくる。

基本的に爆音仕様なので、排気効率はよさそうだが、排気管が長いので、排気ガスが冷めやすく流速は落ちるはず。またバンパーエンドで、かなり急角度で向きが変わっているので、排気抵抗は大きく、パワーの損失につながるだろう。

出っ歯はシルエットフォーミュラの影響を受けたパーツ

一方、「出っ歯」は、レーシングカーのシルエットフォーミュラの影響を受けたエアロパーツの一種だと考えられるが、シルエットフォーミュラ自体が、ツーリングカーのエアロダイナミクスの黎明期のマシンなので、空力的には非常に遅れていて、メリットはない。

シルエットフォーミュラの大きなチンスポイラーも、アンダーステア対策と、ボディ下面に流れ込む空気を堰き止め、側方にかき分ける空力デバイスだったが、今日では、ボディ下面に流れる空気を利用してダウンフォースを稼ぐのは、空力デザインの常識であるのはご存じのとおり。

また、「出っ歯」を装着することで、オーバーハング重量が増加し、ヨーダンピングもかなり悪化する(回転モーメントは、「出っ張り×重量」で決まる)。ロードクリアランスや、アプローチアングルも最悪になり、「出っ歯」本体の剛性、取り付け剛性ともに期待できないので、大きな危険をはらんでいる。

これらのリスクは、ある程度自己負担・自己責任ともいえるが、違法な突起物は周囲をも危険にさらす可能性がある。また爆音と奇怪なルックスは、多くの人を不愉快にするという意味で、非常に罪深い趣味・道楽だといえるだろう。