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 最近、長時間労働に対する否定的見解やその対策が必要だという趣旨のニュースを多数拝見します。私は前回の記事で、「1万人を面談した現役産業医として、長時間労働を減らすために『経営者と社員のための長時間労働対策』3つの処方箋」という内容を書きました。

 では、長時間労働は本当に「悪」なのでしょうか?

 労働力人口減少が避けられないなか、企業競争力の維持のためには、やる気がある人には長時間でも働けるよう対応できることは急務です。そこで今回は、健康的で継続可能な長時間労働を実現するために必要な3つの提案を経営者と社員のみなさまにさせていただきます。

1:自由意志のもと、時間をいとわず働くか、定時上がりで働くかを選べる多様な社員制度
2:長時間労働をする社員には、トップアスリート(プロのスポーツ選手)なみの健康管理体制
3:働く側がどのように働きたいか考え、その多様性が尊重される社風

 それぞれ詳しく見ていきましょう。

 最初に必要なのは、個々の社員が、時間をいとわずガンガン働くスタイルか、必ず定時上がり(または三六協定厳守)のスローライフスタイルか、を自由に選択できる多様性だと思います。

 現状、すでに実施されている「多様な正社員」制度(職種や勤務地を限定した働き方)の発展系の一種とお考えいただければいいと思います(:参考:「多様な正社員」の導入状況)。

◆ガンガンスタイルの社員に必要な制度は?

 そして、ガンガンスタイル制度の社員に対しては、個々の自由意志に基づくやる気を尊重しつつも、健康障害リスクを最小限に抑え、異常があれば早期に発見できるようなフォロー体制を設けます。これは、トップアスリート(プロのスポーツ選手)の体調コンディション管理をイメージしていただければいいでしょう。

 具体的には、現状の年1回の定期健康診断よりも頻度の高い「カラダの健康チェック」、医師・保健師等による定期的な「ココロの状態チェック」、脳波や唾液など比較的容易に測定可能で再現性のある客観的指標による「科学的な測定」などといった総合的な体調管理は必須です。社員食堂の夜間営業や健康的な朝食・夜食の提供、栄養士による食事指導などがあってもいいかもしれません。いずれも、プロスポーツの世界ではすでに行われていることです。

 また、ガンガン働く時期だけでなく完全にオフになる時期を必ず設けることも必要です。プロの野球やサッカー選手も年に1回オフシーズンがあります。医療職では3か月間アフリカの病院や海に浮かぶ石油採掘基地で働いた後に1か月間の完全オフというような制度で働く人たちもいます。

 働く人においても、3か月間のハードワークに1か月間の完全オフをセットにするインターバル制度を検討している会社もあります。

◆スローライフスタイルの社員に必要な制度は?

 スローライフスタイル制度の社員に対しては、新たな法律や仕組みよりも、まずは現状の法令などをしっかりと厳守します。

 その上で必要に応じて、例えば、従業員がメールを送受信してはならない時間帯を定めるオフラインになる権利(2017年1月1日より仏国で施行)や、従業員の休暇中はすべての新規メールが自動削除されるという制度(独国ダイムラー社が2014年に導入)など、すでに前例のある制度を研究し自社に合わせて導入すればいいと思います。

 毎日の休息時間を確保するため、退社後11時間は出社しないというようなインターバル制の考え方は欧州では1990年代から導入されていますが、日本では数%しか導入されていません。

 また、最近のIT技術を使えば、1日に業務PCにログインできる時間を制限することや、業務終了時にログオフするとその後12時間はログインできないようなシステムの構築は可能なはずです。