秋野は新体制発表会で、「自分が成長するために、カテゴリーを落としてでも来たいと思った」と移籍決断の理由を語った。 写真:茂木あきら(サッカーダイジェスト写真部)

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 秋野央樹はプロ5年目の今季、9歳の時から13年間過ごしてきた柏レイソルを離れ、湘南への移籍を決断した。慣れ親しんだクラブを離れてまで――、J1からJ2にカテゴリーを落としてまで――。見ようによっては、「何をしているんだと思われるかもしれない」(秋野)。実際、レイソルに残る選択肢はあったし、レイソルでずっとやりたい想いもあった。だが、「サッカー選手として成長していくには何が必要かを考えた時に、一度外に出て、違う景色を見たほうがいい」という直感を信じ、決意を固めたという。
 
「正直、勇気のいる決断でした。でも、J2のレベルが低いとは思わないし、者さん(者貴裁監督)と話をした時に、『この人のサッカーをやってみたい』と感じました。サッカー選手として成功するために、湘南でやることが自分にとってとてつもない力になると」
 
 交渉にあたった坂本紘司スポーツダイレクター(SD)は、秋野獲得の経緯についてこう説明する。
 
「昨季のJ1でのデータを見ると、『これから攻撃を開始するぞ』という1本目のパスが通らない場面が多く(チーム全体のパス成功率はリーグワースト3位の73.9パーセント)、真ん中のエリア(ミドルサード)でのボールロストが多かった。課題の部分をピンポイントで補ってくれる選手と考えた時に、まずは秋野くんかなと思ったので、ウチから声をかけさせてもらいました」
 
 秋野によれば、会談の際に「湘南に来ても続けて欲しいプレー」と「湘南に来たらもっと良くなるプレー」について映像を交えながらレクチャーされたという。前者が秋野の特長である視野の広さを駆使した長短を織り交ぜたパスとするなら、後者は球際であり、守備だろう。坂本SDは言う。
 
「パスの配給に関して、彼がウチで一番上手いのは間違いない。でも、彼がレイソルでやってきたことを出してもらいたいと言うよりは、球際であったり、運動量といった苦手だった部分を伸ばしてもらいたい。彼の成長が我々にとってプラスアルファになる」
 1月16日の始動日から5日間が経過したが、練習の厳しさは想像以上だという。同じく新戦力の野田隆之介(名古屋から加入)や表原玄太(愛媛から加入)も、1月20日に行なわれた新体制発表会の場で、練習量や試合顔負けの熱量に面を食らっていることを明かしている。それでも、秋野は「期待以上の練習量ですごく充実しています」と話す。
 
「レイソルにいても、球際を意識すればやることはできると思いますけど、湘南ではそれをしないと試合に出られない。者さんも言っていたように、本当にゼロからのスタート。今まで自分がやってきたことにプラスすると言うよりは、これまでのサッカー感は一度リセットして、者さんがやりたいことに今まで自分がやってきたことをプラスしていければいい。今回の移籍は、もしかしたら遠回りかもしれない。でも、湘南でやることが実は一番成功への近道だったりするんじゃないかなと思っています」
 
 J1昇格の立役者となるべく、希代のレフティは静かに燃えている。
 
取材・文:小田智史(サッカーダイジェスト編集部)