2017年1月18日、多数の報道陣が集まる中でマインドフルネスに関する1つの実験が行われました。その目的はずばり「マインドフルネス瞑想は本当に機能するのか?」

実験を行ったのは、集中力が測れるセンシングアイウェア「JINS MEME(ジンズ・ミーム)」を展開するJINS社と、BtoBマインドフルネスコース「cocokuri」を提供する、株式会社インナーコーリング社。JINS MEME Flagship Store(東京・原宿)で行われた、JINS社の企業向け生産性向上ソリューション「JINS MEME OFFICE BUSINESS SOLUTIONS」の記者発表会でのことです。

インナーコーリング社の説明によると、マインドフルネスとは「意図的に今の自分に注意を向け、判断や解釈をしない心の状態」。自分の呼吸や感覚に集中する瞑想がそうした心の状態に至る方法とのこと。マインドフルネスには以下のような効果があるとしています。

集中力UPによる生産性の向上不安感の軽減によるストレス耐性の強化思いやりが深まることによる、人間関係力の向上先入観のない見方による、創造力の向上

「瞑想で生産性アップ!」などと言われるとうさんくさく感じるかもしれませんが、米国ではGoogleやFacebookといった世界的な企業がマインドフルネスを実践しており、大学で研究も行われています。とはいえ、瞑想には心を静めて無心になったり、物思いに耽ったりすることというイメージがある日本では、スピリチュアルなイメージが先行してしまうのも仕方のないかもしれません。

そんな中行われた今回の実験は、センシングウェアを用いて心の状態を数値化・評価することで、「マインドフルネスを行うとどういう効果があるのか」をわかりやすく見せようという試みでした。

マインドフルネスは「集中する技術」である


実験で主に検証されたのは、「マインドフルネスは集中力を上げるのか?」ということでした。マインドフルネスが実際に集中力向上につながるなら、それを学ぶことで生産性を向上させられるでしょう。


呼吸やまばたきから集中度合いを測る

実験は、マインドフルネスの経験がある5人の男女がメガネ型のセンシングウェアである「JINS MEME」をかけて報道陣の目の前でマインドフルネスを実践するというもの。

JINS MEMEに搭載されたセンサーで以下の情報をトラッキングします。

姿勢の良さ:集中しているとき、良い姿勢を取る傾向がある。呼吸の深さ:集中しているとき、呼吸は深く、一定になる。まばたきの回数:集中しているとき、まばたきの回数が減少する傾向がある。

(JINS MEMEでこれらを計測できるロジックはこちらでご覧ください)。

この3点は集中しているときに特定の傾向を示すので、被験者の集中度合いを測る指標として使えるわけです。マインドフルネスをすると集中できるのかも明らかになります。

また、記者会見に登壇した妙心寺・春光院 副住職の川上全龍さんによると、この3点は瞑想を実践する際のポイントと対応しており、禅の世界では調身(姿勢を整える)、調息(呼吸を整える)、調心(心を整える)と言われているそうです。

以下に会場で語られたマインドフルネスの瞑想で意識すべきことを記しますので、ぜひ一度試してみてください。

調身耳と肩が一直線になるように胸を張る。背中を反らさず、腹筋、丹田に力を入れる。おへそを2cmくらい持ち上げる感じ。

調息ゆっくりとした呼吸でスタートし、徐々に息を吐く時間を長くする。理想は、息を吐く時間=息を吸う時間×2。口が乾きやすいので、できるだけ鼻で呼吸したほうが良い。

調心正面を向いて、90〜120cm離れたところに目を向け、半眼になる。


注意がそれてもすぐに集中状態に戻れる

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瞑想を行うには不向きな雑然とした環境でレジリエントな集中力を見せた、浄土宗光琳寺 副住職・井上広法さん(左)と安定して高い集中力を維持したインナーコーリング社・水野由貴さん(右)。

実験が始まると、スクリーン上に被験者たちの姿勢の良さ(調身)・呼吸の深さ(調息)・まばたきの回数(調心)と、それらを総合した集中度がリアルタイムに表示されます。被験者たちは耳栓をしていましたが、MCの声が聞こえているようで、自分についてのコメントが入ったりすると数値が変動したりします。会場には報道陣も多く入っており、瞑想をするのは難しそうな環境です。

