米国のトランプ大統領が就任前に示唆した「一つの中国」政策の見直し。米中と並ぶ当事者である台湾は公式見解を出さず、米中両国の動向を慎重に見守っている。

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2017年1月21日、米国のトランプ大統領が正式就任前に、しばしば示唆した「一つの中国」政策の見直し。これに対し、中国は「『一つの中国』は中米関係の政治的基礎であり、交渉できる問題ではない」と反発している。もう一方の当事者である台湾は公式見解は出さず、米中両国の動向を慎重に見守っている。

「一つの中国」は、台湾の蔡英文政権に対し、中国が“踏み絵”のように受け入れを求める「92年合意」と表裏一体。中国と台湾の交流窓口機関が1992年に香港で合意した交流の原則とされ、中国は大陸と台湾がともに「一つの中国」に属することを台湾が認めたと主張する。

国民党の馬英九・前政権は「合意」はあるが、「一つの中国」の意味はそれぞれ解釈する内容として、双方の認識にはずれがあった。馬政権は台中交流の基礎と位置付けて交流を深めてきたが、蔡総統の出身母体の民進党は合意そのものを認めていない

蔡氏は5月20日の就任演説で中国に対話の継続を呼び掛けたものの、「92年に台中が会談した歴史的事実を尊重する」と述べるにとどめ、中国側が主張する「92年合意」「一つの中国」には言及しなかった。「92年合意」を認めない姿勢を改めて示した形だ。

こうした中で飛び出したのがトランプ大統領による一連の見直し発言。正式就任直前の米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(電子版)とのインタビューでも、中国が為替や通商面でトランプ政権の求めに応じない場合は、1979年の米中国交回復以来、米国の歴代政権が維持する「一つの中国」政策には縛られない考えを重ねて表明し、中国を揺さぶった。

トランプ氏は昨年12月には蔡総統と電話で会談。79年の米台断交後、米大統領や次期大統領との接触が公になったのは初めてで、その後、「台湾が米国から巨額の武器を買ってくれているのに、なぜ台湾総統と電話してはいけないのか」とツイートするなど、中国に譲歩を迫るため、「台湾カード」を使う用意があることもちらつかせている。

これに対し、中国は「『一つの中国』をめぐる闘争は、中国による台湾統一の実質的な進展を促す」(中国共産党中央委員会機関誌・人民日報系の環球時報)と反発。蔡政権は本土側を無用に刺激するのは得策ではないと判断しているとみられ、トランプ氏の見直し発言にはコメントを一切避けている。

その一方で、台湾メディアによると、蔡総統は13日、訪問先の中米エルサルバドルで、トランプ氏との電話会談以降、台湾が米国と中国の「交渉カード」になる恐れがあるとの懸念が出ていることについて、「われわれは国力からいえば、小国ではないということを忘れてはならない」と強調。新しい国際情勢への対応に自信をのぞかせた。(編集/日向)