俺たちがどうやってスカウトされたのか知りたいかい?

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 黒澤明の傑作『七人の侍』と同作をリメイクした『荒野の七人』を原案にした映画『マグニフィセント・セブン』(日本公開1月27日)でメガホンを取ったアントワーン・フークア監督が、『トレーニング デイ』『イコライザー』に続いて3度目のタッグとなるデンゼル・ワシントンをはじめ、クリス・プラット、イーサン・ホーク、イ・ビョンホンといったそうそうたる顔ぶれの俳優陣をキャスティングした際の裏話を語った。

 冷酷非道な悪漢に支配された町の住人から彼を倒してほしいと雇われた7人のアウトローが、命がけの戦いに挑んでいく姿を描いたアクション大作。『七人の侍』『荒野の七人』を祖父母らと何度も観たというほどの根っからのファンであるフークア監督は、「伝説的な作品だし、僕らのDNAや人生の一部なんだ」とまで言い切る。監督のオファーを受け、躊躇しながらも、「この映画に描かれていることは、今でも起きているじゃないか。世界中で暴政が行われている。今の僕らの世界でも、弱い人たちが虐げられている」と思ったことで、現代に向けて本作をつくる決意をしたそう。

 そうなると次なる課題は、「この男たちは今の世界だったら誰になるのだろう?」ということ。「一時期はトム・クルーズも関わっていたけど、結局彼が忙しくなってしまった。リアム・ニーソンも関心を持ってくれていた」と知られざるエピソードを交えつつ、「(『荒野の七人』で主演した)ユル・ブリンナーはロシア人だったんだよ。それはともかく、この役を演じるだけの重み、声、パワー、スクリーン上の圧倒的な存在感を持っているのは誰かと考えたら、デンゼルなんだ。しかも彼は西部劇をやったことがない。馬に乗った彼を誰も見たことがないんだ。僕がそう言ったら、すぐに配給会社MGMの人たちが、『デンゼル・ワシントンが承諾してくれるなら、それで行こう』と言ったんだ」。

■全身黒づくめの君が見える…デンゼル・ワシントンをこうやってスカウト!

 さっそくニューヨークで、デンゼルとランチしたというフークア監督。「全身黒づくめの君が黒い馬にまたがっているのが見える。今はそれだけだ。でも見えるんだ、デンゼル。君が熱波の中、丘を越えてやってくるのが。一人の観客として、君の一ファンとして、一映画ファンとして、それはたまらなく素晴らしい場面だ。大イベントだよ」。そう言って、イタリア製西部劇ブームの火付け役として知られるセルジオ・レオーネ的な音楽をかけたそう……。「そうしたら彼が微笑み出して、『わかった。他には誰が出る?』と聞いてきた。『まだ誰にも話していない。君の承諾を得るのが先で、他はこれからだ』と言ったんだ」。こうして7人のリーダー格を務めるデンゼルの出演が決まった。

■電話越しにアメリカ民謡をひたすら熱唱するヤツ!クリス・プラット

 次は、名優スティーヴ・マックイーンがかつて演じた役だった。「トム・クルーズやブラッド・ピットたちがいるけど、彼らのスケジュールの問題もあったからね。それにクリス・プラットもいた。僕はクリスが大好きなんだけど、彼のところにもオファーが沢山来ていたから、クリスに承諾してもらえるか電話で話させてほしいと言ったんだ」と振り返るフークア監督。「『ヘイ、クリス。アントワーンだ』と言った途端、クリスが『オー、シェナンドー』(※アメリカ民謡)って歌い始めたんだ(笑)。これは絶対に出演してくれるって思ったよ。そして歌い終わると、すごい勢いで話し始めたんだ。『ワオ、ほんとに西部劇が好きなんだな』って言ったら、クリスは『西部劇ばっかり観ているよ』って。その数日後に彼から電話がかかってきたんだ。またあの歌を歌ってから、『出るよ。僕が君のファラデー(役名)になる』って。その時からすでに、彼は訛りから何からすべて役に入り込んでいたよ」。

■友人イーサン・ホークには壁ドンで迫られる!

 ニューヨークで『イコライザー』の試写会をしたときのこと。イーサンはフークア監督を見つけるや、「『荒野の七人』をやるってうわさを聞いたぞ」と壁に押し付け、「俺も絶対出るぞ。どの役だってかまわない。出るからな」と迫ったそう。フークア監督は「いいタキシードを着ていたのに、彼のせいでしわくちゃになったよ(笑)。イーサンは熱いからね」とちゃめっ気たっぷりに回想し、その場で「わかったよ、もちろん、君にも出てもらう」と答えたという。「彼のような人たちがそれほど出たい映画なんだってわかって、興奮したよ。みんな本当に出たがっていたんだ」とさらなる意欲がわいたそう。

■イ・ビョンホン、決め手は名前が発音できなかったこと!?

 そして近年ハリウッドでの活躍が目覚ましい韓国人俳優ビョンホンについて、「僕の大好きな『甘い人生』という映画に出ていたのが彼なんだ」と切り出し、なんと「決め手になったのは『君の名前がちゃんと言えないんだ』と言ったときに、彼が『B.H.と呼んでくれればいいよ』と答えたことだね」とまさかの珍回答。「彼は最高だよ。クールだし、身のこなしがまるでバレエのようなんだけど、男の中の男だし、ユーモアのセンスがあって個性的だ。いろいろなことに対して、きちんと自分の思いがある。役柄についても、その時すでにいろいろと意見を言っていた。『彼となら一緒に仕事ができるな。彼自身のアイデアを提供したいという気持ちがあるから、おかげで型にはまらなないものができる』と思ったんだ」と太鼓判を押した。

■最高の7人が揃った!感動の瞬間…

 ついにデンゼル、クリス、イーサン、ビョンホン、そしてヴィンセント・ドノフリオ、マヌエル・ガルシア=ルルフォ、マーティン・センズメアーの7人が顔を揃えるときがやってきた。「衣装合わせのとき、みんなが出たり入ったりしていたけど、最後にようやく全員が揃ったんだ。ヴィンセントはすぐにデンゼルと打ち解けていたよ。彼がファンレターを出したことのある唯一の役者がデンゼルだったと言っていたから、ちょっと感動的な場面だった。そしてクリス・プラットが冗談を言いながら入ってきて、雰囲気がパッと明るくなった。彼はあのメンバーの中で素晴らしい役割を果たしてくれたよ。ヴィンセントがいろいろな衣裳を試着していたことでも、場が和んだね。みんなそこに座って、お互いにまだしっくりとはいかない格好で歩いているのを見ているわけさ。それでお互いの格好について意見や冗談を言っていたんだ」。

 「僕はただ監督として、それをゆったり見ながら、『これは最高のグループだな』と思っていた。衣装合わせで最後に衣裳を着て出てくるのがデンゼルだったから、みんな期待に満ちていたんだ。彼が出てきたら部屋が静まり返ってシリアスな雰囲気になった。そんな中、デンゼルがカメラの前に立って、冗談を言ったりして、ふざけ始めたおかげでみんながリラックスして、いい関係が生まれていったんだ」。映画史に残る名作のDNAを引き継ぎ、現代版リメイクとしてよみがえる『マグニフィセント・セブン』の7人はこうして集結したのだった。彼らの相性の良さはスクリーンからまじまじと伝わってくる。(編集部・石神恵美子)

映画『マグニフィセント・セブン』は1月27日より全国公開