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●流れは2年前から変わりつつあった
今年で50周年を迎えたCES(コンシューマー・エレクトロニクス・ショー)に初回から参加する数少ない日本企業、パナソニック。その展示が近年、急速にモビリティ色を深めている。今回は自前のコンセプトカーまで発表。その真意を会場で関係者に聞いた。

○3年でがらりと変わったパナソニックの展示内容

パナソニックといえば、テレビやパソコン、洗濯機、冷蔵庫など、ありとあらゆる分野に製品を送り出している日本の家電メーカーの雄。一方のCESは、日本では「家電ショー」と呼ばれることが多い。

となれば同社のブースは、家電のオンパレードとなっても不思議ではない。ところが今年、パナソニックの広大なブースは、約半分がモビリティ関連の展示で占められていた。

同社のプレスリリースをチェックしてみると、3年前、つまり2014年のCESの展示テーマはズバリ「4K」。つまり映像がメインだった。それが翌年になると、「家電」、「企業向けソリューション」、「車載・デバイス」といった3つの分野を掲げるようになり、初めて自動車関連製品が具体的に登場してくる。それでも、スペース的には全体の6分の1程度だった。

さらに2016年のCESでは、「スマートホーム」、「ビジネス/リテール」、「モビリティ」、「スタジアム」の4つのエリアで提案しており、車載製品から歩を進めてモビリティ、つまり移動そのものに関する製品の展示も始まった。

○テスラとの親密ぶりもアピール

このように、CESにおけるパナソニックのモビリティ関連展示は、この3年間で急速に増えてきたのである。その内容は、近くにブースを構えていた、もともとモビリティ分野のサプライヤーとして君臨してきた独ボッシュに匹敵するレベルにあった。

もちろんこれまでも、パナソニックは自動車業界と深い関わりを持ってきた。なかでも最近の動きとして有名なのは、地元米国を代表する電気自動車(EV)メーカーであるテスラ・モーターズのバッテリー生産だ。

今回のCESでも、もちろんこの分野はメインの1つとなっていて、ガルウイングドアが印象的なクロスオーバー「モデルX」の実車を展示するとともに、同車に使われているリチウムイオン電池のカットモデルを展示し、テスラとの親密な関係をアピールしていた。

●クライスラーのコンセプトカーにも関わる
○移動に関わる幅広い分野に進出

でも、パナソニックが電動車両用バッテリーを供給しているのは、クルマだけではない。台湾生まれの電動スクーター「ゴゴロ(Gogoro)」にも使われている。このゴゴロ、バッテリーをレンタルする形でのスクーターシェアリングとして開発され、ボッシュのスクーターシェアリングサービス「クープ(Coup)」の車両として起用されるなど、注目の1台なのである。

驚いたのは、テスラやゴゴロの隣にバス停が設置されていたこと。スマートバスシェルターと名付けられたこれは、巨大なディスプレイで運行状況を確認できるだけでなく、他の交通情報も紹介。バスが遅れているのでライドシェアで目的地に行きたいときは、ここから呼び出すこともできる。日本でもいち早く取り入れてほしい、便利なバス停だった。

さらにブースには、巨大なスマートシティのディスプレイも据えてあった。車両や道路にセンサーを設置することで、より安全で効率的な道路交通を目指すという内容は他社でも見られるが、パナソニックの場合、昨年からコロラド州デンバーなどで実際に実験を行っている点が異なる。消費者や企業のみならず、自治体にも入り込んでいるのだ。

○コネクテッドカーにもパナソニックの技術

コネクテッドカーの分野にもパナソニックは関わっている。フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)が今年のCESで公開したコンセプトカー「ポータル」もその1つだ。

ポータルはドアの開口部に仕込まれたカメラを使って乗員をチェック。認識するとその人が選んだ色で開口部が光り、迎えてくれる。インパネにもカメラがあり、その人に合った音楽や空調を設定してくれる。このうち音楽は4席別々のソースを楽しむことが可能。さらには移動中にスマートホームの遠隔操作もできるという。

コネクテッド技術は自動車だけでなく航空機にも及んでいる。つまりコネクテッドエアクラフトだ。乗客が所有するタブレットで映画や照明などの操作が可能で、テレビ番組をリアルタイムで見ることもできる。さらに運行面でも、最新の天候状況を航空機に伝えることで、より安全でかつ燃料消費の少ない飛行を目指せるという。

●家電の経験をコネクテッドカーに生かす
○ついに自前のコンセプトカーが登場!

そしてパナソニックは今年、自前のコンセプトカーもお披露目した。2025年の自動運転車のインテリアを予想したという「オートノマス・キャビン・コンセプト」だ。

このコンセプトカーでは、乗員がそれぞれ独自のタブレットで映画や音楽を楽しめる。それだけではなく、マジックリングと呼ばれるリングをタブレット上に置くと、そこがエアコンの温度やイルミネーションの色などを調節するダイヤルに変身。ドアトリムに張られた薄いウッドパネルの奥からも映像が浮き出てくる。

ロンドンにあるパナソニック・デザイン・センター・ヨーロッパでこの車両のコンセプト作りを担当したシニアデザイナー、山本悠平氏に会場で話を聞くことができた。「今後のクルマは自動運転とコネクテッドが一般的になり、車内でどう過ごすかが大切になっていくと考えたとき、家電の経験をいかせるのではないかと考え、それらを1台にまとめることにしました」。これが山本氏がオートノマス・キャビン・コンセプトに落としこんだ考え方だ。

確かに運転という仕事から解放されたとき、乗員が車内で何をして過ごすかは大事になってくる。こうしたテーマに対して、さまざまな製品で快適な暮らしを提供してきた家電メーカーのノウハウは、役立つような気がした。

○家電メーカーがクルマ作りの主役に?

それとともに、自動運転車やコネクテッドカーでは、これまでサプライヤーの立場にあった家電メーカーが主役の一角を占めるチャンスであることも想定して、コンセプトカーを展示したという見方もできる。

今回のCESではBMWとインテル、モービルアイの提携が発表されるなど、自動運転車やコネクテッドカーの普及を前に、再び業界が動きつつある。日本はこの荒波に乗り遅れるのではないかと危惧する声もある。

そんな中でパナソニックは、クルマを含めたモビリティ全体への進出を、着実に進めつつある。グーグルやアップルに並ぶキープレーヤーになるか、注目に値する存在であることは間違いない。

(森口将之)