南極大陸で4番目に大きな棚氷であるラーセンC棚氷に入ったヒビが巨大化しており、このヒビによってラーセンCが数年内には崩壊する可能性が大きいと以前から報道されていました。しかし、2017年1月6日に発表された最新の研究で、数カ月内にも分離が起こる可能性があることが示唆されました。

Giant Antarctic iceberg set to break away, say Swansea researchers

http://www.swansea.ac.uk/media-centre/latest-research/giantantarcticicebergsettobreakawaysayswansearesearchers.php



Antarctica's Larsen C ice shelf may slide into the ocean - Business Insider

http://www.businessinsider.com/antarctica-giant-iceberg-breaking-off-2017-1

ラーセンC棚氷の先端にあるアメリカ・デラウェア州ほどの大きさの氷の塊が、南極大陸から離れようとしていることが確認されています。

雪が積もっていくと、古い氷河の氷は海に押し出されていくため、棚氷から氷の塊が分離することは、通常でも起こりうることです。しかし、今回棚氷から離れようとしているのは厚さ335メートル以上、面積おおよそ5180平方キロメートルもある巨大な塊。しかも、分離の進行が非常に速く、スピードは温暖化によって加速していると見られています。2016年8月には「数年内には崩壊する可能性が大きいこと」と言われていましたが、最新の調査の結果、早いと数カ月後には崩壊すると見られています。

衛星から観測によってラーセンC棚氷ひヒビが入っているとわかったのは2010年ごろのことで、2015年には長さが29キロメートルにまで伸び、2016年3月の観測ではさらに22キロメートルも長くなったと伝えられていました。

以下がヒビがどのように成長してきたのかを表す図。



今回の調査を発表したイギリス・スウォンジ大学の氷河学者であるAdrian Luckman氏は「今後数カ月の間に棚氷の分離が起こらなかったら驚きです。分離の日はかなり近く、避けられません」と語っています。

一方で、NASAは、2016年11月に、ラーセンC棚氷のヒビは長さ113キロメートルであり、幅は91メートルほど、ヒビの深さは540メートルと報告しています。調査グループによって結果が異なるのは、これまで極地における氷床と海氷の厚さを計測し、地球温暖化の影響を見積もる基礎データを収集していたNASAの地球観測衛星「ICESat」が2009年に寿命を迎えており、後継となるICESat-2が2018年まで打ち上げられないため。NASAは2017年現在、航空機を使って地球上の氷の動きを観測するOperation IceBridgeというプログラムによってラーセンC棚氷のヒビを観測しており、ほかの研究チームも実際に棚氷の上を飛んでヒビを観測しているので、チームによって予測が異なるわけです。なお、第45代アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏はNASAの研究費を削減する考えであると発言しています。

ゴダード宇宙飛行センターの地球物理学者であるJoe MacGregor氏は「こんなにも巨大なヒビはなかなか生まれないので、我々が研究できる機会も多くありません」と前置きした上で、ラーセン棚氷の分離は「1カ月、あるいは1年」以内に起こると予測。「これらのヒビを調査すればするほど、ヒビの成長や、棚氷の分離が氷床や海洋に最大でどのくらいの影響をもたらすのかを、正確に予測できるようになっています」とのことなので、2016年には「数年内」と考えられていましたが、当時の予想よりも速くに分離が起こりそうです。



この分離は歴史上3番目に大きなものになるとのこと。「氷の塊がウェッデル海や南極海に流れ出れば、やがて海洋循環に巻き込まれ溶けていきます。氷の塊の大きさを考えると、このプロセスには少なくとも数カ月はかかるでしょう」とMacGregor氏。また、コンピューターモデリングを使った研究では、この分離が約5万平方キロメートルにも及ぶラーセンC棚氷全体を不安定にする可能性があると示されています。ただしMacGregor氏はこの予測に対し否定的です。

なお、現在分離しかけている氷の塊が最終的に海洋に溶けたとしてもそこまで海面レベルに影響はありませんが、ラーセンC棚氷全体が崩壊した場合、海面レベルが4インチ(約10センチ)ほど上昇するものと見られています。