世界は弱肉強食のジャングルに AP/AFLO

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 大統領選挙中から繰り返し移民やイスラム教徒を敵視する発言を繰り返していたドナルド・トランプ氏は、常に命を狙われ暗殺の危険にさらされていると作家の落合信彦氏は指摘している。だが、敵はトランプ氏が考える外側だけにあるのではない。身内も油断ならないのだと、落合氏が解説する。

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 警備当局や軍・情報機関は、表向き「大統領を守る」姿勢を見せている。それは当然のことだ。

 しかし、軍や情報機関が、時に最高司令官である大統領に牙を剥く時がある。そうなると一気にトランプの命は危機に晒される。

 前例がある。

 1963年のジョン・F・ケネディ暗殺事件だ。詳しくは私の著書『2039年の真実』に記したが、あの事件の真相はヴェトナム戦争への派兵に反対していたケネディに対し、CIAやペンタゴン、軍需産業が構成していた「軍産複合体」が起こした事件だった。

 彼らは、ヴェトナム戦争の戦線拡大を目論んでいた。戦争で儲ける軍産複合体にとって、ヴェトナム戦争の拡大に否定的なケネディは邪魔だったわけである。CIAは、自らの利権を守るためなら、大統領にさえも銃口を向けるのだ。

 トランプは国防長官に軍の元司令官を据え、将軍たちとの関係も今のところ良好とされる。軍との密接な関係から、前号で指摘した通り、ソ連崩壊とともに20年以上にわたって姿を消していた軍産複合体が復活する可能性さえある。

 しかし、あっという間に方針を変えるトランプのことだ。国民の歓心を買うために「国防予算を大幅に減らしてその分、減税する」などと言い出せば、一瞬にして軍産複合体を敵に回すことになる。そうなると、いくら厳重な警備をしていても「大統領暗殺」は防ぎきれないだろう。

 狙われる可能性が高いのはアメリカの暴言大統領だけではない。

 危険なのはフィリピンのドゥテルテだ。トランプとの電話会談で「あなたはよくやっている」と言われて舞い上がったドゥテルテは、「私は、聖人君子になった気分だ」と語った。2人はすっかり意気投合したようだが、テロリストに狙われる可能性もトランプと同じように高い。

「麻薬犯罪撲滅」を掲げて裁判なしでの容疑者の殺害も容認しているドゥテルテは、すでに5000〜6000人の麻薬犯罪者らを殺害しているとされる。国内の支持率は9割以上ながら、ドゥテルテは麻薬密売組織から常に首を狙われている状況だ。

 トランプとドゥテルテの共通点は、「分かりやすい敵」を作って徹底的に攻撃することで、国民の支持を高めるというところだ。しかし2人とも、人気取りのために敵を作りすぎた。それが、彼ら自身を危険に晒す原因となるのだ。

 例えばトランプは、“アメリカ国内の雇用を守るため”として「アメリカから国外に移転した企業の製品には、35%の関税を課す」と打ち出した。このことは、グローバル企業を敵に回したことになる。

 一見、これで企業の国外移転が減り雇用が守られるように聞こえるが、大企業にとっては、アメリカ国内で事業を続ければトランプの“鶴の一声”でどんなリスクに晒されるか分かったものではない。トランプ大統領誕生でアメリカのビジネス環境は「一寸先は闇」になったのであり、賢明な企業なら国外移転を加速させるはずだ。

 そもそもアメリカ国内の雇用を増やすということは、新興国の安い人件費ではなく自国の高い人件費で作った商品を消費者に買わせるということであり、物価上昇を招く。国民は、激しいインフレで苦しむことになるかもしれない。

 そう遠くない未来に、アメリカ国民全員がトランプを敵視するようになるだろう。

※SAPIO2017年2月号