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●ねらいどおりの高齢者層に向けた戦略
東京・新宿3丁目に居をかまえるバル&ダイニングレストラン「GOHAN」に、多くの記者が集まった。各家庭に調理済みの料理を届ける「ワタミの宅食」に新ブランドが追加されるのに際し、マスコミ向け試食会が開催されたからだ。

ワタミがこうした機会を設けるのは初めてではない。昨年も居酒屋用の新メニューを試食する会をマスコミ向けに開催していたが、その際、担当者は「こうした試みは弊社では初めてです」と語っていた。そのときの感覚からか、一般的な記者会見よりも試食会のほうが効果的と判断したのかもしれない。それとも、試食会だけに“味をしめた”のか……。

○高齢者をターゲティングにした意図

さて、ダジャレはさておき、今回試食会で披露されたブランドに着目してみよう。ワタミの宅食では「まごころ御前」や「まごころ万菜」など、4ブランドが展開されていたが、新たに「いきいき珠彩(しゅさい)」が追加された。既存の4ブランドはすべて商品名に“まごころ”という語句が冠されていた。だが、新ブランドではワタミの宅食では初の“いきいき”という語句が使われている。そのあたりに新ブランド投入の意図があるのかもしれない。

結果からいうと、まさにそのとおりだった。

ワタミ 執行役員 宅食営業本部長 大根田淳氏は、「これまでのラインナップは、おいしさと栄養のバランスを重視していました。ターゲットも75〜89歳というご高齢な方です」と話す。料理の準備や食器洗いといった後片付けなど、面倒な作業を避けたいと感じている方が多くいるであろう高齢者層なら、宅食サービスを受け容れやすいというねらいがあったといえよう。

こうした高齢者層に向けたメニューとなると、栄養バランスに細心の注意が必要になり、カロリーも抑え気味に考えなくてはならない。「まごころ御前」などはごはんがお皿に盛りつけてあるにも関わらず、1食500kcalが基準になっている。こうした戦略が功を奏し、ワタミの宅食の顧客は、ほとんどが高齢者層で占められている。ある意味、ねらいどおりといえよう。

●新ブランドのネーミングに込められた意図
ところが、これがある問題を浮き彫りにした。60〜75歳という、まだまだ活動力が衰えていない、いわゆる“団塊の世代”から「ものたりない」という声が上がったのだ。つまり、もっとボリュームのあるメニューが求められた。こうした世代のなかからは、ワタミの宅食を離れた顧客もあったという。

そこでワタミが打った戦略が「いきいき珠彩」というワケだ。主菜がボリューミーで、満足感を得られる新ブランドとしてメニューを展開し、同社が“アクティブシニア”と呼ぶ60〜75歳の取り込みを図る。

“いきいき”という冠が使われている意味を理解した。先ほどのダジャレと異なり、“珠彩”と“主菜”がかけられている点も洒落たネーミングといえよう。

○塩分少なめでもシッカリした味付け

さて、ワタミの宅食に新ブランドが投入された背景はわかった。では肝心の味はどうだろうか。

試食タイムになると記者たちの前に続々と料理が載ったトレーが運ばれてくる。メニューは豚の生姜焼きだ。アクティブさを失っていないシニア層だけでなく、働き盛りのビジネスパーソンでもよろこびそうなメニューだ。

イタリアンバル・スペインバルのお店で“生姜焼き”というのは少し妙な気がしたが、早速、主菜である豚肉を口に運んでみると、しょうがの香りが口の中でシッカリと広がった。事前に食塩相当量4.0g以下と説明を受けたが、その少なさでこの味がでるのだろうかというのが正直な感想だった。また、豚肉を1枚口に運んでもまたその下から豚肉が現れ、主菜の量の多さがうかがえる。同席していたほかの記者からも「味がシッカリしている」「ボリューミーだ」といった感想が上がっていた。

ちなみに、主菜と副菜4品が添えられたこのメニューで450kcal基準。ごはん1膳を添えると700〜800kcalぐらいか。それでも外食に比べ、カロリーが抑えられるといえよう。

試食後、この生姜焼き以外のメニューが披露された。「イタリアンハンバーグ」「エビとブロッコリーの塩だれ和え」「チキン南蛮」「カレイの和風あん」「味噌カツ」などだ。和風から洋風とバリエーションが豊富だ。

だが、担当者は「これはメニューの一部でしかありません」という。さらに、「お客様の要望によりメニュー開発は常に進められています」と付け加えた。前出の大根田氏も「製造部門と営業部門が同じ社内にある“製販一体”だからこそ、お客様の要望に素早く応えられます」と胸を張る。

最後に大根田氏に「今後の戦略として、今回の施策よりも下の年齢層に行くのか」と質問したところ、「今までメインとしていた層よりも、さらに高齢な方々にアプローチしたいです」と話す。たとえば“食事困難者”に向けたメニューづくりなどは、長年、介護事業に携わってきたワタミ(今は事業譲渡されている)のノウハウが生かせるという。

試食を終えて、店を後にした際、本来ならば取材後は記事の構成などを考えるのだが、この日は「うん。1食浮いたな。次にこの手の機会があれば、また参加するか」と考えてしまった。冒頭のダジャレではないが、“味をしめた”のは筆者のほうだったようだ……。

(並木秀一)