2017年、私のイチオシ「Jリーガー」(6)
■堂安 律(ガンバ大阪/MF)

 スタンドから眺めていて、あるいはテレビで見ていて、自然と目がいくタイプがいる。レフティーの選手である。

「どうして?」と聞かれれば、「好きだから」としか答えようがない。左利きの選手、それも中盤のファンタジスタ系、マエストロ系のプレーヤーが。

 日本人では、名波浩、中村俊輔、家長昭博......。海外では、ディエゴ・マラドーナ(アルゼンチン)、ゲオルゲ・ハジ(ルーマニア)、デヤン・サビチェビッチ(ユーゴスラビア/現モンテネグロ)、アルバロ・レコバ(ウルグアイ)......。

 そもそもレフティーは希少価値が高いうえに、ボールのさらし方や相手との間合いが独特かつ絶妙で、プレーのリズム、ドリブルのテンポも右利きの選手とは異なっている。さらに芸術性に優れた選手が多いから、攻撃で"違い"をもたらすことができるタイプが多い。

 そんなレフティーの中で新シーズンに頭角を現しそうな期待のブレイク候補生がいる。

 プロ2年目を迎えるガンバ大阪の堂安律(どうあん・りつ)だ。

 ジュニアユースからガンバでプレーする生え抜きで、高校2年となった2015年に2種登録され、5月27日のAFCチャンピオンズリーグ、FCソウル戦でクラブ史上2番目の若さでトップチームデビュー。高校3年となる翌2016年にトップチームに昇格した。

 2列目ならどこでもこなせるが、やはり持ち味が出るのは右サイドか。タッチライン際でボールを受けると、「キュ、キュ、キュ」と音が聞こえてくるかのような鋭いカットインからフィニッシュを狙ったり、スルーパスを通したりする。

 パスも、ドリブルも、フィニッシュも――。そんなプレースタイルからユース時代の監督から付けられたニックネームは「マラドーアン」。堂安自身も小学6年の頃からマラドーナのプレー集を繰り返し見て、プレーのイメージを膨らませていたという。

 昨年10月のU−19アジア選手権では、U−19日本代表として6試合中5試合に出場して1ゴール。日本の、5大会ぶりとなるU−20ワールドカップの出場権獲得に貢献すると、自身も大会MVPに選出された。J1での出場は3試合にとどまったものの、セカンドチームであるU−23ガンバ大阪の一員として出場したJ3では21試合10ゴールを記録。さらに、12月にはアジア国際年間最優秀若手選手賞にも輝いた。

 堂安への期待を高めているもののひとつは、ガンバにおける立ち位置の変化だ。

 堂安が得意とする中盤の2列目は近年、同じ顔ぶれがプレーしてきたが、今オフに阿部浩之(→川崎フロンターレ)と大森晃太郎(→ヴィッセル神戸)のふたりがチームを去った。泉澤仁(大宮アルディージャ→)と井出遥也(ジェフユナイテッド千葉→)が新たに加入したものの、中盤の再編が行なわれるのは間違いなく、堂安が割って入る隙間は昨シーズン以上に広がっている。

 さらに昨シーズン、無冠に終わったことで、長谷川健太監督は攻撃的な新システム導入を検討しているため、堂安にチャンスがめぐってくる可能性は低くない。そのうえで、指揮官からはオフ・ザ・ボールの動きの質やハードワークを求められるはずで、それを身につけることこそ、堂安がトップレベルで活躍する条件になるだろう。

 もうひとつは、同じレフティーで、同世代のライバルが存在すること。それが、堂安がブレイクする糧となると踏んでいる。

 ひとりは、U−19日本代表のチームメイトで、ひとつ年上(学年ではふたつ上)となる川崎フロンターレの三好康児だ。U−19アジア選手権では堂安がMVPに輝いたものの、三好はフロンターレで準レギュラー、スーパーサブといった立ち位置で、昨シーズンはJ1で15試合に出場して4ゴールをマーク。J1での実績は三好がはるかに上回る。

 もうひとりのライバルは、堂安の3つ年下となるFC東京U−18の久保建英だ。昨年9月に、U−16日本代表として世界大会の出場権獲得に貢献した久保はその後、飛び級でU−19日本代表に招集された。久保がU−16日本代表で担ったポジションは右サイドハーフ、それはすなわち堂安がU−19日本代表で務めたポジションなのだ。

 かつて中村俊輔も、ひとつ年上(学年ではふたつ上)に中田英寿、ひとつ年下に小野伸二がいて、同じポジションの同世代のライバルたちを意識し、刺激を受けながら、己を磨いてきた。堂安にとっても、三好から受ける刺激や、久保の存在からくる危機感が、成長への栄養剤になるに違いない。

 昨年11月、U−19アジア選手権が終わった直後、堂安はこんなことを言っている。

「監督が決めることですけど、意識で言えば、J3からは卒業したいと思っています」

 その言葉からは、1年目からJ1で活躍することができなかった悔しさと、この先もセカンドチームでくすぶっているわけにはいかない、という強い意志が伝わってきた。

 堂安にはガンバでのブレイクだけでなく、5月に行なわれるU−20ワールドカップでの活躍も期待される。元来備え持つファンタスティックなプレーにハードワークが加われば、もう誰にも止められないはずだ。

飯尾篤史●文 text by Iio Atsushi