その“おなかのトラブル”は「腸の疲労」が原因かも

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執筆:井上 愛子(保健師、看護師)
医療監修:株式会社とらうべ


外食や飲み会の増える季節は食べ過ぎや飲みすぎが続いて、腸に負担がかかってしまいますね。

お酒を飲んだ翌日は下痢気味になる、睡眠不足が続くと便秘になる、おしゃべりしながら食事をした後はおなかが張る、などといった症状にお心当たりありませんか?


今回はそんな日常で起こりやすい「おなかの悩みの原因と対処」についてお話します。

おなかのトラブルは腸が疲労しているサイン

便秘や下痢、ガスが溜まって苦しいといったおなかのトラブルは、次の3つのうちどれか、または複数の力が弱まっている時に起こります。

(1)食べ物を消化・吸収する力
(2)水分を回収する力
(3)便を体外に出す力


便秘は、便が硬い/量が少ない・排便回数が少ない・排便が辛いといった状態を指します。

排便のない日が1日以上あったからといって即便秘というわけではありません。2〜3日周期でも定期的に排便があり、不快症状や吐き気・腹痛などもみられない場合は、便秘とは言いません。

実は排便のリズムは人によって異なるため、便秘には明確な診断基準はありません。

ですから、仮に毎日排便があっても、その人が便秘と感じれば「便秘症」なのです。

アルコールを飲むと下痢になりやすいのは、アルコールが胃の粘膜を荒らすことが関係しています。

これによって、アルコールが高濃度のまま小腸に運ばれると、今度は小腸の粘膜も傷つけてしまい、下痢を引き起こします。加えて、アルコールには、腸の蠕動(ぜんどう)運動(便やガスを排出する腸の動き)を促進するはたらきがあります。

そのため、消化の過程で腸にとどまる時間が短くなり、腸での水分吸収がうまく行われないために下痢が起こります。

一方、ガスが溜まって苦しい状態は、次のことがおもな原因と考えられます。

1.腸が圧迫されて働きが鈍くなること


長時間座っていたりすることなどによって、腸が圧迫されると、腸の働きも鈍くなります。その結果、ガスが出にくくなって溜まることになります。

2.高タンパク・高脂肪の食べものを摂りすぎ


高タンパク・高脂肪の食べものは、腸の悪玉菌のエサとなります。悪玉菌を増えることで、腸内環境が乱れ、ガスが増えることにつながります。

悪玉菌が増える原因として、ストレスによる自律神経(副交感神経)の乱れや便秘もあてはまります。また、口から飲み込んだ空気の量が増えることも一因となります。

腸が疲労する原因は?

腸が疲労することと、普段の生活習慣は大きく関係しています。とくに次のような生活習慣は、腸に影響を与えます。

夜更かし(睡眠不足)


自律神経のバランスが崩れやすくなります。

暴飲暴食


栄養バランスが崩れることで、胃腸へ負担がかかります。

ストレス


自律神経のバランスが崩れ、便秘や下痢、腹部膨満感(ふくぶぼうまんかん)、食欲不振、吐き気が起こります。こういった症状が慢性的に続くものを「過敏性腸症候群(かびんせいちょうしょうこうぐん)」といいます。

運動不足、長時間の座り作業、締め付けの強い下着や洋服の着用


腸の蠕動運動が弱くなります。

腸疲労への対処法

食欲がなくても、回復力を高めるためには少量ずつでもいいので、よく噛んで食べることが大切です。下痢がひどいときにはとくに、水分補給を十分に行ってください。


また、食事をするときには次のことに気をつけましょう。

・食事時間を決める。
・1回量を少なめに。食べ過ぎない。
・塩分や糖分は控える。薄味。刺激の強い香辛料は使わない。
・良質なたんぱく質、ビタミン、適度な水分を摂る。
・食物繊維は、水溶性食物繊維(果物や海藻類、キノコ類などに含まれる)と不溶性食物繊維(玄米やイモ類、根菜・豆類などに含まれる)の両方を摂る。
・食べ物の温度は、冷たすぎず、熱すぎず。


食生活のほかにも、夜更かしせず、睡眠時間を十分に確保することも心がけたいですね。自律神経を整えることにもつながります。

また腸の蠕動運動を活発化させるためには、腹筋を鍛えること、ストレスを解消すること、適度な運動で代謝をあげることが大切です。

締め付けの強い下着や洋服の着用も避けましょう。


<執筆者プロフィール>
井上 愛子(いのうえ・あいこ)
保健師・助産師・看護師・保育士。株式会社とらうべ社員、産業保健(働く人の健康管理)のベテラン

<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供