苦情は年7万件超!「公害」は今も発生し続けている

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■生活系「廃棄物投棄」の苦情多数

「公害」という言葉は、近年ではメディアなどでもメッキリ見かけなくなり、「環境破壊」や「環境問題」などの言葉に取って代わられた感がある。

「公害」というと、古くは1910年頃の「イタイイタイ病」、1956年の「水俣病」、1965年の「第二水俣病」といった1950〜1960年代の高度成長期に発生した公害病や、山梨県・東京都・神奈川県を流れ、首都圏の河川の代表格である多摩川の水質汚濁問題、あるいは光化学スモッグなどを想像する方が多いのではないだろうか。

しかし、1993年に制定された「環境基本法」の下、「大気汚染」「水質汚濁」「土壌汚染」「騒音」「振動」「地盤沈下」および「悪臭」を典型7公害として、実は公害は発生し続けているのだ。

2016年11月30日に総務省が発表した「平成27(2015)年度公害苦情調査」によると、2015年度に新規に受け付けた公害苦情件数は7万2461件で、前年度比べ2324件(3.1%)減少、2007年度以降9年続けての減少となった。典型7公害の公害苦情受付件数は5万677件で、前年度比1235件(2.4%)減少、典型7公害以外の公害苦情受付件数は2万1784件で、前年度比1089件(4.8%)減少となった。

典型7公害の公害苦情受付件数を種類別にみると、「騒音」が1万6574件(典型7公害苦情受付件数の32.7%)と最も多く、次いで、「大気汚染」が1万5625件(同30.8%)、「悪臭」が9897件(同19.5%)、「水質汚濁」が6729件(同13.3%)、「振動」が1663件(同3.3%)、「土壌汚染」が167件(同0.3%)、「地盤沈下」が22件(同0.0%)となっている。ちなみに、2015年度は全種類が減少となった。

典型7公害以外の公害苦情受付件数では、「廃棄物投棄」が1万0173件(典型7公害以外の公害苦情受付件数の46.7%)とズバ抜けて多くなっている。その内訳は、「生活系」の廃棄物投棄が8128件(廃棄物投棄の79.9%)と圧倒的に多い。この生活系廃棄物とは、主に家庭生活から発生した生ごみ・紙くず・新聞紙等の燃焼物、空き缶・空きびん・乾電池等の燃焼不適物、家具・電気製品・ピアノ等の粗大ごみ等を指している。

■「健康」より「感覚的・心理的」被害

これは「公害」というレベルよりも、通常の生活の中で、収集場に決められたルールでごみを出していない、あるいは収集場以外のところにごみを捨てているといった苦情レベルに近いものが多数を占めている。こうした一般家庭から出るごみでも、きちんとルールに従った廃棄がなされていない以上は “公害”ということになる。

非常に面白いことに、公害苦情受付件数全体での発生原因の1位は、意外にも「焼却(野焼き)」が1万3397件(公害苦情受付件数の 18.5%)となっている。野焼きとは、一般的に野山の枯れ草を焼く事が多く、農業行為の一部として行われるケースが多い。

この農業行為の一部として行われる野焼きに、これだけ多くの苦情が寄せられているのかと思いきや、もちろん野焼きも一部では苦情が出ているが、問題なのは「焼却」の方で、野原や空き地、自宅の庭など、屋外でごみなどを焼却する行為に対して、多くの苦情が寄せられ、公害となっている。

実際に多くの自治体では、公害防止条例などにより、ごみなどを基準に適合しない設備で焼却することを禁止しており、罰則規定などもあるため、気を付けて欲しい。

では、公害被害がどこで発生しているのかと言えば、「住居地域」が3万41件(公害苦情受付件数の41.5%)と圧倒的に多く、その被害状況はと言えば、「感覚的・心理的」被害が5万1084件(公害苦情受付件数の70.5%)で2位の「健康」被害が5070件(同7.0%)の10倍以上となっている。

どうやら、もはや死語だと思っていた「公害」は、住宅地域で発生する精神的な被害を中心としたものに変貌、やはり「環境問題」と近似値のものとなっているようだ。かつて公害が持っていた“薄汚れて病的”なイメージこそなくなったものの、公害は公害であり、発生を防止する努力を続けていく必要がある。

(ジャーナリスト 鷲尾香一=文)