「ショートパスタ」のおいしい食べ方

写真拡大

▼ショートパスタについて教えてくれた人
・岡田幸司さん/イタリア食材店ピアッティ」店主
・小野清彦さん/「ダノイ日本橋」シェフ
・五郎丸靖子さん/三越伊勢丹 グローサリー バイヤー
・堀込 玲さん/バリラ ジャパン

■どうしていろんな形があるの?

パスタの形状は180種類ぐらいと言う専門家がいる一方で、300種類、650種類、いやいや2000種類は超えるという声もあって諸説紛々。ショートパスタに限っても相当数あることは間違いない。

そんな種類の多さは、パスタが地域性豊かな郷土食であるがゆえ。それぞれの気候や風土に沿って多種多様のソースがつくられ、それに合うパスタが生み出されてきたのである。もちろん、その中には家庭で生まれたパスタも少なくない。かたつむりのような愛らしい形は子供を喜ばせるために考えられた、とも伝えられている。

その数は口金で絞り出すパスタマシーンの登場でさらに増加。イタリア人も把握できないほどのバリエーションが生まれたわけだ。

では、イタリアの家庭では、どのくらいの種類を使っているのだろう。バリラ ジャパンの堀込 玲さんによれば、一般的には4〜5種類程度。決して多くはないが、それでも食感やソースのからみ具合は異なり、変化が出せる。実はこれこそ、マンマたちがショートパスタを愛する理由。なにせ、パスタの消費量は世界トップで日本の約10倍。食卓の定番に少しでも変化をつけ、家族が飽きないよう工夫する。そんな母心がパスタの種類に表れているのだ。

■どの形を選ぶか迷ったら?

●こってりソース(ラグー、クリーム系)なら……厚くて筒形
●あっさりソース(バジル、オイル系)なら……薄くて平たい形

ポイントになるのはソースとの組み合わせだ。肉のラグーやチーズたっぷりの重めのソースで食べたいなら、リガトーニやルマコーニのような筒形タイプや厚みのあるタイプをチョイス。野菜をふんだんに加えたあっさりパスタにしたいなら、オレキエッテやファルファッレのような薄くて平たい形のものを選ぶと相性がいい。

ただし、これはあくまでも目安。ショートパスタの場合、堅苦しく考えなくていいと、「ダノイ」の小野清彦さんは言う。

「たとえば、リガトーニは濃厚なソースが向くとされていますが、僕はアーリオオーリオであっさり食べることも多い。そのほうが、ソースの味に邪魔されず、小麦の風味が満喫できますから」

形が可愛いものはサラダにしたり、少しずつ余ったショートパスタをまとめてスープに入れたりとおおらかに楽しもう。

■日本人にマカロニを伝えたド・ロ神父

日本におけるパスタの聖地は長崎県西出津町。明治32(1899)年、フランス人宣教師のマリク・マリー・ド・ロ神父によって、日本初となるマカロニを製造する施設が造られた。当時、周辺では神父が母国から持ち込んださまざまな小麦を栽培。それを原料につくったマカロニを外国人居留地で販売して、利益を貧しい村人たちの救済に充てていたという。同じ施設では素麺も製造され、日本人が口にしていたのはもっぱらそちら。マカロニは口に合わなかったとの説もある。ちなみに、この施設は「マカロニ工場」(旧出津救助院)として現存している。

■イタリア人の食べ方は?

ロングパスタ同様、ソースをつくって和えるのが基本。家庭ではサラダやスープに使うほか、残った肉料理に入れて和えたり、ゆでて余ったショートパスタにパン粉やチーズをかけて焼いたりとラフに食べることも多い。

そんな気取りのなさを象徴する一品がクッチーナ・ビアンカだと、「ピアッティ」の岡田幸司さんは言う。

「パスタを柔らかくゆで、オリーブオイルをかけるだけ。冷蔵庫に残っている野菜を一緒に煮ることもあります。僕はイタリアで体調を崩したときにつくってもらいましたが、くたくたにゆでたパスタがこんなにおいしいのかと衝撃を受けました。野菜を手軽においしく食べるのにも、ショートパスタはぴったりなんです」

■天才デザイナーが考案した幻のパスタ

ジョルジェット・ジウジアーロ氏といえば、マセラティ、フェラーリ、アルファ・ロメオなどの名車を世に送り出してきたカリスマデザイナー。その工業デザイン界の巨匠が手がけたショートパスタがある。1983年に発表されたのはマリッレ。流線形をイメージしたというこのパスタは、円筒を取り入れた「β」のような独特のフォルムが目を引く。その30年後には、グストという名のショートパスタを考案。こちらは無限大を示す記号「∞」がデザインされている。どちらもソースのからみを第一として機能美を追求している。デザイン大国ならではの、伝説のショートパスタだ。

■ゆで方にもコツがある

深型の鍋が必要なロングパスタと違って、ショートパスタは浅い片手鍋で手軽にゆでられるのが良さ。パスタ同士がくっつかないよう口の広い鍋を選ぶといいだろう。ゆで湯の塩加減はロングより控えめの0.8%が目安。ショートパスタは厚みがあって塩気を感じやすいからだ。パスタを入れたら鍋底につかないように混ぜること。

問題はゆで時間だ。ロングパスタなら少し芯が残るアルデンテがベストとされるが、ショートパスタは芯を残す必要はなし。むしろ柔らかめにゆでたほうが、小麦の風味がより鮮明になっておいしいというのが今回、話を伺った全員の一致した意見だ。パッケージのゆで時間を参考にしつつ、味見をしながら好みの加減にゆでよう。

(文・上島寿子 撮影・大志摩 徹 ショートパスタについて教えてくれた人:岡田幸司さん、小野清彦さん、五郎丸靖子さん、堀込 玲さん)