そんな環境でも高い総合得点を叩き出した人が出ました。浄土宗光琳寺 副住職であり、cocokuriでマスターコーチを務める井上広法さんと、同コースを展開するインナーコーリング社 執行役員の水野由貴さん、この2名です。マインドフルネスのプロなので当然とも言えますが、とても姿勢が良く、呼吸も安定しており、視線も一定に固定されて動きません。

記者会見の会場ということで、集中が乱れることもありましたが、井上広法さんは注意がそれても持ち直す速度が速く、衆人観衆の中でも高い集中力を見せてくれました。自分に関するMC(自分に対するコメント、どうしても注意が向いてしまう声)が耳に入っても、すぐに瞑想に集中し直し、一瞬で高い集中度を取り戻すのです。

これは「マインドフルネスの訓練をすれば、集中できる時間が増えるのでは?」と思わせてくれる現象です。

もし井上さんのように「集中力を即座に自分自身に向け直し、マインドフルネスになるテクニック」を習得できれば、それは声をかけてくる同僚や頻繁に鳴る電話、プライベートな通知を繰り返すスマートフォンといった、気が散る要素満載のオフィスなどでも、すぐに集中した状態に戻れ、結果的に集中している時間が増えるのではないでしょうか。


マインドフルネスは「メンタルなフィットネス」になるかもしれない


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集中力を測ることの意義について語る、JINS MEME開発者・井上一鷹さん。


今まで「集中」は主観的な体験に過ぎませんでした。そのせいで、集中することが仕事(特にクリエイティブな仕事)をする上で重要なのは経験上明らかなのにも関わらず、日本では軽視されている印象があります。

「集中して済ませたい作業があるので、今日は行きつけのカフェで仕事をしますね!」

今の日本では、こうした意向が通る会社は多くないのが現実だと思います。もし「カフェで仕事をすると本当に集中できる&集中すると生産性が上がる」とわかれば、どんな経営者でも仕事をどこでするかは問わなくなるでしょう。

そのためには、集中すると生産性が上がり、カフェで仕事をすると確かに集中できていると証明する必要があります。ここに集中力をトラッキングする意味があります。

JINS MEMEの開発者である井上一鷹さんは次のように語っています。

2010年の労働人口は8000万人。2030年には6700万人にまで減少します。生産年齢人口が16.3%も減るということです。

その一方で、残業時間ゼロも声高に叫ばれていますが、現在の1カ月の平均労働時間を仮に207時間と見積もると(就業時間8時間×勤務日数20日+残業時間27時間)、残業時間をゼロにするなら、労働時間は23%も減少することになります。

2030年に残業時間がゼロになっているならば、1人あたりの生産性を35%も補完しなければ、GDPを守る事すらできない計算です。

実際は国際競争に勝つために日本人はもっと生産的にならなければならないでしょう。そのためには「経験的に高い生産性を発揮できると考えられている集中状態」はもっと検証してみる価値があるはずです。井上一鷹さんは以下のように続けます。

JINS MEMEを用いて「働き方改革の効果」を可視化したいのです。さまざまな尺度があるはずですが、集中力を1つの指標としてひとつひとつの施策がどれだけ生産性を上げているかを測定する。JINS MEMEが「生産性のPDCA」を回す一助になればと思っています。

井上さんのお話はマクロな視点から生産性向上のために集中力を測定する意味を語っていますが、ユーザー目線でも集中力の可視化には大きな意味があります。それは「数値化することでフィードバックが可能になり、自己改善を楽しめるようになる」ということ。

アクティビティトラッカーなどを用いて、睡眠やランニングなどを数値化している人にはわかりやすいかと思いますが、自分の実力が数字でわかると大きな励みになるものです。自然と数字を増やしたくなり、真剣に取り組めるようになります。

産業の高度化が進む中で、マインドフルネスは「メンタルなフィットネス」として広まっていくかもしれません。


cocokuri
JINS MEME|TURN IT ON - 見るから、知るへ。

(神山拓生)