「地中海食」はアルツハイマー予防にも(shutterstock.com)

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 2010年にユネスコ無形文化遺産に登録された「地中海食」――。南イタリアやギリシャのクレタ島などの伝統的な食生活のことを指す。

 アメリカや北欧などに比べると、この地中海食を食べている地域では、生活習慣病や虚血性心疾患が少ないという調査結果がある。

 地中海食は、その食品のバランスをピラミッド図で表すことが多い。下層にある「毎日食べる食品」は、下から<パスタ・パン・米などの穀類およびジャガイモ><豆類・くだもの・野菜><オリーブオイル><チーズ・ヨーグルト>。

 その上の「週に数回食べるとよい」層は、下から<魚><鶏肉><卵><甘味>。そして、ピラミッドの頂点には「月に数回食べる食品」として<赤みの肉>が挙げられている。

 さらに、<ワインを飲みながら時間をかけてゆっくり食事を摂ること><毎日体を動かすこと>などを勧めている。「毎日食べるもの」のひとつであるオリーブオイルは、一価不飽和脂肪酸(オレイン酸)を豊富に含み、血中のコレステロール値を安定させる。

ダイエットだけじゃない地中海食の実力

 健康的な生活に、ダイエットにと人気の地中海食だが、このほど脳にもよい影響を与えるという新たな研究論文が発表された。『Neurology』(1月4日オンライン版)に掲載されたこの論文では、「地中海食」が高齢者の脳の健康維持に役立つ可能性が示唆された。

 研究著者であるエジンバラ大学(スコットランド)のMichelle Luciano氏らは、「地中海食は正常な認知機能低下、認知症、アルツハイマー病に対して防御効果を示すとの知見が蓄積されてきている。今回の研究は、その機序が脳容積の維持にある可能性を示唆している」と話す。

 脳は加齢に伴って委縮し、脳細胞が失われることが知られているが、このことが学習と記憶に影響する可能性があるという。

 研究では、70歳超で認知症のないスコットランド人約1000人の食事情報を収集した。さらに半数超には73歳時に脳MRI検査を実施し、脳の全容積、灰白質、大脳皮質の厚さを測定し、3年後に401人を再測定した。

 その結果、地中海食によく当てはまる食生活をしている被験者はそうでない被験者に比べて、大きな脳容積が維持されていた。学歴、糖尿病、高血圧、年齢などの脳容積に影響しうる他の因子を考慮しても、この関連性は維持された。

 脳容積に対する影響力は、加齢が最も大きかったが、地中海食の影響力もその半分程度存在していた。一方、魚や肉の摂取量と脳容積に関連は認められなかったことから、地中海食のそれ以外の要素か、全体的なパターンが利益をもたらすと考えられると、研究者のLuciano氏らは指摘している。
和食との共通項も多く取り入れやすい

 認知症になるリスクを少しでも減らしたいなら、今日から地中海食を実践してみてはどうだろうか。2013年に同じくユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」との共通点が少なくないから、日本人にとって取り入れやすいかもしれない。

 地中海食で「毎日食べたい」豆類は、日本人にとって豆腐や納豆などでおなじみの食材。正月の黒豆のほか、金時豆なども昔から食べられている。穀類やジャガイモは言うに及ばず、旬の野菜やくだもの、海藻類をよく食べるのも伝統的な日本の食事だ。

 肉を控え、タンパク質は鶏肉や魚、卵、大豆製品で摂るように心がける。チーズやヨーグルトなどの発酵食品は、漬け物や味噌、しょう油からでも摂ることができる。さらに普段使いの油をオリーブオイルに、晩酌をビールや焼酎から赤ワインに替えると、ぐっと「地中海食」っぽくなるだろう。
(文=編集部)