結婚するかもわからない。子どもを持つかどうかなんて、もっとわからない。そんな人生未定!の30代女性のための「お金の基本」をお届けしているシリーズ3回目は「貯める」です。

「老後のお金が心配……」そう口にする30代女性は多いけれど、実際に何か対策を講じている人はほとんどいないのでは? 何もしないままだと、不安は膨らむばかり。「貯める」だけでも、不安はちょっと小さくなります。今年こそ、貯金体質をめざしてみては?

まずは月々の「貯金率」を決めよう

――「老後が不安……」と言いながら、結局いくら必要なのか知らないまま、ただ何となく貯金してる人がほとんどだと思います。ズバリ、いくら貯めたらいいんですか?

中村芳子さん(以下、中村):そうですね。総額いくらというよりも月々いくら貯めていくかという話をしましょう。「総額」はその人の年収や生活レベルによって大きく異なりますから、あまり意味がないのです。

第1回でも話しましたが、会社員なら「手取り15%」を目標にしたいですね。「15%」というのは、年収にかかわらず、シングル女性が25歳から65歳まで40年間働き続けて、40歳でマンションを買って、退職金や公的年金などをもらって、老後に困らないよう生活設計をした時の数字です。

――なるほど! それ以外のケースだと、どうなりますか?

中村:自宅を親から譲りうける予定でマンションを買わないなら、「15%」より少なくて大丈夫です。逆に「貯め始める年齢が30歳を超えている」、もしくは「退職金制度がない会社に勤めている」という場合は「17%」くらいに設定しておくと安全です。「これで絶対、大丈夫!」とは言えませんが、ここに挙げた貯金率のパーセンテージは一つの目安にはなると思いますよ。

「貯められない原因」を見きわめて

――人によっては今の収入が低すぎたり、生活費がかさみすぎていたりで「15%なんてムリ!」という場合もありそうです。そういう人はどうしたらいいですか?

中村:収入の15%貯められないのには2つの原因が考えられます。1つは収入が低すぎること。もう1つは、収入はそこそこあるけど、使いすぎていること。「15%なんてムリ!」と感じるなら、まずはどちらが原因かよく見きわめてください。

そもそも今の年収が240万円以下で一人暮らしなら、手取りの15%を貯蓄に回すのは無理です。親元暮らしだから貯金できるという人も実は危ない。低い年収で満足してしまうので、これからのキャリアアップも年収アップも望めなくなります。最低でも年収360万円はキープできるように、早めに転職活動を始めた方がいいですね。できれば40代で年収400万円以上を稼げるように今から作戦を考えておきましょう。

「結婚するから年収はそこそこで」はキケン

――30代でシングルだと、今のところ相手がいなくても、つい「そのうち結婚して仕事を辞めるかもしれないし」なんて誘惑が頭に浮かんでくることもありますよね。

中村:それも、わかります(笑)。でも、その考えを持っていると男性から(結婚相手として)敬遠されるのが現実ですよ。それに、もし結婚しなかったら? もし結婚したい男性の収入が低かったら? 結婚した相手がリストラされたら? 病気になったら? いずれにしても「自分で稼いで食える」状態になっていないと心もとないでしょう。

もう「結婚がリスクヘッジになる」という感覚は捨てましょうね。結婚してもしなくても、きちんと自分一人生きていける収入は確保しておくのが今の時代の「基本」です。

――「結婚はリスクヘッジにならない」、ずしんとくる言葉です。

中村:結婚するかしないか、ってかなり先にならないとわからないじゃないですか。40代半ばを過ぎてやっと「私、シングルで生きていくのかも」という道筋が見えてくる。その時に「一人で生きていける分を稼がなきゃ!」と焦るよりも、30代のうちから、「ひとりでも生きていける仕事と収入」を目指しておくのが正解です。その後で結婚することになっても、何も困らないし。

だから、結婚するかしないかは別として、早いうちから、それほど無理せずに「15%」を貯金できる年収に意識して上げていく必要があるんです。

――「シングルで生きよう」と決めてからでは遅いということですね。

中村:たとえば、今、派遣社員で年収300万円以下の人がいたとします。正社員になるためのステップとして、ここ数年は派遣社員として実績をつくると考えているならいいんです。そうではなくて「なんとなく」「仕方ない」と特に目標もなく、不安定で低収入な状態に甘んじているのはよくないですよね。このまま何もしないままだと、40代でかえって今より年収が下がってしまう可能性だってあります。

――それは困りますね! そこから抜け出すには、どうすれば?

中村:発想の転換が必要です。「もう、これ以上収入は上がらない」と諦めていたら、諦めた時点で扉は閉まってしまうと思うんです。「もう30歳を過ぎているから」「派遣だから」とか自分に言い訳をしないで、いくつになっても年収を上げて働き続けることを諦めないでください。

――「今の収入で15%貯金なんてムリ」と感じるなら、転職するなり何らかの行動を起こして!ってことですね。

年収が高くても貯まらないのはなぜ?

――2つ目の、収入がある人はどうですか?

中村:年収300万、400万円以上とたっぷりあるのに「15%はムリ」という人は、使い方を見直す必要があります。たとえば家賃などの固定費が高くなりすぎていないか。毎日のランチ代や飲み会にお金をかけすぎていないか。やたらと「自分へのご褒美」を買っていないか。目的があやふやな保険、美容、スキルアップにお金を投じていないかなど。チェックするポイントはいっぱいあります。

――ある程度の収入があると安心してしまい、支出には無頓着になりがちですよね。

中村:高収入の人は、「おつきあい消費」「見栄消費」「乗せられ消費」に気をつけましょう。自分が高収入だとお友達も高収入です。食事をする場所、買い物する場所、出かける場所が高級になりがち。見栄を張るために、好きでもない必要でもない高額品を買ってしまうこともあるでしょう。

高収入の30代、40代女性は、あらゆる業種がターゲットにして、モノやサービスを売り込んでいます。気をつけないと、不要なものを買わされてしまいます。おまけに買っても買っても満足できない、負のスパイラルに入ってしまうので要注意です。

――30代になると自由になるお金も増えますしね。

中村:今は高収入でも、定年まで同じ収入をキープできるとは限りません。上がることもあれば下がることもありえます。途中で収入が増えたらそれに合わせて貯金の額も増やし、逆に減ったら金額を少し下げても貯金はし続ける。そしたらずっと貯まり続けますよ。

「『毎月15%がムリ』と感じるなら、何か行動して!」という中村さんのアドバイスは、シンプルなようでいて衝撃的でした。ないところから捻り出すのではなくて、ムリせず貯められる収入をまずは確保する。自分の働き方そのものを見直せば、「老後が不安……」という焦りは和らぐのではないでしょうか?

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(間野 由利子)