あらゆる海産物がぜいたくに使われた海鮮鍋

写真拡大

冬になると温かい鍋が恋しくなるのは日本人だけではない。

この記事の完全版を見る【動画・画像付き】

亜熱帯の台湾でも1月から2月にかけては気温が一桁になり、冷え込む日がある。春から秋にかけては気温が高いので、台湾の人々は「寒い冬」に対して強い憧れを抱いている。

温かい鍋を囲み、仲間とワイワイ語り合うという光景はそんな彼らにとって特に魅力的に映るものなのだ。

また、乾燥した日本の冬とは異なり、台湾の冬は冷たい雨が降ることが多いので、体感温度は案外低い。

特に新暦の正月から台湾の旧正月にかけては大勢で集まり、鍋を囲む機会も増える。

日本ではなかなかお目にかかれない台湾独特の火鍋をご紹介しよう。

海鮮鍋(ハイシェングォ) 台北

台湾は豚肉大国とは言え、島国なので海鮮も身近な食材だ。刺し身はちょっと不安…という人も、火を通す鍋料理なら安心して海の幸を堪能できるだろう。

台湾では海鮮鍋はちょっとぜいたくな料理だ。

ただ、日本のように牡蠣鍋、あんこう鍋、石狩鍋などと主菜別に分かれているわけではなく、牡蠣もアサリもエビも昆布もごった煮にしてしまうのが台湾流。

食べ放題の鍋レストランが主流だが、海鮮鍋はどの店でも人気が高い。具材の組み合わせで1+1が3にも4にもなるような旨いスープになる。

タレはいろいろな調味料が置かれた「佐料コーナー」で調合。私が好きなのは生の卵黄、ごま油、ニンニクペースト、辛味ソースを混ぜ合わせたもの。濃厚でどんな具材にもよく合う。

鮮納肚(シェンナードゥー)西門店
台北市漢中街179號 TEL:02-23888411
17:00〜2:00 無休

酸白菜火鍋(スァンバイツァイホォグォ) 高雄

時間をかけてじっくり待つことがこれほど大事な料理はない。中国東北地方由来の鍋料理で、銭湯の煙突のように細長い筒が突き出した鍋が特徴的。その名の通り、酸白菜と呼ばれる酸味の強いハクサイの漬物をたっぷり使う。

鍋に入れてすぐにスープを味見してみると、酸っぱくてとても美味しいとは言えないのだが、仲間とビールを飲みながら20分〜30分待つと、酸味がほどよく飛び、旨味とコクが凝縮されたすばらしいダシが出る。時間が経つにつれて濃厚さが増すスープは、それだけでも絶品だが、酸白菜火鍋にはなんと言っても脂身のある豚バラ肉がよく合う。

台湾火鍋の醍醐味は「佐料」(ズオリャオ)と呼ばれるつけダレにある。どの鍋店にも「佐料コーナー」が設置されており、各種の薬味で自分好みのタレを作ることができる。酸白菜火鍋には日本のしゃぶしゃぶで使われているようなごまダレが合うと思うが、佐料コーナーでの自作のタレを作ってみるのも楽しい。

劉家酸白菜火鍋(リョウジャースアンバイツァイホォグォ)
高雄市介壽路9號 TEL:07-5823050
11:00〜22:30 無休

鴨寶鍋(ヤーバオグォ) 台北

豚肉や鶏肉と並んで台湾では人気が高く、しかも身近な食材、鴨。他の肉類と同様、鴨肉も頭の先から足の先まで食べられる。

鴨の血でさえ余すことはない。鴨や豚などの血はそのまま置いておくと固まる性質があるため、固まる前に塩などで味付けをすると絹ごし豆腐のようにプルプルになる。そんな食感を楽しめるのが鴨寶鍋と呼ばれる鴨尽くし鍋だ。

店によって具材は異なるが、通常のハクサイ、キャベツ、エノキダケなどに加えて、鴨肉と鴨血豆腐がたっぷり入る。鴨は適度な脂が含まれているので、寒い冬に食べると栄養が摂れるとして、台湾人の間で人気だ。

鴨血豆腐は辛い味付けともよく合うので、鴨寶鍋だけでなく、麻辣火鍋(四川風激辛鍋)の具材としても一般的。

チェーン展開する鍋専門店「三媽臭臭鍋」では、お一人様用の鴨寶鍋もあり、100元前後で食べられる。

三媽臭臭鍋(サンマーチョウチョウグォ)
台北市農安街12號之5 TEL:02-25950592
11:00〜23:00 無休

沙茶火鍋(サーチャーホォグォ) 新竹

台湾には「沙茶醤」と呼ばれる独特の調味料がある。茶色くてどろっとしているためカレーとも似ているが、実際にはエビなど海産物のダシやニンニク、各種スパイスから作られていて、漢方系の香りがある。

台湾では炒め物やあんかけ料理にも使われるこの沙茶醤は、鍋の季節に大活躍する。日本の家庭の冷蔵庫に「ポン酢」や「ごまダレ」が常備されているように、台湾の家庭の冷蔵庫には「沙茶醤」が常備されているのだ。

沙茶火鍋は鍋の具やスープを沙茶醤で味付けするのではなく、つけダレに沙茶を使うのが特徴。「佐料コーナー」に用意されている生の卵黄、ごま油、刻みネギやニンニクを小さなお椀や小皿に入れ、沙茶醤をたっぷり加える。これらをよく練り合わせたものが沙茶火鍋のつけダレとなるのだ。

新竹の「西市汕頭館」は深い旨味のある自家製沙茶醤と冷凍していない牛肉で行列ができる店。生肉はさっと湯通しするだけで食べられる。

西市汕頭館(シースーサントウグァン)新竹
新竹市西安街70號 TEL:03-5244430
11:00〜14:00 17:00〜23:00 無休

迷你火鍋(ミーニーホォグォ) 台北

外食率が高く、1日3食外で食べることも珍しくない台湾では、一人メシの比率も必然的に高くなる。このため、バラエティに富んだ一人メシのオプションが用意されている。

そのひとつがお一人様鍋「迷你火鍋」(ミニホォグオ)だ。カウンターにずらりと横並びになった鍋セットを前に一人客が黙々と鍋を食べる姿は、鍋を「囲む」のが好きな日本人にはちょっと不思議な光景だが、台湾では友達と一緒に一人鍋の店に行き、それぞれ好きな鍋を食べるというスタイルも珍しくない。

食べきりサイズの鍋には野菜、豆腐、練り物などに加え、お好みで豚、牛、ラムから肉の種類を選ぶことができる。

台湾の鍋にはトマトが入っていることも多い。酸味と甘味が加わり、スープがまろやかになる。

旺角石頭火鍋(ワンジャオスートウホォグォ ) 台北
台北市中華路一段74號 TEL:02-23880285
11:30〜24:00 無休