国を超えてお芝居を続けていきたい

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 映画『渇き。』(2014)のヒロインに抜てきされ、その二面性をにじませる演技で日本映画界に衝撃を与えた女優・小松菜奈(20)。その後も、幅広い役柄に挑戦し、着実にキャリアを積んできた彼女は、マーティン・スコセッシ監督の渾身作『沈黙-サイレンス-』でハリウッドデビューを果たした。順調そのものに見える女優活動に対して「人と環境に恵まれている」と語る小松だが、スコセッシ監督の撮影現場を経験し、「国を超えてお芝居を続けていきたいと思った」とさらなる目標を掲げた。

 小松が演じたモニカは、隠れキリシタンとして、弾圧を受ける島の住民。厳しい環境下において、懸命に生きる女性を熱演したが、オーディションを受ける際は、まったく自信がなかったという。「小さいころから英語が苦手で避けてきたので、ハリウッドのオーディションなんて……という思いが強かったんです」。

 しかし「嫌なことから逃げることに慣れてはいけない」という思いから、チャレンジを決意する。そこには「ハリウッドのオーディションとはどんなものかを経験するだけでも意味がある」という向上心もあった。そこからは苦手な英語を克服するために、できる限りの努力をする。同時に「いろいろな感情を出してください」というオーダーに対して、台本を読み込み、感じるものと逆の気持ちを表現するなど、小松なりに試行錯誤したという。

 そんな努力の甲斐もありハリウッドデビューが決まった。撮影は台湾で、約1か月半かけて行われた。「スコセッシ監督という世界的に有名な方の現場を、10代で経験できたことは、自分の中ではとても大きかった」としみじみと語った小松。最も刺激を受けたのが“シビアな勝負の世界”ということだった。

 「どんな立場の役者さんでも、お芝居を見て、寄りで撮ってもらえるか、引きで撮るかが決まるんです。良い演技をしないと、寄りで撮ってもらえない。日本の現場だと、例えば自分が主役だったら、アップでしっかり撮ってもらえるのは当たり前だと思いがちですが、この映画の現場では“いい芝居”をすることが絶対条件なんです。どんな短いシーンでも一つ一つ感情をしっかり入れて勝負しないとダメなんだと強く感じました」。

 こういった現場での経験を10代でできたことは、小松にとって視野が広がるきっかけになったという。「今回の現場では、通訳さんが入り、スコセッシ監督とも直接コミュニケーションを取ることができませんでした。それはすごく悔しかったし、もっと英語を勉強しなくてはと強く思いました。こうした経験を通じて、国を超えてお芝居を続けていきたいと思ったので、語学も含め、もっと成長したいですし、努力し続けていきたいです」と強い視線で語る。

 本格的な女優活動から約2年でハリウッドデビュー。順調すぎる女優活動を送っているように思われるが、「本当に人と環境に恵まれているんです」とつぶやく。「わたしは女優業をやるつもりはなかったのですが、『渇き。』という映画をやってみないか?」と勧めてくれる人がいてチャレンジしたんです。そして、『沈黙-サイレンス-』のオーディションの話を振っていただいたのは『渇き。』のスタッフさんだったんです」と運命的なつながりを明かす。

 「わたしはやる前に“できない”って思ってしまう性格だったのですが、やってみると楽しかったり、ハマったりすることが結構多いんです」と自己分析する。「なるつもりはなかった」という女優業が、いまは小松の進む道を輝かしく照らしている。だからこそ、食わず嫌いはもったいない。これからも「好奇心を忘れずチャレンジする」という小松の進化する姿が見られそうだ。(取材・文・写真:磯部正和)

映画『沈黙-サイレンス-』は公開中