クボタ「農業は“日誌と地図”から“クラウド管理”へ」

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■収穫だけでなく品質向上も手伝う

農機メーカーのクボタの株価が好調だ。2016年5月13日の終値は1648円と4年間で2倍以上になっている。過去最高益を更新すると同時に、「攻めの農業」を前面に押し出す農政の方針のもと、農業市場は成長が期待される。そのクボタが力を入れているのが、IoTを活用したソリューション・ビジネスだ。

クボタ・スマート・アグリ・システム(KSAS)は、同社のスマート農機を活用し、農家の日々の作業状況を「見える化」するサービス。例えば最新の農機では、過去のデータを基に肥料の量を圃ほ場じょうの状況に合わせて自動で調節できる。さらにKSAS対応コンバインでは、刈り取りの際に「食味・収量センサ」で籾のたんぱく質と水分量、収量を瞬時に計測。圃場の作物や作業の情報を常時取得し、蓄積したデータは翌年以降の効率化に活用する。

研究開発本部長の飯田聡さんは言う。

「少子高齢化が進む日本の農業が生き残るためには、担い手の確保と集約が不可欠です。その中で我々が何をサポートできるかを考えたとき、農機の開発と販売だけでは限界がある。どんな作物を作り、収量と品質をどのように上げるか。そのお手伝いを我々がしていきたい」

■農地の「収益率」が推測可能になる

KSASの大きな特徴は、圃場ごとの作業状況をリアルタイムで管理できることだ。これまで農家は農作業の進捗具合を、主に日誌と地図で管理してきた。しかし農地が拡大すると、担い手がすべてを細かく管理するのは難しい。肥料の撒き忘れや二度撒きも起きやすい。

(左)コンバイン「ダイナマックス レボ ER6120」。キャッチコピーは「農業を変える。未来が変わる」。(右)KSASでの圃場管理画面。住所、面積、土質、所有者など詳細な情報を簡単に管理できる。

対してKSASを利用すると、圃場ごとの状況を正確に確認できるようになる。作業指示を正確に伝えることでミスを防ぎ、作業の効率化が図れる。

「農業の若い担い手はいま、規模を拡大して効率的な経営をしたいという思いを強く持っています。しかし、以前は広大な圃場の性格を把握して的確な施策を打つには、経験と勘が必要でした。圃場のデータを『見える化』できれば、ブランド化できるようなよい米を、誰もが均一に収穫できるようにもなる」

また、農機そのもののICT化が進むことで、熟練者でも難しかった作業も容易になる。同社ではGPSを利用し、2〜3cmの精度での自動運転が可能になるトラクタを、2018年の発売を目指し開発中だ。

薬剤を撒くドローンが飛び、無人の農機が動く。その管理を農家が手元のタブレット端末で行う――。そんな風景がみられる日も、そう遠くはないと飯田さんは話す。

「データ農業とロボット農機が連携することで、ある土地条件の農地で利益を得るために、どれだけの人とコストが必要かを分析して提示することも可能になるでしょう。スマート農機を使ったKSASのようなソリューションを進化させることは、人手不足の解消だけではなく、農業への参入障壁を下げることにも繋がるはずです」

(ノンフィクションライター 稲泉 連=文 永井 浩、森本真哉=撮影(人物) AFLO=写真)