カーダシアン事件の驚くべき真相 「最後のヤマ」で12億円奪った老年ギャング団

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昨年10月、パリに滞在中だった米タレントのキム・カーダシアンが1,100万ドル(約12億5,000万円)相当の宝飾品を奪われた武装強盗事件は、「青い目」や「老人オマル」といった通称で知られる経験豊富な中高年犯罪者の集団が計画し、鮮やかな手際で実行したものだった。

この老年ギャング団は2016年10月2日、銃で武装し警察官の制服と覆面をした上で、ファッションウィークのためパリを訪れていたカーダシアンの滞在先に押し入った。現場となったのはパリ市内でも指折りの高級地区にある住宅型プライベートホテルで、当時ボディーガードは外出中だった。犯人らはカーダシアンに銃を突きつけ、手足を縛りあげた上で、自転車に乗って逃走した。

盗難品は犯行後すぐに、宝石泥棒の「プロ」たちが利用するルートを使い、世界中のダイヤモンドが集まるベルギー・アントワープへと持ち込まれた。警察筋によると、盗み出された宝石類は既に鋳潰しや再カットされ、闇市場で売り飛ばされた可能性が高いという。その中には、夫のカニエ・ウェストから婚約指輪として贈られた400万ドル(約4億6,000万円)のロレイン・シュワルツのダイヤモンドリングも含まれていた。

そして事件から3か月がたった今月、事件に関与したとして、男9人と女1人が強盗などの容疑で逮捕された。容疑者の大半はフランス警察に良く知られた人物だった。

捜査当局の説明によると、カーダシアンの滞在する部屋に押し入ったのは54〜72歳の犯罪経験豊富な5人組だった。ブレ-ン役だった最年長のピエール・Bは、2006年にコカイン所持容疑で逮捕されたのを最後に引退したものと思われていた。

最年少の男を除く残り3人は60代。うち63歳のユニス・Aは窃盗や麻薬取引などの前科があった。60歳の「老人オマル」ことアオマル・エ・ケダシェは、麻薬取引関連の公判中だった6年前に姿をくらまし逃走を続けていた人物で、ホテルでの作戦を仕切っていたとみられている。

彼は同い年の友人で「青い目」の異名を持つディディエ・デュブルークと、54歳のフランソワ・ドゥラポルトという組織犯罪のベテラン2人をチームに引き入れていた。64歳のマルソー・Bは資金洗浄や文書偽造の長い前科があり、盗品の売却を担当した疑いが持たれている。

さらに、エ・ケダシェの交際相手だった70歳の女と、27歳の息子も逮捕された。息子は5人を車で現場に運んだ運転役だったとされる。パリ・マッチ誌は事件後の犯人らの様子を次のように報じている。

「こめかみに白髪が混じった男たちは、談笑していた。4人は肌寒い12月であるにもかかわらず、パリのカフェのテラス席に座っていた。(…)1950年代に育ったディディエとアオマル、ピエール、ユニスは、犯罪者として知られるようになった。ある捜査官は、『古い世界の古い人間たち』が『カーダシアン強盗団』として話題をさらったのだと語った」

「あの日パリで彼らは、満足を通り越し、歓喜していた。ここ20年で最も大規模かつ華麗で、自分たちの長い犯罪歴で恐らく最後となるヤマを遂行し、900万ユーロの強奪に成功したのだ。テーブルを囲んだ彼らは、うまく逃げおおせたと思い込んでいた。残るは金の分配のみ。それぞれが役割を果たし、それぞれの分け前を受け取る…」

事件はカーダシアンに恐怖の体験をもたらしただけでなく、テロ事件の頻発で既に悪化していたパリのイメージをさらに傷つけた。パリの観光需要は特に富裕層の間で低下しているという。ルポワン誌はこう報じている。

「米国のリアリティー番組スターが襲われた事件により、裕福な旅行者にとってのパリの(危険な)イメージは完全なものとなった。高級ブランド・ファッション業界の市場規模が172億ユーロであることに鑑みると、目も当てられない状況だ」