俊輔以外にも30歳以上の主力を大量放出。有望な若手が育ってきているわけでもないのだが

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昨季、ゴタゴタの末にJ2降格となった名古屋グランパスの二の舞いか!? 

Jリーグ屈指の名門、横浜F・マリノスが揺れている。選手、スタッフの処遇などを巡る不協和音が次々と表面化するなか、ついにクラブの顔である中村俊輔の退団(→ジュビロ磐田移籍)が決定。その内情をリポートする!

■現場無視の“外資”にピッチ内外で失望

横浜F・マリノスに、激震が走った。

チームの顔であり、日本サッカー界の宝でもある中村俊輔(38歳)が、ジュビロ磐田への移籍を決断したのだ。

スコットランドリーグのセルティックなど、海外でプレーしていた期間を除けば、プロ入り以来、Jリーグでのプレーは横浜F・マひと筋。そんな俊輔が、愛するクラブをなぜ去ってしまうのか?

スポーツ紙の横浜F・マ担当、A記者が言う。

「2014年、英マンチェスター・シティなどの運営会社であるシティ・フットボール・グループ(CFG)が日産自動車と提携を結び、日産に次ぐ横浜F・マ第2位の株主となって、チーム運営に参画するようになりました。15年にはCFGの息のかかった指導者、エリク・モンバエルツを監督として送り込み、さらに昨年はCFG日本法人代表の利重(とししげ)孝夫氏がチーム統括本部長に就任して、横浜F・マのクラブ運営の実権を握ったのです」

横浜F・マは04年の年間優勝以降、Jリーグのタイトルから見放されている。従来のようにクラブOBなど、日本人スタッフに任せていたのではらちが明かないと考えた日産本社サイドが、CFGとの提携を機にその世界的ネットワークや強化ノウハウで横浜F・マを再生させてもらいたいと、CFGにクラブ運営を一任したのだ。

しかし、この判断が皮肉にも俊輔退団の引き金となった。サッカージャーナリストの後藤健生氏が語る。

「モンバエルツ監督になってからの横浜F・マは攻撃面での組織戦術がまるでなく、個々の選手の調子任せ。それでも俊輔がピッチにいるときは、彼の戦術眼でなんとかパスがつながっていましたが、俊輔がケガで欠場がちだった昨季は、出たとこ勝負のサッカーに終始していました。その上、選手交代など試合中の駆け引きにも見るべきものがなく、普段の練習も同じメニューの繰り返しで、特にベテラン選手たちから手腕に疑問の声が上がっていたようです。もともと若手の育成には定評のあった人ですが、トップチームを率いる勝負師としての適性はあまりないようですね」

結果、昨季の成績は年間10位と、09年以来の2桁順位に沈む。当然、シーズン終盤には、メディアの間で監督解任が噂された。

にもかかわらず、クラブはモンバエルツとの契約を更新。その一方で、ベテラン選手や裏方スタッフには厳しい冬が待っていた。中澤佑二や栗原勇蔵には年俸の大幅減額が提示され、小林祐三は契約が更新されず退団、チーム生え抜きGKの榎本哲也は今季からコーチ兼任という条件をよしとせず、浦和レッズへの移籍を選んだ。さらには約20年にわたって在籍し、選手からの信望も厚いトレーナーを解雇したのである。

「クラブが17年シーズンから思い切った若手への切り替えを図るという噂は、昨年から出ていました。確かに、モンバエルツ監督は若手を積極的に起用していましたし、それなりに育った選手もいます。しかし、レギュラーを完全に奪い取るほど活躍した者はおらず、チームを支えていたのはベテランや中堅で、彼らの力がまだまだ必要なのは明らかでした。

にもかかわらず、成績不振の責任を取らせる形で年長者や裏方を粛清する一方、驚くべきことにモンバエルツはのうのうと生き残り、それどころか年俸はアップしているらしいのです」(A記者)

加えて昨季、CFGの肝煎(きもい)りで獲得した新外国人のカイケは、年俸1億円超の高給取りでありながら、わずか4得点に終わっただけでなく、メンバー外となった試合の最中に銀座で遊ぶ様子を自身のSNSにアップするなど、たびたび規律違反を犯して練習参加を禁じられるなど、チームにとって厄介者でしかなかった。

黒船のごとくやって来たCFGにクラブを支配された上、状況が改善するどころか、ピッチ内外には失望のタネだらけ。そんな折、俊輔の慕う名波浩が監督を務める磐田からオファーがあれば、移籍を考えるのは自然な流れだ。

だが、不思議なのは、高校時代は読売サッカークラブのユースでプレーし、ヴィッセル神戸では取締役の経験もある利重チーム統括本部長が、なぜチームにとって不利益になるようなことばかりしでかすのかという点だ。

「考えられるのは、CFG本社の意向が利重氏の仕事をやりにくくしている可能性です。横浜F・マの現状を知りもしない本社の的外れな方策でも実行せざるをえず、彼が本当にやりたいことをやれていないのかも」(A記者)

■大幅な戦力ダウン&確実なファン離れ

とはいえ、俊輔ら主力級がチームを去ってしまったことは、動かしようのない事実。さらに、お荷物外国人カイケはブラジルのサントスへの期限付き移籍が決まった。代わりに入団する選手のなかでそれなりに名が知られているのは、名古屋から加入した扇原貴宏ぐらい。こんな戦力で今季の横浜F・マはJ1を戦っていけるのか?

「去った選手と新加入選手との損得を考えれば、間違いなく戦力ダウン。特に、俊輔の抜けた穴は大きい。彼自身のプレーレベルだけでなく、周囲の若手が俊輔から学ぶものは少なくなかったですからね。そして自身の減俸提示を含む一連のゴタゴタで、中澤のモチベーションが下がっていないかも心配です。横浜F・マの守備は彼ひとりで持っているようなものですから。中澤の出来次第では、昨年の名古屋のようなJ2降格も十分ありうるでしょう」(後藤氏)

「私はさすがにJ2降格はないと思いますが、昨年の順位より上に行くのはまず無理でしょうね。さらに気になるのは、俊輔という大看板を失った横浜F・マの試合に果たしてどれほどの観客が集まるのか。経営面でも間違いなく苦戦しそうです」(A記者)

昨年来の混乱は名門復活のための痛みを伴う改革だったのか? それとも崩壊への序曲なのか? 横浜F・マは今年、正念場を迎える。

(写真/アフロ)