今、大変注目を集めている若手俳優がいる。
佐藤流司。1月17日に22歳になったばかりだ。

ミュージカル『刀剣乱舞』の加州清光役、『NARUTO』のうちはサスケ役などを演じ、“2.5次元系舞台”の若き旗手として注目を集める佐藤。ミュージカル『刀剣乱舞』はつい先日、上海公演を終えたばかりだ。

現在発売中の『クイックジャパン』では、30ページに及ぶ佐藤流司特集が組まれている。カラーグラビア、共演者たちによる証言や、須賀健太との対談、自ら演じた役柄を振り返るセルフライナーノーツなどで構成されている。

写真集『月刊佐藤流司×小林裕和』は、佐藤の誕生日である1月17日に発売された。佐藤が花魁姿に挑戦しているカットは、老舗芸術雑誌『芸術新潮』1月号の特集「永遠の美少年」のグラビアを飾って大きな話題を呼んだ。

美少年ではあるが、涼しげなたたずまいの若手俳優が多い中、佐藤の持つ剥き出しの熱さやギラギラした部分は異彩を放っている。


筆者は一度、佐藤をインタビューしたことがある。
2.5次元系の舞台に立つときは、「自分0、キャラ100」を心がけていると語っていた。
自分の要素をどんどん消してしまい、完全にキャラクターとして舞台に立つというのだ。
原作を読み込み、マンガなら1コマ目と2コマ目の間の1.5コマ目の動きを想像する。
アニメがあればそれも見て、声色も仕草もすべて飲み込んでしまう。
語り口は静かだけど、ちょっと普通じゃない感じがした。それが佐藤の魅力だ。

素に近い佐藤流司が見られる映画『Please Please Please』


“2.5次元系舞台のエース”が等身大の3次元の世界に挑んだのが、現在公開中の映画『Please Please Please』(監督・堀内博志)である。
シネマート新宿では当初1月14日から1週間の上映予定だったが、好評につき上映期間の延長が決定した。全国の映画館でも公開されているので、詳細はウェブサイトで確認してほしい。

舞台は、あるさびれた地方都市。女を騙してばかりいる兄・シンジ(佐藤流司)と、架空請求詐欺グループを率いる弟・ナオ(佐藤永典)の兄弟に、詐欺仲間のアオイ(赤澤燈)が絡んで物語が展開する。

佐藤永典と赤澤燈も舞台を中心に活躍する人気の若手俳優だ。他に黒羽麻璃央、小笠原健、上田悠介らも出演する一方、マンボウやしろ、「勝手にしやがれ」のドラマー・武藤昭平ら異色のキャストが脇を固めている。

2.5次元系舞台のきらびやかな佐藤流司を想像してこの映画を見ると、かなり意表を突かれると思う。登場人物の誰もがくすぶっていて、刺々しく、イラついている。光がいっぱいの画面はとても美しいのに、なんだか陰湿でザラついた雰囲気が漂っている。
活気を失った地方都市の疲弊ぶりと閉塞感がそのまま主役の若者たちに乗り移ってしまったようだ。


シンジの役は佐藤流司本人をイメージして書かれたものである。
2.5次元系舞台では「自分0、キャラ100」にしている佐藤が、ここではずっと自分寄りで芝居をしている。「ありのまま演じた」とインタビューでも証言していた。
テンションは低めだけど、いつもギラギラして、何か刺激を求めるシンジを見ながら、普段の佐藤流司の姿を想像してみるのも良いだろう。

堀内監督はザ・スミスの「Please, Please, Please,Let Me Get What I」という曲からこの映画の着想を得たという。「長い間、夢なんかなかった 見ろよ、俺が送ってきた生活は 良い男を悪い男に変えてしまうのさ」という歌詞だ。映画の中の若者たちをそのまま言い表しているようでもある。

「この映画を観る人に何を与えたいですか?」という質問に対して、佐藤流司は「……虚無感ですね」と答えている。「この映画を観て、ちょっとイヤな気持ちになって帰って欲しい」とも。こういうことを言っちゃうところが、佐藤流司の面白さだと思う。

ファンは必見、そうでない人もちょっと観てみてほしい。テレビや2.5次元系の舞台では見られない、もう一人の、そしてちょっと素に近い佐藤流司がそこにいる。


映画『Please Please Please』オフィシャルサイト

(大山くまお)