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●プロ顔負けの家庭用焙煎機
通信を通じて様々なものにつながるIoT家電が当たり前になりつつある時代になった。そんな中、パナソニックは、新しいタイプのビジネスにたどりついた。

○パナソニックがIoTの焙煎機を開発

パナソニックは、プロ仕様の焙煎機を製造しているイギリスのベンチャー企業「IKAWA」社と技術提携し、きめこまかな温度や、風量制御などによって豆ごとの最適な焙煎ができる家庭用の焙煎機を開発した。この焙煎機はBluetooth接続でスマホ(iOS搭載端末のみ対応)につながるようになっている、いわゆるIoT家電だ。

機械の操作は簡単だ。専用のアプリから焙煎プロファイル(焙煎工程のプログラム)を焙煎機にとばし、生豆を準備したらセット完了。1つだけあるボタンを押すと、予熱が始まり、その後焙煎へと進む。この間、工程ごとの残り時間がアプリ上で表示される。

焙煎のプロファイルによるが、会見のデモンストレーションでは、全体で大体20分くらい。アプリから送られたデータによって、本来プロが手間ひまかけて行う焙煎を、簡単に再現できるというのだ。

なぜ、パナソニックはコーヒーの焙煎機に目をつけたのか。

○ヒートアップするコーヒーをめぐる市場

日本のコーヒー市場は年々拡大している。大量生産により、安価で一般家庭でも飲めるようになった「第一の波」、米シアトル系のコーヒーチェーン店が広まった「第二の波」、そして豆の産地や種類・抽出にこだわるスペシャルティコーヒーが登場した「第三の波」。消費量とともに質もどんどん上がっている。

そんなコーヒーをめぐる市場では、現在、缶コーヒーや、インスタントコーヒーなどを製造している飲料メーカーから、スターバックス、タリーズコーヒーといった「第二の波」のコーヒーチェーン、セブン-イレブンやファミリマートなどのコンビ二、マクドナルドのファストフード、そしてブルーボトルコーヒーに代表される「第三の波」の新しいコーヒーチェーンなど多様な業界からの参入が起きている市場だ。日本の消費者の舌はどんどん肥えていき、それに応えるように、新しいコーヒーが出てきているのが現状だろう。

●コーヒーの「第四の波」になれるか?
ところが、コーヒーのおいしさは、店舗でやっている「豆を挽く」「抽出する」作業の前で9割決まっているそうだ。つまり、今まではわずか1割の中で、各社が味を競っていたということだ。

そして、最近では、「焙煎」もこだわるという流れができている。スターバックスやタリーズコーヒーが焙煎機を備えた店舗展開を始めているのだ。コーヒメーカーを出していたパナソニックからしても、残りの9割にアプローチするという考えはごく自然な流れだっただろう。

○家電業だからこその自宅焙煎で「第四の波」を狙う

その豆ごとに最も素材の良さを引き出す焙煎は異なり、プロでないと最適な仕上がりにするのは難しい。家庭用の焙煎機も今まで売っていなかった訳ではないが、プロの味には届かないものだったという。そこで家電メーカーであるパナソニックが思いついたのが、調理家電の技術とIoTを活用し、プロ顔負けの焙煎ができる家庭用焙煎機だったのだ。

ただ、性能のいい機械をつくっても、素材と、IoTで送る焙煎のプロファイルがよくなくては、おいしいコーヒーにはならない。

パナソニックは明治39年に創業し、当初からコーヒーの生豆の輸入事業に注力している石光商事と提携。家庭用焙煎機と石光商事の厳しい安全基準によって選び抜かれたスペシャルティ豆(定期頒布)、そしてその豆に合わせた焙煎プロファイルの3点をセットで提供するサービス「The Roast(ザ・ロースト) 」を、4月上旬からスタートさせる。

焙煎機単体だけ売るという予定は、今のところないという。なぜなら、焙煎する良質な豆と、それにあわせたプロファイルがあってこそだからと考えているためだ。自分で買ってきた生豆を、専用豆のプロファイルで焙煎することはできたとしても、味の保証はない。だからセットサービスなのだ。購入は、パナソニックのショッピングサイトPanasonic Store(パナソニック ストア)のみでできる。

●なににつながるか
○プロの味をつめこんだプロファイルの重要性

今までに述べてきてわかるように、かなり重要な役割を果たすのが、このプロファイルだ。

セットに入る焙煎のプロファイルは、2013年に焙煎の世界大会でチャンピオンになった、焙煎士の後藤直紀氏が作成。送られてくる生豆パックについているQRコードをスマホにかざすと、アプリにその生豆のプロファイルが読み込まれる。それを焙煎機にとばせる仕組みなのだ。浅煎りから深煎りまで豆ごとに2、3パターンのプロファイルがあり、同じ豆でも焙煎度による味や香りの違いを楽しむことができる。月ごとに違った産地の生豆が送られてくる(2種類セットと3種類セットがある)が、追加の購入も可能だ。このサービスを利用すれば、自宅で手軽に、プロの焙煎士が焙煎したのと同じ味を体験できる。

コーヒーの自宅焙煎という「第四の波」となれるか。それは、いれたコーヒー味の質がいかに高いか。それを、自宅の中で体験できるということに、いかに高い価値を感じてもらえるか。そこにかかっているだろう。パナソニックは、潜在需要を3〜4万世帯としているが、新しいビジネスなので、まずサービスの認知を広めるところからだろう。

○IoT家電によって技術を再現、体験を売るサービス

調理家電の技術とIoTを活用し、プロでないと実現できない技、そしてそれにふさわしい食材をセットにすることで、本来であれば、自宅ではできない食体験を提供する。この食の体験サービスを今後は、コーヒー以外にも展開していくという。

多種多様なIoT家電が、世に出ているが、それによって、その場に行かないと得られないプロの技を“再現”できる。遠くにいても“体験”できる。そういう“つながり”を生むものは、なかったのではないだろうか。これは家電メーカーだからこそできる、新しいサービス提供のあり方だろう。次はどのような新しい食サービスが出てくるか。今後の展開が楽しみだ。

(冨岡久美子)