1月21日から、映画『沈黙ーサイレンスー』が公開となります。監督は『タクシー・ドライバー』、『ディパーテッド』、『ギャング・オブ・ニューヨーク』などの大作を手がけた、巨匠マーティン・スコセッシ。

バイオレンス色の強いギャング映画を手がけることで有名なスコセッシ監督が、今回選んだのは日本へ渡った司祭と、隠れキリシタンについて描いた、遠藤周作原作の『沈黙』です。

28年かけてついに完成した渾身の1本

『沈黙-サイレンス-』 監督:マーティン・スコセッシ 出演:アンドリュー・ガーフィールド、リーアム・ニーソン、アダム・ドライバー、窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、塚本晋也、小松菜奈、加瀬亮、笈田ヨシ  (c) 2016 FM Films, LLC.  All Rights Reserved.

公開に先立ち、監督のマーティン・スコセッシ監督が来日しました。今回は会見インタビューを交えながら、本作の見どころを紹介します。

スコセッシ監督が原作と出会ったのは1988年、『ギャング・オブ・ニューヨーク』を撮影した後、運命的な出会いから、遠藤周作の『沈黙』を読んだのだそう。

マーティン・スコセッシ監督。

当時、監督は信仰について疑問を抱き、信仰する力について悩んでいたのだとか。そこで手にした「沈黙」を読み、自分が求めていたテーマの最重要部分はこの本にあると実感。そこから映画化へ向けて動き出したそうです。

途中、さまざまな問題が発生し、映画化が危ぶまれた時期もありましたが、28年をかけてついに完成。この映画は、スコセッシ監督が信じる力について追い求めて作り上げた渾身の1本なのです。

信じるって何だ?

ロドリゴ(アンドリュー・ガーフィールド)とモキチ(塚本晋也)。(c) 2016 FM Films, LLC.  All Rights Reserved.

『沈黙ーサイレンス』は、17世紀、江戸初期が舞台。幕府による激しいキリシタン弾圧下の長崎で、司祭のロドリゴとガルペは棄教した師・フェレイラを探すため長崎へと潜入。
日本にたどりついた彼らは想像を絶する光景に驚愕しつつも、弾圧を逃れた“隠れキリシタン”たちと出会う。しかし、幕府の取締りは厳しさを増し、ロドリゴは囚われの身に。自分が棄教すれば、キリシタンたちの命は助かる。奉行に迫られたロドリゴはどんな決断をするのか……。
というのがストーリー。

隠れキリシタンというと、踏み絵やマリア像を隠して密かにミサを行なっていたことを、何となく知っている、という人が多いはず。

今の日本では宗教は自由に信仰できますが、当時の日本ではキリスト教は悪とされ、信仰するものは激しい拷問を受けていました。

キチジロー(窪津洋介)は、十字架につばを吐け!と奉行に迫られます。(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

この映画でも、想像を絶する拷問シーンが多々出てきます。
信じる自由を剥奪されても、命をかけて信じ続けるのは、塚本晋也演じるモキチ。クリスチャンでありながらも、踏み絵を踏んでしまうキチジロー(窪塚洋介)。

スコセッシ監督は、
「日本の文化やキリシタンの勇気を損なうことのないように描きました。忠実に誠意を持って、共感と慈悲をもって描こうと力の限りを尽くしました。モキチの水磔(すいたく)のシーンは日本人キャストもアメリカ人キャストも皆が涙しました。本当に真剣に取り組んだ撮影で、これは私がやらねばならない1つの通過儀礼。巡礼のような感覚でした」
と語っていました。

命を奪われても信仰を貫く強さは美しくもあるが、権力に屈してしまう、弱いものが生きる世界はあるのだろうか。

どんな困難に遭っても神は黙ったままである。
ロドリゴはそんな厳しい現実を目の当たりにして信じることとは何なのかと自分の信仰心について苦悩をします。

囚われの身になるロドリゴ。通辞(通訳)を演じる浅野忠信。 (c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

映画を見ながら感じたのは「果たして自分はここまで何かを信じたことがあるのか?」ということ。
宗教について詳しくなくても、何かを真剣に信じることってあったかな? と考えずにはいられません。

スコセッシ監督は、信じることの強さ弱さについて、
「この映画で、弱さを否定するのではなく、受け入れることの大切さが伝わるように願っています。弱さを受け入れて抱擁し、強くなる人もいますが、皆が強くある必要はないのです。

今の時代、若い世代は勝者が歴史を勝ち取っていく世界しか見ていません。それはとても危険なことです。
物質や情報に恵まれた現代であっても、何かを信じたいという心については、深く考えていかねばならないと思います」
と、語ってくれました。

 日本人キャストの名演に注目!

本作は、日本人キャストの名演が光る映画でもあります。

過酷な水磔のシーンに挑んだ塚本晋也。弱く小ずるい男キチジロー役の窪塚洋介。そして、キリシタンを探し出し、拷問にかける井上筑後守を演じたイッセー尾形。ロドリゴの通訳として登場する浅野忠信に関しては、高い英語力に脱帽です。

常に蠅にたかられる井上筑後守(イッセー尾形)。アメとムチを使いこなす演技が見事! (c) 2016 FM Films, LLC.  All Rights Reserved.

なかでもモキチを演じた塚本晋也は、『シン・ゴジラ』の名演が記憶に新しいのですが、彼は『鉄男』や『野火』などを手がける映画監督。

スコセッシ監督は塚本作品のファンで、オーディションに来たときは仰天し、
「あなたのような巨匠がこんなところで何をしているんです!」
と思わず言ってしまったそうです。

「塚本さんの英語は素晴らしく、彼の演技はアメリカ人観客も必ず強く惹きつけるでしょう。驚くべき演技です」と太鼓判。

また、「キチジロー役は特別で、窪塚さんは非常に力強く演じているだけでなく、心から正直に演じており、役を心底理解している感じがしました」

堂々たる演技の浅野忠信も必見です。(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

そして、「浅野さんもキチジロー役でオーディションを受けていたのですが、彼の過去の作品を見て、彼は通辞役にしたらどうかと提案しました。もうパーフェクトでした!」
と、窪塚&浅野の演技に惹きつけられたようです。

フェレイラ(リーアム・ニーソン)はなぜ棄教したのか。(c) 2016 FM Films, LLC. All Rights Reserved.

ほかにもフェレイラを演じた、リーアム・ニーソン、ロドリゴ役のアンドリュー・ガーフィールド、ロドリゴと日本に渡ったガルペ役のアダム・ドライバーなど、実力派俳優の演技も、心にずしりと響きます。

スコセッシ監督は
「この作品は長いプロセスを経て作り上げました。いうならば、壮大な学びの旅でもありました。この作品は、私のなかでまだ終わっていません。今も心のなかで共に生きています」
と、『沈黙ーサイレンスー』は彼の人生において、非常に大きな影響を持つ作品であることを教えてくれました。

みなさんも、この映画をきっかけに「信じること」の大切さを考えてみませんか?