「健忘症」はいま、中高年以降のみならず、20〜30代の若年層にも広がっているとされ、“若年性健忘症”と呼ばれる。その主な原因は、パソコンやスマートフォンの普及により、頭を使わなくなったためとされているが、ある医療関係者は、「身体の乾燥とともに、脳の乾燥も原因している」と言うのだ。

 人間は、年齢を重ねるごとに体内の水分量が減っていき、乾燥が進んで老化現象が始まる。肌が乾燥していることは、内臓も脳も、乾燥している可能性が大きいという。イシハラクリニック院長の石原結寛氏は、ベストセラーになった著書『老化は「体の乾燥」が原因だった』(三笠書房)の中でこう述べている。
 《人は年を取れば骨も細胞も乾燥して縮み、その結果、身長も縮む。細胞の中から水分が失われ、萎んだ風体になるのは魚も人の体もさほど変わりはない。MRI(磁気共鳴画像診断装置)で脳を撮影すると、頭蓋骨が白く写り、その中に脳がすっぽり入っている。ところが、年を取ってくると脳と頭蓋骨の間に“隙間”ができる。脳もまた、乾燥して委縮するわけです。乾燥した脳はスカスカのスポンジ状態。画像診断では、この隙間が老化のサイン。認知症とは、このような脳萎縮型か、アルツハイマー型の2つしかない》
 《最近は脳を鍛えるブームが続いていて『速続で脳を鍛えよう』とか『声を出して本を読もう』など、その気になっている。確かに脳を鍛えることは大切だが、脳の乾燥、すなわち萎縮した状態で頭の体操をしても、はかばかしい効果はえられないでしょう》
 約140億個存在する脳神経細胞は、20歳代をピークに毎日10万個単位で減るという。これに自然現象で起きる老化と、乾燥による脳の萎縮が加わり、“物忘れ”の症状が悪化してしまう。

 そもそも「身体が乾燥する」とは、どんな状態を指すのだろうか。
 血液中の水分は、全身60兆個の細胞に運ばれ、さまざまな場面で活躍する。だが、その水分が、細胞内でのバランスを欠き外に弾き出されたり、やたら汗をかくことで身体のバランスが崩れていくことがある。脳のおよそ75%は水でできているため、適切な水分補給は欠かせない。脱水状態は集中力の低下の原因とともに、身体の乾燥、脳の乾燥にもつながり、最終的には認知力の低下となる。

 長年にわたり医療関係の取材に当たったフリーライターの草野隆彦氏が語る。
 「私たちの細胞や臓器類などは、水分と体熱で動いている。人の身体は一般的に、36.5℃以上の体温が保たれることで機能していますが、36℃以下と低く、臓器類の周囲も冷えているような状態になると細胞の力が弱まり、水分を吸い上げる力も低下してしまう。例えば、飲食により水分が胃腸に吸収されたとしても、細胞内には吸収されず、細胞と細胞の間に水分が溜まる“細胞外液”となってしまい、むくみなどの症状が出やすくなります」