習陣営は、現在の中央意思決定を行う最高機関である中央政治局常委の分権管理システムが、全面的な改革を推進するにあたり足かせとなっていることを認識し、常委制廃止のシグナルを発し続けている(Nicolas Asouri - Pool/Getty Images)

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 中国の最高指導者に就任して以来、さまざまな改革を推進している習近平国家主席だが、利権を奪われることを恐れる江沢民派から、猛烈な反発を受け続けている。習陣営は、現在の政治局常委の分権管理システムが、全面的な改革を推進するにあたり足かせとなっていることを認識し、常委制廃止のシグナルを発し続けている。

常委会をとりまく権力闘争

 中国共産党中央政治局は、中国の共産党体制における最高権力機関であり、その中央政治局の常務委員会(常委会)は、党の意思決定を行う最高機関としての機能をはたしてきた。中共体制の中でもトップクラスのブラックボックスと言える政治局常委会だが、これもまた政治の駆け引きから生まれたものだ。常委会の内外では常に様々な権力闘争が繰り広げられてきた。

 2002年11月に開催された16大(中国共産党第16次全国代表大会)で引退予定の江沢民だったが、在任中に行った数々の悪政について責任追及を受けるのではないかと案じ、共産党総書記の座を明け渡す前に、常委の数をそれまでの7人から9人に増やし、政法委の羅幹、宣伝部門の李長春をねじ込んだ。これにより、常委会での江派勢力を増強し、胡錦濤元国家主席と温家宝元総理の実権を骨抜きにすることに成功した。

 小組治国で旧弊を打破

 12年11月に開催された18大では、この9人常委制が元の7人制に戻された。習主席は就任後、江沢民を中心とする「第二中央」に対抗するために、「小組治国(臨時チームを活用して国政を運営する)」という戦略を用いた。

 習陣営は「中共中央全面深化改革領導小組(全面改革の最高指導機関)」「中共中央国家安全委員会」「中共中央財経領導小組(国の経済面において核心となる指導決定部門)」「インターネットの安全と情報化領導小組」といった重要な臨時チームを10以上も設立し、習主席自らがこれら10余の中央領導小組のリーダーを兼任した。反腐敗運動の名のもとに大量の江派高官を処分すると同時に、「小組」の形で権力の奪回も図ってきた。

 

 香港メディア「香港01」は、習主席が政治局体制の代わりに、「小組」を政治運営の最高権力機関に押し上げたことについて、これは明らかに従来の党の政策決定システムを骨抜きにすることを念頭に置いていると報じている。つまり、現行の中央政治局の会議決定や、政治局常委の分権管理システムが、全面的な改革を実施するための足かせとなっていることを示している。

 また、現行の政策決定システムで最も問題となっているのが「九龍治水、各管一攤(船頭多くして船山に上る)」と形容される極めて混乱した局面だとも報じられている。あるメディアは「九龍治水」の弊害について、「結果的に、地位と権力を手中に収めているものが国の政治を操る、いわゆる寡頭政治に陥り、派閥や利権集団が私利私欲を貪る状態になってしまう。そして、国の官僚全体に汚職が蔓延し、権力者たちがこぞって甘い汁に群がる局面に繋がる」と分析している。

 こうしたことから、習主席は「小組治国」システムで現行の政治体制を代替している。これら小組の目的は、単純に権力を一極集中させるだけではなく、改革への抵抗勢力に対抗するとともに、足かせとなっている現行の官僚機構から脱却するための有効な手段でもあるとも報じられている。

 海外メディアは、習主席は以前から常委制に不満を抱いていると報じている。習主席が国家主席、中央軍委主席といった国の最高権力を掌握しているにもかかわらず、なおもさまざまな小組組長を兼任しているのは、習主席の常委制に対する不満の表れであるとともに、現行の共産党体制全体に大きな不満を抱いていることの一例だと分析している。

 現在の常委7人のうち、張高麗、劉雲山、張徳江の3人は、言わずと知れた江沢民の腹心。習主席が江沢民の「貪腐治国」を正そうとすれば、彼らと習主席との間の対立関係も激化し、習政権の運営に大きな支障が出ることになる。

 時事評論家の石久天氏は、習主席が用いる「小組治国」方式は、常委制の否定に他ならないと論じている。

今秋19大で大変革が?

 今年の秋に開催される19大を見据えて、習政権は常委制廃止のシグナルを発し続けている。

 16年5月に香港メディアが、各方面からの妨害に習主席が耐えきることができれば、中共体制に未曽有の大変革がもたらされる可能性があると報じている。例えば、政治局常委制や、「七上八下(68歳を迎えた常委は退任するという不文律)」の年齢制限を廃止し、最高指導者の後継者指名制度も撤廃するといった改革を、順次推し進めることができるようになる。

(翻訳編集・島津彰浩)