「特許をたくさんもっていれば儲かる」はウソ

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世界有数のビッグカンパニー・パナソニックも「特許出願ノルマ」の落とし穴にはまってしまいました。古い日本の常識だけでは、知財を守れない時代になっているのです。

知財を活かす目的は利益率

特許取得は企業の健康と活力に役立っていなければいけません。世界中のライバルと競争する力、そこに一役買っていなければ、その意味がないといえます。利益率なるものは、企業経営における様々な要因が複雑に絡み合った結果であって、特許取得数だけで単純に言い表せるものではありません。
が、これだけは言えるのではないでしょうか。
「特許をたくさんもっていれば儲かる」という考えは、疑ってかからなければならない、と。

なぜ日本企業は儲かっていない?

「なぜ、日本は海外よりも特許をたくさんもっているにもかかわらず、儲かっていないのだ」という疑問は、それに対する答えだけでもう1冊、本が書けてしまうかもしれませんので、ここでは省くことにしましょう。
ただ、ひとこと付け加えるなら、「特許は中身が丸見えの透明な防護服」という事実が引き起こしたといっても過言ではないのです。

パナソニックも気がついた特許のロス

「特許をたくさんもっているだけでは競合相手と戦えないことがよくわかった」
「『この職場で50件』などと決めて特許を取っても、使えるのは1、2件ということもあった」
「特許数が多いのは技術者に対する発明奨励のため、積極的に出願させてきたことが一因だ。その結果、取得数がノルマ化し、実際に活用できる特許は限られていた。特許の取得や維持のコストもかさむ」
これは、パナソニックの豊田秀夫・知的財産センター所長(2015年当時)の話です。

担当者まかせにするリスク

大赤字を出した2013年、パナソニックは、「日本国内で最も特許出願をした企業」に輝いています。なんと、不毛な努力であったことでしょう。
日本の経済界に評価されるためのノルマ出願を、何年も何年も続けてきたわけです。
そうなってしまっている特許が多いという背景には「特許は目に見えないし場所も取らない」、おまけに「担当者任せでよくわからない」ということがあるのではないでしょうか?

ライバルが群がるおいしいアイデア

パナソニックだけではなく、他の企業、特に大量出願する大企業はこれと同じようなことをしてきたといえます。今もまだ続けている企業も多いことでしょう。
そんな理由で出された特許出願のなかには、日本の企業では使えないアイデアでも、海の向こうの大国や途上国にとってはおいしいアイデアがたくさんあったのでしょうね。
そのおいしいアイデアが外国企業の栄養となり、巡り巡って日本企業の首を絞めているのが現状というわけです。

知財コミュニケーション力という戦略

自分の大切なアイデアを守るつもりで行った特許出願が、そのアイデアを「どうぞ盗んでください」と全世界にアピールするものであることがおわかりいただけるでしょうか?
無駄な特許出願をしないこと。そのためには担当者だけでなく経営者が知財コミュニケーション力をつけておくことが最善の方法なのです。
 

【まとめ】

・ビジネスの目的は利益率を上げること。
・大企業パナソニックでさえノルマ化された特許出願が敗因に。
・ほとんど知られることのない「特許」の真実。ビジネスをする上で必須の知識ですね。

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著者:新井信昭(あらい・のぶあき)