きゃりーぱみゅぱみゅ「原宿いやほい」の隠れた“日本っぽさ”

写真拡大

 きゃりーぱみゅぱみゅを聴いていると、なぜかさわやかな気分になります。もちろんビジュアル面での演出は無視できません。特に「最&高」のMVでのエグいユーモアは、なかなかのもの。

⇒【YouTube】はコチラ きゃりーぱみゅぱみゅ - 最&高 [Full ver.] , kyary pamyu pamyu - Sai & Co [Full ver.] https://youtu.be/BRWK5I49jOs

 なのに楽曲そのものはすんなり懐に入ってくるから面白い。気が付くと、「つけまつける」だとか「にんじゃりばんばん」だとか口ずさんでいる。一体どうしてなのでしょう?

◆新曲「原宿いやほい」、日本人にしっくりくる言葉の響き

 そこで1月18日リリースの「原宿いやほい」を聴いてみると、サウンドは時代なりに新しくても、土台には良い意味で古風な手法が息づいていることに気付きます。それは、言葉の中から音楽を引き出すこと。

⇒【YouTube】はコチラ きゃりーぱみゅぱみゅ - 原宿いやほい , Kyary Pamyu Pamyu - HARAJUKU IYAHOI https://youtu.be/mAGyQ5Rmz7o

 今回も“いやほい”自体に何も意味はありません。なのですが、響きの点から“いやほい”でなければどうにも収まりがつかない。生理的に納得のいく音の連なりとして、その4文字が配置されている。

 そしてそう感じる根底には、母国語に忠実な人からしか生まれ得ない発声がある。だから字面は突飛でも、曲に組み込まれたときに無理がないのですね。

◆シカゴでなくカンザス、「やっほー」でなく「いやほい」

 これはソングライターにとってとても重要な発想なのです。「Stand By Me」の作者で知られるジェリー・リーバーとマイク・ストーラーの曲「Kansas City」に、こんなエピソードがあります。

 モチーフがジャズやブルースなので、アメリカ中西部の都市をタイトルにしようと考えた彼らは“Chicago”と“Kansas”を思いついたのですが、シカゴではどうしてもハマらない。メロディに乗せると、音節が縮こまって聞こえてしまう。だから、カンザスにしたというのです。“Kan-sas Ci-ty”ならば、豊かに鳴るのだと。

「原宿いやほい」も同じで、“やっほー”でもよさそうなところなのですが、声に出して歌ったときにしっくりくるフィーリングが第一に考えられている。

 映画『パイレーツ・オブ・カリビアン』に出てくる“Yo Ho Ho and a Bottle of Rum”みたいなものでしょうか。伝えたいメッセージや描きたい情景を後回しにしてでも、身体と心にフィットするフレーズを探すのが歌づくりでは大事なのだと思います。

◆吉幾三の「ヤーレン ソーランヨ」

 そんなわけで思い出したのが、『新日本風土記』(NHK BSプレミアム)が湘南を取り上げた回。ベテランのサーフボード職人が、難しい作業工程のときには吉幾三を流すと語るシーンでした。心を落ち着かせて手を動かすには、吉幾三でなければダメなのだそうです。

 そういえば、「酔歌」では“ぽつり ぽつり”とか“ヤーレン ソーランヨ”とか、日本語にしかない擬音のメロディが曲を特徴づけています。どちらにも言葉の持つ本来の息遣いが残っている。それこそが「しっくりくる」ということなのでしょう。

 もちろん“いやほい”は少しトリッキーですが、きゃりー作品で中田ヤスタカがしていることと、そう変わらないのではないでしょうか?

 だから「原宿いやほい」のイントロにAviciiではなく「俺ら東京さ行ぐだ」がシンクロしてしまう筆者の耳もやっぱりメイド・イン・ジャパンなんだなぁ……。でも、こんな風にしてナショナリティを呼び起こすきゃりーの音楽が海外で人気なのは、ちょっとイイ話だと思いました。

<TEXT/音楽批評・石黒隆之>